老計10号見直し?と生活援助の着地点

介護給付費分科会では、サービスごとの見直しの方向性が提示されつつあります。まず注目したいのが、訪問介護にかかる見直しです。論点の一つ生活援助における人員基準緩和に関しては、委員内でも賛否が分かれています。厚労省としては、どのような見直し案をもって着地点を探ろうとしているのでしょうか。

生活援助の専門性、厚労省も認めている?

生活援助に関連して、厚労省が示した方向性を整理しましょう。(1)まず、生活援助にかかる「人員のすそ野を拡大する」という点ですが、言うまでもなく初任者研修の修了要件を外すことを示しています。(2)そのうえで、生活援助の提供に必要な研修を創設するとしています。(3)さらに、(2)の修了者は訪問介護の人員基準に含め、介護福祉士等が提供した場合と報酬を同額にする──ここに至り、生活援助の報酬減が明示されたことになります。

注目したいのは、(2)の新研修案の方向性として、「ヘルパーが自宅での利用者の状態を把握し、関係者と情報共有することが重要」と述べていることです。つまり、介護専門職との情報共有の重要性という点で、「生活援助にも身体介護と同等の専門性は必要」という点は、厚労省も自ら認めているわけです。にもかかわらず、生活援助の報酬減を示唆するというのはつじつまが合わないことになります。

この「つじつま」をいかに合わせるか。この点に関係すると思われるのが、分科会議論に登場した「自立支援のための見守り的援助」を明確化するという方策です。この「自立支援のための見守り援助」は、2000年3月17日に発出された老人福祉計画課長通知「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等」(いわゆる老計10号)で登場した概念です。

「身体介護1-6」と「生活援助」の関連性

この老計10号の該当箇所には、身体介護の1-6(自立支援のための見守り的援助)にかかる例が示されています。日常的な家事行為に関するものピックアップすると、以下のようになります。「利用者と一緒に手助けしながら行なう調理(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)」、「洗濯物を一緒にたたんだりすることにより自立支援を促すとともに、転倒予防等のための見守り・声かけを行なう」、「認知症(原文では痴呆症)の高齢者の方と一緒に冷蔵庫の中の整理等を行なうことにより、生活歴の喚起を促す」という具合です。

これらはあくまで身体介護の区分ですが、厚労省は「身体介護として明記されていないものがある」と指摘しています。つまり、実態としては身体介護にもかかわらず、生活援助に区分されている現状があるというわけです。この1-6の取り扱いをより明確にすることで、身体介護としての位置づけを行ないやすくし、利用者の自立支援に向けたサービスの強化を図ろうとしていると思われます。

となれば、改めてガイドライン的な通知を発出したうえで、「これまで生活援助として提供していたサービスを身体介護として位置づけやすくする」という流れが考えられます。これによって、生活援助の基準緩和・報酬削減で「自立支援が阻害される」という懸念を抑えようという着地点探しが浮かんできます。

環境設定などがきちんと評価されるのか

しかし、これで現場の混乱が解消されるかといえば、注意すべき点は数多く残ります。

1-6の場合、「利用者が主体的に『何かをしようとする』こと」が前提となります。その入口にたどり着くまでには、一定の環境設定が必要です。その「環境設定」の範囲は、家屋状況や利用者の心理・身体状況によって変わってくるものです。たとえば、初期段階でのサービス提供を、「環境設定」のための整理整頓や清掃だけに費やさざるを得ない場合、それでも身体介護の区分にできるのか。

また、事業者が「収益を上げること」を優先して、利用者の現状や意向をかえりみず、無理に「主体的な行為」を導こうとすれば、利用者の尊厳が損なわれる可能性も出てきます。現場の焦りから十分な環境設定が整わずにサービス提供を行なえば、事故リスクなども高まりかねません。ケアマネとしても、生活援助を1-6の身体介護へと変更するプランを無理に作らざるを得ないとなれば、利用者の意向とのはざまで悩むことも起こりえます。

加えて、厚労省の発出通知にあいまいさが残れば、自治体によるローカルルールの弊害の続出も懸念されます。利用者の自立支援に真に資するしくみになればいいのですが、無理な「つじつま合わせ」がさらに現場に混乱をもたらすことは避けなければなりません。

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