介護保険事業所として指定を受けた「障害福祉事業所」

  • コラム
  • 宮川明子
  • 9
  • 閲覧数:4,473

介護保険と障害福祉サービスが一元化され、両分野を相互に利用できることになりました。高齢化する障がい者、高齢になってから障がいを持つようになった人に対して、切れ目なく対応できることになったのは大きな進歩だと思います。では高齢と障がい、両分野にまたがって行うサービスを提供するために、何が必要となるのでしょうか。

障がい分野と高齢分野との違い

障がい者が高齢になったとき、介護保険のサービスをすぐ受けるのは難しいことです。老人ホームの倍率が高く、「介護度が高い人」や「在宅介護が限界になった人」から順次入所させたいこともあり、とりあえず屋根の下(障がい者用の入所施設)でそれなりの生活をしている人は後回しになってしまいがち。また、障がい特性にプラスして高齢化に伴う症状が出ることと、加齢によって起こる障がいはまったく別のものです。

障がい分野と高齢分野では、共通することと異なることの両方が存在します。それぞれに対応するための方法をすり合わせ、整理したうえで、両分野の職員に周知しなければなりません。高齢者側では障害者施設でよく見かけるてんかん発作、障がい者側では高齢者施設でよく起きる心筋梗塞など、医学知識について知る必要があるでしょう。

事例から考える難しさ

ここで、1つ事例を挙げながら考えていきましょう。知的障がい者の入所施設を利用しているAさん。65歳になり、老人ホームに体験入所をすることになりました。

Aさんは普段、穏やかで親和性のある方です。しかし、いきなり身体を触られると、驚いて相手を叩いてしまうことがあります。元の施設では皆がそれを知っており、トラブルは多くありませんでした。しかし認知症対応の老人ホームでは、入所者がそのことを知りません。また、たとえ教えても、残念ながら覚えてくれないのです。

そのため、Aさんは触られるたびに相手を叩いてしまい、「乱暴な人」と見なされました。そのうえ、Aさんは持病のてんかん発作を起こしてしまい、「対応できない」ということでこの老人ホームに入所できなかったのです。

誰が担い手となるのか

制度として、障がい関係の方でも「できる限り地域で暮らす」という流れになっています。しかし、規模の大きい施設でいつも職員に見守られている方が安心できるということで、施設から地域のアパートで暮らすことには反対する方も多いようです。母体の施設の職員も、業務として地域生活している人を支援しているものの、年をとったら必ず高齢者のためのサービスを利用できるという保証はできないのが実情です。

65歳になったときには「介護保険のみで対応しているサービス」「共通しているサービス」「障がい者に対応しているサービス」がありますが、それを上手く組み込んでケアプランを作るのは容易ではありません。現場の介護福祉士やヘルパーは障がい者の特性を、障がい者の担当職員は高齢から起きるさまざまな問題を、それぞれしっかり研修して欲しいと思います。ケアマネジャーと福祉事務所の障がい担当者が相互に情報交換しながら、知識を学んでいける研修を行うのも良いでしょう。

縦割りのサービスではないことが利点ではありますが、誰が何を担当するかは難しい問題です。関わる分野が福祉関係のほとんどを網羅することになるので、全てが同じフロアにある福祉事務所のワーカーがまとめるのが適当ではないかと思います。

福祉事務所における障害者施策は、子ども時代から高齢になるまで一括して行われています。そのうえ、高齢者と障がい児が成人し高齢になる過程もまとめて対応というのは、とても難しいことでしょう。こうした業務を、福祉とは関係ない分野から配属されてきた人に、果たしてこなせるのでしょうか。福祉系の大学が増えてきましたし、全分野について学んできた人を、専門職として採用した方が良いのかもしれません。

地域包括支援センターで、そのまま障がい高齢者を受け入れることも多いそうです。しかし関係分野が広く、やはり全分野を網羅的に理解できている人が望ましいでしょう。そう考えると、社会福祉士レベルの専門性が必要だと思います。

コメント[9

コメントを見るには...

このページの先頭へ