虐待の果てに親や配偶者を殺してしまう…男性介護者を支援するには

  • コラム
  • 宮川明子
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ニュースなどで「配偶者や妻を介護疲れの果てに殺してしまう」という、悲しい事件を聞くことがよくあります。そのたびに介護関係者として無力だと感じてしまうのですが、そうした方々には、いったいどのような支援が必要なのでしょうか。

安楽死を認めてくれ

介護殺人のニュースが取り上げられるたび、「まわりに迷惑をかけないように、または痛い苦しい思いをしたくないから安楽死を認めるべき」という発言をよく聞きます。「痛い、苦しい思いをしたくない」というのも、「子どもに迷惑をかけたくない」というのも分かります。しかし「介護される状況」と「死ぬこと」の間を、まったく想定していないことに驚きました。その間を担うのが、まさしく「介護の役割」だと思います。

しかし現状は「介護で迷惑がかかるようになったら安楽死」を求める人と、「介護疲れからくる殺人」を認めている人が、ほとんど男性だったということ。「平成22年国民生活基礎調査の概況」の「4 同居の主な介護者の悩みやストレスの状況」によると、介護生活でのストレスの有無をきいた項目では、「妻、娘、嫁」より男性の方が約10%少ないのです。

実際に介護に疲れて親や妻を殺してしまうのは男が多いというのに、「アンケート」にさえ、本音をいえない。この理由は、いったい何なのでしょうか。

ニュースで知る限りでは、介護保険を使っていない人も多く見受けられます。理由は人それぞれですが、現役時代社会的地位が高く、例えば役職に就いているような場合は、自分にとって「権威がない」と思うものに頼れないのではないかと感じます。

本人も家族も、要介護症状が始まった初期段階で不安や焦り、葛藤や混乱に見舞われるといわれていることでしょう。その間に支援が入らければ、虐待や殺人などに発展してしまいます。

虐待・殺人を防ぐために

そのための対策として、「妻がどのような容態なのか」「次にどんなことが起きるのか」などについて、医者や看護師から頻繁に丁寧な説明があるのが理想でしょう。「こういう場合は、こういうことが考えられます」「このようにやってみてはいかがでしょうか」など、ある程度先のことを予想できる事態を伝えておくと良いかもしれません。

また、認知症になる前に「家事」を練習してもらうと、介護者や被介護者の負担は減るかもしれません。介護保険のことを知らない場合には、日用品を買いにいく店や物をしまっている場所、ごみ捨てなどを知っておくこと。いきなり「明日からやってください」というのは、かなり厳しいと思います。

妻には、自分のことが何もできない乳児の面倒を見てきた経験があります。また、家事も担ってきたことから、介護においても比較的我慢できているのでしょう。しかし夫はと言われれば、プライドからなかなか周囲にSOSを出せず、家事にも不慣れです。結果、誰からも何も教えてもらえず途方にくれてしまう。自分が介護保険を受けられのだと知らなければ、このような状態になってしまうでしょう。

介護のシステムはややこしく、加えて事業所が玉石混交であるということが、介護者を疲れさせています。例えば施設Aに入っていたタイミングでB病院に入院することとなり、その後、3か月が経過したため施設Aでの契約は終了。ここで次の施設を探してくれるところも少なくありませんが、実態として家族に丸投げするケースもあります。ケアマネジャーとして、妻が病気や怪我でこれまで通りの生活ができなくなったという場合、病院のMSWと情報を共有し、どのようなサービスが必要なのかシミュレーションしておくと良いでしょう。

権威に弱いという面においては、介護の仕事がプロとして認められ、社会的地位が相対的に高くなるということが大切だと思います。しかし残念ながら、それはなかなか難しいでしょう。また、介護のやり方や思いが、介護者本人の現役生活に関わっていることもあります。これを大切にすることが、追い詰められてしまう男性介護者に手を差し伸べる、第一歩だと思うのです。

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