ICT導入で避けるべき本末転倒

2018年度の報酬・基準改定では、介護人材確保策の一環として、現場における介護ロボット・ICT・センサーの活用をどのように評価するかが論点の一つとなっています。今回は、特にICT・センサーの導入についてとりあげます。「導入による影響と効果」について、現場目線でしっかり整理しておくことが必要です。

2018年度報酬反映への前提となる調査研究

今年閣議決定された「未来投資戦略2017」では、「ロボット・センサー等の技術を活用した介護の質・生産性の向上」の項目内で以下のように述べています。それは、「(これらの活用について)効果実証を確実に進め、その結果を踏まえて(中略)次期介護報酬改定の際に、介護報酬や人員・設備基準の見直し等の制度上の対応を行なう」というものです。

これによれば、報酬・基準への反映に際して、ICT・センサー類を現場に導入した場合での「効果実証」が前提となっています。その具体策となるのが、2016年度補正予算による「介護ロボットの導入支援および導入効果実証研究事業」です。「介護ロボット」とはなっていますが、ICT技術と連動させたセンサーによる見守りシステムなども含まれています。

この実証研究を行なう介護施設等については、今年4月までに公募が行われ、特養ホームや老健、特定施設など40の施設が選定されました。そのうち、上記の「見守り」システムについては30か所。これらの施設に対して、機器類の導入前(1回)と導入後(3回)で効果測定が行われるというものです。

報酬反映は施設系・居住系サービスのみ?

気になるのは、この実証研究のスケジュールです。厚労省によれば、調査期間は8月までで終了しています。事業要綱によれば、その後の事業実績報告書の提出は10月となっており、このスケジュールに沿えば、11~12月に大詰めとなる介護給付費分科会への提示は可能といえます。ちなみに、前回改定のスケジュールを振り返ると、1月前半に審議報告の諮問が行われ、それを受けて2月6日に具体的な改定案が厚労省から示されています。

問題は、実績報告書の中身とその範囲でしょう。調査対象は特養と老健、特定施設だけですから、その結果を訪問系や通所系のサービスにも反映させるのは無理があります。となれば、報酬・基準の改定については、介護保険施設や居住系サービスに限定されると考えるのが自然でしょう(ただし、GHなどを一括りに対象としてしまうのが適切かどうかという点には議論が残るかもしれません)。

ICTと人員基準等は秤にかけるべきではない

そのうえで注意したいのが検証の中身です。たとえば、見守りセンサーとICT技術を連動させたシステムの場合、(1)センサーによって利用者の転倒・転落等の危険を個別に予知する。(2)その予知情報を端末等によって共有することで対応スピードを向上させる。(3)センサーデータを蓄積・分析することで利用者の生活動作レベルのチェック精度が上がり、現場の対応力を向上させるというわけです。

確かに、(1)~(3)については効率化が図れるかもしれません。システムの中には、夜間の見守りの集中管理を可能とすることで、夜間の人員削減につながる点をアピールしているものもあります。しかし、大切なのは一定の見守り業務を省力化した場合に、その分の労力をどこに注ぎこむのかということです。

たとえば、認知症の人が夜間に起き出すということは、BPSDを悪化させている何らかの不安要因があると考えられます。それを解消するための環境設定や、センサー反応のつど利用者に寄り添って安心感を取り戻すといった対応は欠かせません。この部分の対応力が追い付かないと、センサー・ICTの導入効果は打ち消されてしまう懸念も出てきます。

つまり、センサー・ICT導入による効率化とは、「職員の労力を他に振り分けられる」という目的が土台にあるべきだということです。単純に「その分、人を減らせる」という考え方は、介護業務においては誤った効率化の考え方といえるでしょう。また、現場における対応風土が変わるということは、「職員のスキルアップをどのように導くか」というしくみも変革されることになります。そのための新たな内部研修プログラムの構築などは、きちんとコストとして見積もる必要があります。

この点を頭に入れず、ICT導入と職員の処遇改善を安易に秤にかけてしまえば、本末転倒となりかねません。ICT導入は報酬削減の道筋上にあるものでは決してない──これは分科会でも十分に確認すべきことです。

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