病院は生活の場になれるか

  • コラム
  • 宮川明子
  • 8
  • 閲覧数:1,458

療養病床の受け皿として「新類型」への移行が迫ってきています。医療型療養病床も介護型療養病床もサービス内容に大きな違いはないのに、人件費が違うなどいくつか問題がありました。ここでは医療と介護の役割分担など、問題点について考察していきます。

医療機能を内包した施設系サービス

介護施設が介護施設へ医療を取り入れること。現在、サ高住もあるように、生活の場へ医療を受けることはそれほど大変ではないでしょう。症状が安定していて痰の吸引などのケアが必要な場合は、研修受講によって介護施設でも対応できるようになりました。受け入れ体制が整ってきています。

例えばプライバシーの尊重や看取り、ターミナルケアを実施できる機能を持たせるなど、比較的慢性的な医療や虚弱者へのケアに関しては整備されていると言えるでしょう。では一方で、医療の方はどうでしょうか。病院で最後を遂げる人は多いのですが、4人部屋など「生活空間」という認識は薄かったようです。医療側が生活の場になるかを考えると、そこにはまだまだ越えるべきハードルがたくさんあります。

「身の回りのこと」をするのは誰か

以前は家政婦がいて、患者の身の回りの世話をしてくれました。しかしこれが、「完全看護」への移行によって廃止されています。そのため、病状が良くないときに誰が身の回りのことをしてくれるのか不安に思われるはず。洗濯や買い物などをしてくれる家族がいない人場合、どうしているのでしょうか。

入院でも心細いのに「暮らす」ということになれば、新類型に移行する場合は入所者を介護するスタッフは必須です。仮に病院に入院して自宅あるいはそれまで入所していた施設に戻れなければ、その病院の療養病院に入居することになるでしょう。

私事ではありますが、過去に二度入院したことがあります。そのときは、身の回りのことを家族がしてくれました。病院のスタッフが洗濯や買い物などをしてくれることはなく、「何をもって完全看護というのか」と疑問を持ってしまいました。

重度の患者さんや身寄りがいない人には、そこまでサービスが行き届いていたのかもしれません。しかし、容体が落ち着いているものの身の回りのことを全て自分で行うのは厳しいというレベルだったので、とても心細い気持ちでした。まして4人部屋、介護してくれる人が決まっていないとなったら、「これから、ここで死ぬまで生活をする」なんて本当に心細くなるでしょう。

まだ移行中とはいえ、医療を「生活の場」とするには、個室すらない現状を改善しなければなりません。病院としても改築するうえに、受け入れられる入所者数が減ることになります。病院にとっては大問題です。

しかし4人部屋もまだ多く、一人当たりの生活スペースが約8平方メートル。ベッド周りだけが自分のスペースという環境を受け入れられる人は少ないでしょう。最低限「個室」、そして、その部屋でどのように暮らしたいのかを知り、愛着ある家具やインテリアを持っていくなど、できるだけもともと住んでいた部屋に近づける工夫が必要です。これは、「福祉住環境コーディネーター」が担っても良いと思います。

介護保険の目標

この新類型が導入されたとき、どのようなケアプランを立てていくことになるのでしょうか。ターミナルケアや看取りをする場所になるのであれば、亡くなるまでの過程で入居者に対しどんな介護・看護をしていくのか、ケアの方法や死生観を共有することが必要です。

ホスピスは、主に「がん患者」を対象にしています。しかし、痛みやADLの低下、寿命が近づいていく恐怖と戦うつらさは、どの病気でも同じでしょう。

今はケアプランを作る際、「自立するように頑張る」ことが目標にされています。いくつになったら始めるかは難しいのですが、「苦しまず安らかな気持ちで死を迎えることができる」という安心感を持てるようなプランを考えること。そして、医療と介護を上手く組み合わせることにより、より良いサービスを提供していくことが必要です。

コメント[8

コメントを見るには...

このページの先頭へ