効率化を迫られる介護業界 M&Aによる再編・統廃合は加速していくか!?

介護施設・事業所の経営は今後ますます厳しくなっていくのではないか――。そんな観測が一段と強まるなか、この分野に特化したM&Aの仲介に力を入れている企業がある。BtoBのサービス・福祉機器などの展示会「CareTEX」や介護用品のeコマースなどで知られるブティックスだ。今年6月にはインテグループとの業務提携も発表された。業界のM&Aの動き、事業者の状況、今後のトレンドをどうみているのか? 速水健史常務取締役に聞いてきた。(聞き手・編集 Joint編集部 青木太志)


《 速水常務取締役 》

-介護業界のM&Aの市場動向をどう捉えていますか?

2015年度を「介護のM&A元年」と呼んでいます。きっかけは介護報酬改定。問い合わせが一気に増えました。我々は過去2年間で、100件以上の介護事業者さんのM&Aをお手伝いしてきました。展示会で毎年企画しているM&Aに関するセミナーも常に人気で、関心がとても高まってきていると感じています。

-前回のマイナス改定の影響が大きいということでしょうか?

特に規模の小さな事業者の方ですね。報酬の大幅な引き下げにより、進退の選択を迫られていると感じられたところが多いのではないでしょうか。ある程度の利益を得るために事業の規模を大きくしていくか、そうはせず限界を迎える前に撤退してしまうか――。小規模のままではやはり難しいと思います。加算を取るのも大変で、最低限の利益を確保できないところだってあるでしょう。報酬が上がっていく期待は薄く、積極的に加算を取れる体制が作れなければ、ますます厳しくなっていくとみられます。利用者さんや職員さん、地域への思いだけでは続けていけない――。そんな時代になってしまったのではないでしょうか。

-倒産してしまう事業者が増えたというデータもあります。

そうですね。報酬の引き下げだけでなく人手不足も大きいでしょう。撤退する理由にあげる事業者の方が少なくないですね。誰かが辞めてしまうと、人員基準を下回らないようにとにかくすぐに採用しなければいけません。その新人さんが周囲と馴染めず、うまく定着してくれないこともありますよね。職場の人間関係や雰囲気が悪くなり、追加の採用コストがかかってしまうことだってあるでしょう。いったん負のスパイラルに陥ると、そこから抜け出すのはかなり大変です。人材の確保については大手も苦労していますが、新卒の採用・育成に力を入れて成果を出しているところも出てきました。やはり小規模の事業者の方がより深刻ではないでしょうか。

-小規模で経営が厳しいところが増えてきた。そこでM&Aに注力しているわけですね?

一定の規模がある企業には、事業をさらに拡大して収益を伸ばせないかと考えているところが多いです。ただし、新しい事業所を作っても、土地勘のない地域では大手でも人材を確保できるかどうか分かりません。既にスタッフがいる状態のところを買うという選択肢は、相対的に安全な戦略となり得るんです。ゼロから募集をかけるより確実ですし、その地域のことをよく知っている職員さんがいる場合だってありますから。さらに言えば、小規模の事業者の方で経営状態が極めて悪いところってあまりないんですよね。あくまでも介護保険制度の枠の中なので、「全くうまくいっていない」「なかなか黒字を出せない」とは言っても、収支トントンで社長さんが給料を取れないとかその程度のところが多いです。だから買いやすい。スケールメリットを活かしてテコ入れすれば好転させられる、と判断して譲り受ける企業が少なくないんです。

-売り手と買い手の思惑がうまくマッチするケースが増えた、ということでしょうか?

はい。売り手側も色々な悩み、面倒から解放されますからね。難しい採用や職員のマネジメント、営業活動、資金繰り、今後への不安などで疲れておられる方がいます。思い切って売ってしまえば一定の収入も得られますので…。もちろん、売り手と買い手のマッチングは、エリアや業種、規模だけでなく、社風なども考慮に入れてきめ細かい対応をしないとうまくいきません。その点は非常に気をつけています。

-売られる事業所の職員はどうなってしまうんでしょう?

我々は買い手側に対し、処遇を決して悪くしないようにとアドバイスしています。引き続き活躍して頂くための大前提ではないでしょうか。もちろん、事業者が代わるタイミングで辞めてしまう方もまれにおられます。ただ、会社の母体が大きくなれば雇用の安定感は増しますよね。運営が組織的になり、研修にかける時間を以前より容易に確保できるようになれば、向上心の強い方がキャリアを伸ばせる余地も広がるでしょう。サービスの質の向上にもつなげられます。事業の継続性が高まり、利用者さんとより長く関われるようになるかもしれません。引き継ぎのストーリーや狙い、意義、長所・短所をはっきりと見せたうえで、利用者さんと職員さんのメリットをしっかりと伝えること。それが重要だと考えています。

-業界は今後どうなっていくとみていますか?

介護保険の給付費は急激に伸びています。国はその伸びを抑制するため、できるだけサービスの質を落とさずに効率的な運営を実現するよう事業者に求めていくでしょう。そうした環境の中で、規模の小さいところが吸収される形の統廃合がさらに加速していくのではないでしょうか。すでにその潮流は生まれており、これからさらに大きくなっていくとみています。介護の市場は約10兆円と巨大で、かつこれからも成長を続けていきますので、今はまだ登場していない大手の新規参入により、業界の地図がガラッと変わる可能性も十分にあると考えています。

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