外国人は介護の現場を救うのか?技能実習の解禁が業界に与えるインパクト 淑徳大学教授 結城康博

2016年12月17日に閉会した臨時国会では、「外国人技能実習制度」の見直しに向けた法律が成立した。政府は、制度の対象とする職種に介護を加える方針だ。一定のルールを設けたうえで、施設などに実習生の受け入れを認めるとしている。

技能実習制度はもともと、途上国などの若者に仕事のノウハウを身に付けてもらう仕組みとしてスタートした。政府によると、日本が「人づくり」を後押しする国際協力のスキームだという。ただ実際には、外国から労働力を獲得する手段として使われるケースが少なくない。劣悪な環境で長時間の業務を強いられるなど、実習生が不当に扱われるケースもあると内外から批判されてきた。

介護が新たに対象となる背景にも、やはり深刻な人手不足があることは否めない。実際に外国人が来るようになると、業界はどのような影響を受けるのか。現場はどう変わるのか。マンパワーは確保されるのか。この分野の第一人者で現場にも精通する淑徳大学の結城康博教授を訪ね、技能実習の解禁がもたらすインパクトについて聞いてきた。(聞き手・編集 Joint編集部 青木太志)※インタビューは昨年12月に実施。


結城康博 教授

「処遇改善の動きにブレーキがかかってしまう」

-介護の現場に実習生を受け入れることが決まりました。どのようにみていますか?

まず最初に言っておきたいのですが、外国人は介護の現場の人手不足を解消する切り札にはなりません。短期間で非常に多くの実習生が入ってくるかのような、やや過大な見通しが喧伝されているように感じています。今後、30万人近い介護職員が足りないですよね。外国人は多くてもその1割程度ではないでしょうか。

-国の推計によると、このままいけば2025年には約38万人の介護職員が不足する見込みです。

ですから、そんなにたくさんは来ませんよね。いわゆる「日本語の壁」もありますし、今は他の国を選択する方も少なくないですから。つまり、今後も引き続き日本人の確保を最優先に考えなければいけない、ということですよね。日本人こそが人手不足を解消する切り札。これは忘れてはいけない前提です。

-実習生の受け入れには賛成ですか?

私は反対です。メリットよりデメリットの方が大きいのではないでしょうか。

-と言いますと?

現場に多くの課題が生じます。例えばサービスの質。日本語能力試験の「N4」程度が要件になる見込みですが、チームの中で十分にコミュニケーションがとれるレベルではありません。まず意思の疎通に苦労するでしょう。日本独特の文化や風習、習慣、考え方などの理解が浅い方もいるはずです。外国人ですから仕方ないのですが、表情や仕草から重要なニーズを汲み取れなかったり、日本人なら当たり前の配慮ができなかったり…。きめ細かいケアは期待できませんよね。

-高齢者が相手ですからね。なかなか難しいかもしれません。

そうなると、周りの日本人にかかる負担は重くなります。すべて最初から教えていくんですから。ご承知のように現場はすでにかなり忙しい。人手不足を解消するどころか、さらに追い込んでしまう事態につながりかねません。実習生の指導にあたる職員を追加で配置できるよう、人件費などを支援すべきです。そうでなければもたない。制度をうまく運用していきたいのなら、政府は十分な施策を用意しなければいけないでしょう。

-慣れてくれるまでは大変そうですね。

日本人の処遇にも悪影響が出かねません。すごく心配しています。政府は4月から、介護職員の収入が増えるように報酬の加算を拡充しますよね。繰り返しになりますが、日本人の介護職員はこれからもっと必要になるんです。賃上げは続けていかねばなりません。そこへ実習生が来たらどうでしょうか。経験の浅い外国人にもできる仕事だ。そんなイメージが広がってしまえば、処遇改善の動きにブレーキがかかってしまいます。人手不足の解消はさらに難しくなるでしょう。

-本当にそうなれば本末転倒ですよね。

それほど多くのマンパワーを得られるわけでもないのに、想定されるデメリットは決して小さくない。私が反対している理由です。

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