それ、虐待じゃない…? 相談員の3割強が「疑わしい行為」を目撃 不適切ケアも

NPO法人地域ケア政策ネットワークが、厚生労働省から委託を受けて実施した介護現場での虐待に関する調査の結果を公式サイトに掲載している。

これはもはや不当な身体拘束や虐待に該当するのではないか――。そう疑ってしまうような職員による行為を、33.1%の介護相談員が目撃していたと報告されている。個々の介護相談員によって判断が分かれている実情も読み取れた。地域ケア政策ネットワークは今後、好ましくない行為をまとめた事例集を年度末までに策定する予定。高齢者の尊厳や権利が侵害されることのないよう、介護相談員が指導しやすい環境を作っていきたいとしている。

身体拘束及び高齢者虐待の未然防止に向けた介護相談員の活用に関する調査研究事業報告書(PDF)

この調査は、昨年の11月から12月にかけて実施されたもの。介護相談員を派遣している463の市町村を対象とし、そこに在籍している3877人の介護相談員から有効な回答を得た。介護現場で起きた明確な虐待については、厚労省が2007年度から状況を調べてきている。一方で、虐待が疑われるグレーゾーンの行為は件数・内容ともにデータで把握されてこなかった。

車いすの空気を抜いて…

結果によると、介護相談員が現場で見たとしたグレーゾーンの行為は1,285件。ブザーや鈴、センサーに関するものが724件で最も多く、ナースコールに関するもの(218件)、行動制限・鍵・カメラに関するもの(195件)が続いていた。

介護相談員からの具体的な報告例としては、

  • 立ち上がろうとすると椅子などにつけているセンサーが鳴り、職員が走って来て座るよう促す
  • 他の部屋に勝手に入る入所者がいるため、居室の外側のドアノブが取り外されていた
  • 利用者のフロアのドアが施錠されており、職員しか開閉できないようになっていた
  • 車椅子のタイヤの空気を抜いて進みにくくしている
  • ナースコールの設備が無く、ベッドから落ちた利用者が朝まで床に転がっていた

といったケースが紹介されている。

不適切ケア、36.5%が「あった」

今回の調査では、虐待につながる恐れのある「不適切ケア」についても探っている。介護相談員の36.5%が「あった」と答え、目撃した行為は1,414件にのぼっていたという。その内容では、排泄・入浴や食事、放置・無視などに関するものと、こうしたカテゴリに該当しない「その他」が多かった。

介護相談員からの具体的な報告例としては、

  • 水分をなかなかとらない利用者に、「これ飲まなかったら次の食事あげんよ」と言う
  • 「おしっこが出た」との訴えがあっても「時間じゃないから…」とおむつを交換しない
  • 「おむつをしているのだからそこにして下さい」と言う
  • 「ちょっと待ってね」と言ったまま対応しない
  • 2台の車椅子を一緒に両手で押して移動させている

などがあげられている。

このほか、介護相談員の元々の職種や受けた研修の種類(全国研修 or 都道府県研修など)によって、虐待と疑われる行為や「不適切ケア」を確認した割合に差があることも分かったという。「グレーゾーン行為のとらえ方の難しさもある」「不適切かどうか判断に迷う行為も多い」「わかりづらい事例はむしろ増えている」といった認識も示されている。

地域ケア政策ネットワークでは、虐待や身体拘束、それに結びつくような行為をまとめた事例集を用意する計画だ。取材に応じた菅原弘子理事は、「指導にあたる介護相談員が迷わないよう、参考として活かせるものを作っていきたい」としている。

「介護者は絶対的強者」

調査の結果をまとめた報告書には、介護相談員などへのアドバイスも記載されている。虐待が疑われる行為などに気付いた時の対応について、「本人にとってどうなのか、機能の改善につながるのか、元気になるのかという視点でみていくことが重要」と説明。「現場の状況をみて『仕方がない』と思う前に、自分がそれをされて『嫌だ』『つらい』と思うかどうかを自分に問うてみること」と勧めている。加えて、「介護現場では介護者は絶対的な強者。被介護者の前で介護者は対等ではありえず、その存在だけで強者になることを認識しなければならない」と指摘。「利用者の前で大声を出すような行為は、強者であることを誇示することに他ならない」と注意を促している。

コメント[22

コメントを見るには...

このページの先頭へ