介護人材動向は医療にも大きな影響

厚労省から毎年公表されている「医療施設(動態)調査・病院報告」。最新となる2016年分が、9月26日に示されました。近年、右肩下がりが顕著となっている在院日数などが注目されますが、ここでは、病院の従事者数に注目してみます。具体的には、病院で働く社会福祉士、介護福祉士という福祉職の動向です。

病院内の介護福祉士は5年で3割強の伸び

病院に勤務する従事者動向について、2011年を起点とした推移を見てみましょう。全職員数は2011年で190万9,736.9人、2016年は210万8,840.2人。その間の伸びは10%です。

これに対し、介護福祉士は2011年が3万4,942.4人、2016年で4万6,705.0人、伸び率は33%強。社会福祉士に至っては、2011年6,767.3人、2016年1万906.9人で約62%の伸び率を記録しています。この5年で、いかに福祉系職種の伸びが目立つかがよく分かる数字です。

単年ごとの変化を見ると、2014年までは診療報酬改定が行われる直前で福祉系職種の伸びが特に高くなっています。2012年の改定では、認知症患者への対応や入院患者サポートなどの拡充が図られました。2014年の改定では、地域包括ケア病棟の誕生など、患者の在宅復帰に向けた取組みがさらに加速しています。

いずれにしても、患者の在宅生活を視野に入れた全人的なケアに力を入れる中で、福祉職によるサポートが従来以上にポイントとなってきたわけです。退院調整では社会福祉士の役割が欠かせません。患者の在宅復帰を想定したうえでリハビリなどを続けていく中では、リハビリ職等をサポートする立場として介護福祉士の役割も重要になるでしょう。さらに、その後の医療法人での人的資源の方向性を考えれば、そうした人材にケアマネ資格を取得させるという流れも考えられます。

ニーズは拡大一途だが採用は急ブレーキ!?

ところが、2015年から2016年にかけては、それまでの流れがやや変化します。社会福祉士については、依然として8%台の伸びではありますが、診療報酬改定前の「いつもの伸び(10%以上)」に比べるとやや鈍化が見られます。介護福祉士では、2.9%と前年の半分程度まで伸び率の落ち込みが見られました。

ちなみに、2016年の診療報酬改定では、医療機関で初となる認知症ケア加算が誕生しました(これ以降、認知症患者を対象とした院内デイを独自に設けるケースも増えています)。退院支援にかかる加算類も拡充され、患者の生活をいかにサポートするかが、医療機関のミッションとしてさらに強化されました。

加えて、この時期には療養病床のあり方等に関する検討会もスタートしており、医療法人としては「患者の生活の受け皿」となる資源の拡充もにらまなければなりません。病院として介護福祉士を積極採用し、将来的に新たな資源(その後の流れで誕生した介護医療院や基準緩和が想定される「医療外付け」型の介護付有料老人ホームなど)に人材投入を図るという計画も浮上したはずです。

ところが、こうした状況があるにもかかわらず、福祉系職種(特に介護福祉士)の伸びが急速に鈍化したわけです。その背景に何かがあるのでしょうか。

2015年度の介護報酬改定が影響したのか?

直観的には、介護報酬側のマイナス改定が影響しているのでは──そう考える人も多いでしょう。福祉職にとって主舞台となる介護保険サービスが縮小していくとなれば、「その分野の資格をとる」ことへの社会的なモチベーションもしぼむことになります。結果として、人材のすそ野が狭くなれば、医療側も人手確保が難しくなるのは容易に考えられます。

つまり、介護報酬の縮減が続くことは、介護現場だけでなく、国がめざす医療機関側の改革にも影響が及ぶことになります。それでも、医療側で福祉職の確保を強化しようとすれば、介護側との「人材の奪い合い」が生じ、現場の人手不足はさらに加速しかねません。

もはや、医療においても、福祉系職種の存在は重要にポイントにならざるを得ない時代であるのは間違いありません。その点を考えれば、介護報酬をまず手厚くすることは、地域包括ケアシステム全般にとって欠かせない課題となるはずです。そうした俯瞰的な見方が施策側にできるのかが問われています。

コメント[12

コメントを見るには...

このページの先頭へ