混合介護と報酬・基準改定の相関図

東京都豊島区が、「混合介護」の弾力化に向けたモデル事業を開始することになりました。また、厚労省は規制改革推進会議の意向を受けて、混合介護をめぐる有識者会議を立ち上げます。具体的な動きが活発となる中で、次の介護報酬改定の動きとあわせて考えます。

モデル事業開始と3割負担導入が重なる

豊島区のモデル事業では、まずは訪問介護を中心に2018年8月からスタートさせるというスケジュールが示されました。2018年8月といえば、所得の高い65歳以上の利用者に3割負担が導入される時期と一致します。また、70歳以上の人の高額療養費にかかる自己負担もさらに一部引き上げとなります。こうした他のイベントとの兼ね合いがどうなるのかということも注意する必要があるでしょう。

つまり、混合介護の弾力化にかかる「総合的なサービス利用料の引き上げ」に対し、他の負担増との兼ね合いから、利用者側の混合介護に対する「費用面での負担感」が強くなる可能性もあるわけです。仮に、利用者側に「混合介護の提供が拒否しにくい」という空気が生じた場合、訪問介護そのものの利用頻度を減らすという行動も起きかねません。

そのうえで、もう一つ注意しておきたいことがあります。それが、次の報酬・基準改定で進められる可能性がある「生活援助にかかる人員基準の緩和」(そして、恐らくそれに伴うであろう報酬の引き下げ)についてです。

生活援助の基準緩和によって何が生じるか

これまでも述べてきましたが、改めて指摘しておきます。生活援助の人員基準が緩和された(介護専門職以外でもサービス提供が行えるなど)として、一定のサービスの質を確保しようとする事業者にとって、単純に人件費コストを削減できるわけではありません。

たとえば、身体介護にかかわる介護専門職(具体的には130時間の介護職員初任者研修の修了者)を確保しつつ、それとは別に専門職ではない人材を採用して生活援助にあてるとします。その場合、サービス提供に必要な事前研修や労務管理にかかるコストは、人材が多様化する分、自然と上乗せされます。

「基本的に(勤務時間の調整がききやすい)登録ヘルパー中心なのだから、シフト調整をうまくすれば人件費コストは減らせるのではないか」と思われるかもしれません。しかし、それは登録ヘルパーに「常勤化を望む」という意向があったとして、その実現を難しくしかねません。つまり、ヘルパーの働き方の不安定化を助長してしまうわけです。

「ヘルパーの常勤化を進めて、重度化している在宅利用者に対応できるサービスの質を確保したい」と考える事業者にとっては、いきおい「生活援助が基準緩和されても(身体介護を担っている)介護専門職にそのまま担当させる」というケースも増えるでしょう。しかし、仮に報酬の引き下げがセットになったとすれば、事業所経営は一気に悪化します。

混合介護を取り巻く経営環境の変化に注意

その場合、経営を維持するうえでは、当然「サービスの付加価値を高めて、それに見合った売上げを確保する」となります。こうしたビジョンに、混合介護の弾力化が当てはまってくることになります。つまり、経営維持に見合った介護報酬が確保できない分、保険外の料金で補填していくという発想です。

ここで問題となるのは、「保険外サービスをセットで利用してくれないと事業所として困る」という動機が、報酬・基準改定によって今以上に高まる可能性です。事業者側の「背に腹は代えられない」という意識が、暗黙のうちの保険外サービスの強要をエスカレートさせるわけです。現状で「強要ケースは少ない」としても、次の報酬・基準改定後に環境ががらりと変わることも考えられます。

となれば、消費者保護の観点から利用者の選択権を守るしくみを、いっそう強化しなければなりません。豊島区では、モデル事業に際しての「利用者保護に関する規定の整備」や「苦情・相談窓口の設置」をうたっていますが、そのあたりの制度設計の見立てをより厳しくしていくことが必要になるでしょう。

混合介護の弾力化は、そのしくみだけを見ていても影響は推し量れません。介護報酬・基準のあり方、現状における人材処遇のあり方など、さまざまな側面からチェックを入れていくことが欠かせなくなっています。

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