生活援助見直しがケアマネに与える影響

次期介護報酬改定に向けて、大きなテーマの一つとなっているのが訪問介護の生活援助です。生活援助における人員基準の緩和と報酬設定については、財務省の改革工程表でも具体的な見直しを迫っています。ここでは、生活援助の見直しがケアマネにどのような影響を与えるかを掘り下げてみましょう。

人員基準緩和等の他に提示された論点

今回の議論では、「人員基準の緩和」と「報酬設定」という論点がセットで提示されているわけですが、注意したいのは、ここにもう一つの報酬適正化の論点が加わっていることです。それが、保険者機能の強化取り組みとの関連と、報酬の算定構造にかかる点です。

ベースとなっているのは、財務省から示された2017年度の訪問介護にかかる予算執行調査のデータです。これによれば、生活援助の利用回数「月31回以上」の利用者が6,000人以上(割合にすると4%)にのぼり、最高利用回数は月101回となっています。

この数字をもって、財務省側が提案しているのは以下の2点です。(1)生活援助が一定回数を超えるケースについて、地域ケア会議におけるケアプラン検証などを要件とする。(2)1日に算定可能な報酬の上限設定を設けることです。(1)の「一定回数」や(2)の「上限」のラインがどの程度のレベルに設定されるのか。先の人員基準の緩和と報酬単価の設定とは別に、議論の行方が注視されるポイントです。

一定以上の利用で地域ケア会議の遡上に!?

ちなみに、財務省側の資料では、埼玉県和光市のデータを一例として取り上げています。和光市と言えば、国が強化しようとしている介護給付費適正化のモデルケースとして、ことあるごとに取り上げられています。

同市のケースでは、平均利用回数は月6.7回となっています。たとえば、少なくとも(1)のケアプラン検証については、この月6.7回(おおよそ7回)を要件ラインとする可能性があるわけです。(2)の設定がどうなるかという点も問題となりますが、その前の段階で「ケアプラン検証」というハードルを設けることは、ケアマネジメント段階での利用回数設定の抑制を図るという意図が見えてきます。

言い換えれば、以下のようになります。ケアマネとしては、地域ケア会議の場でケアプラン検証の遡上に乗せられることは、できれば避けたいという心理が働きやすいでしょう。ケアマネを巻き込むことでの「利用抑制」が図られれば、(2)のライン設定の議論が紛糾してハードルが下がったとしても、結果として国が目指す適正化は図られるわけです。

問題は、このケースにおいて、「地域ケア会議」と「利用者の要望」という間で、ケアマネが板挟みになる懸念が生じることです。そもそも地域ケア会議は「ケアマネ叩き」の場ではないはずです。しかし、(1)のような要件が設けられれば、必然的にケアマネへの集団指導的な要素は強まります。これはケアマネには大きなストレスとなりかねません。

ケアマネジメントにかかる大きな縛り

確かに、一定以上の生活援助の導入について、ケアプラン上できちんと根拠を示し、地域ケア会議での承認が得られれば問題はないでしょう。しかし、ここで「生活援助の人員基準緩和」がネックとなってきます。

人員基準の緩和については、分科会でも賛否が分かれており、議論の行方は現段階ではまだ不透明です。仮に、介護保険部会での一部意見にあるように「介護専門職以外の人材」との役割分担が行われるとなれば、どうなるでしょうか。この場合、生活援助にかかる「専門性の低さ」が基準で定められてしまうことになります。つまり、ケアプランに掲げた「生活援助の必要性」の根拠が、「専門性の低さ」という観点から地域ケア会議において否定されてしまうことも起こりうるわけです。

生活援助の人員基準緩和は、確かに訪問介護事業所の経営や人事マネジメントに大きな影響を与えます。しかし、それだけではなく、ケアマネジメントに大きな縛りが生じることも頭に入れなければなりません。ケアマネが汗を流して「自立支援に向けて生活援助は必要」という論拠を築いても、国の定める基準のもとで一蹴されてしまう──これはケアマネの職業的信念を大きく揺るがしかねません。

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