慶応大・田中名誉教授「地域包括ケア構築は畑を耕すこと。豊かな土壌を作ること」

《 左:講演する田中教授 12日 》
「よく『2025年問題』などと言われるが、以前の『2000年問題』とはまったく違う。その年だけの問題にとどまらないためだ。2025年からが本当の正念場になる」

そう聴衆に語りかけたのは、介護報酬を議論する審議会の会長を務める慶応大学の田中滋名誉教授だ。東京大学で12日に開催されたオープンセミナーで、「地域包括ケアシステムの深化」をテーマに講演。高齢化が一段と進む2025年より先を直視すべきだとし、「団塊の世代の多くが人生を卒業する2040年が重大な戦略ターゲット。当面はそこを見据えて動くべき」と促した。「2025年までに地域包括ケアシステムを作り上げ、それを活用して2040年までを乗り切っていく。そのための取り組みを今している」とも述べた。

ピンマイクを付けて壇上に立った田中教授。多くのグラフをプロジェクターで投影し、将来の社会環境の変化を図解していった。例えば、2016年の時点で1,691万人だった75歳以上の人口。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2025年までに2,180万人へ、2040年までに2,239万人へ増えるとみられている。「街をゆくご老人はさらに多くなり、ゆくゆくは東京中が巣鴨化していく」。冗談交じりの比喩も飛び出し、会場からは笑いがこぼれた。

同じく社人研の推計をもとに、これから亡くなっていく人のボリューム(上グラフ)も示された。2015年は129万人だったが、2025年までに152万2,000人となり、2040年には167万9,000人に達するという。年間の死亡者数は2040年がピークとなる見通し。介護施設や在宅における看取りのニーズも、この時が最も大きくなるとみられている。

「地域の力をいかに上手に引き出すか」


《 講演する田中教授 12日 》

「亡くなる人を減らすことはできないが、要介護の期間を短くすることはできるかもしれない」。田中教授はそう投げかけ、介護予防や重度化防止の重要性を強調。「地域社会とのつながりが特に大事。個々人の努力に頼るだけでなく、もっと広い視点から予防を捉えないといけない」と提言した。また、「周知の通りスタッフは足りなくなる。1つの仕事しかできないと必ずしも十分とは言えなくなっていく」と問題を提起。「専門職の基礎教育の共通化、キャリアの複線化も必要。IT化やロボット化は救いになるが、人間も進化していかないといけない」との考えを示した。

様々な立場の人が関与していくことの大切さも改めて指摘した。「主体は住民。住民が中心になっていかないとできない。地域の力をいかに上手に引き出すか、いかに仲間として引き込んでくるか、そういうアプローチが求められる」と持論を展開。「地域包括ケアシステムの構築は畑を耕すこと。我々が今、皆さんと一緒に行っているのは豊かな土壌を作っていくことだ。やっと小さな芽が出始めたところ。2025年にはこれが大きく育っているようにしたい」と語った。

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