利用者の「満足」を測定することは可能か

在宅医療の推進を目的に、厚労省が全国在宅医療会議WGをスタートさせました。「在宅医療」とはなっていますが、実質的には、2018年のダブル改定に向けた「介護・医療連携のあり方」が視野に入っているといえます。その点で注目したいのは、今回のプレゼンで提示された「在宅医療の指標」としての「QOL評価表」の開発です。介護側から見たとき、今後重要な評価指標になる可能性があります。

安易な評価指標の導入がもたらす弊害

先の介護保険部会の取りまとめ意見では、ケアマネジメント手法の標準化がテーマとしてあがっています。仮に標準化のしくみを整えたとして、現場でそれを実践していくには、「何をもって標準化に向けた指標とするのか」ということ。つまり、現場のケアマネの仕事をどう評価するかが問われるわけです。

ケアマネの業務評価は大変に難しいものです。たとえば、利用者のADL・IADLの維持・向上だけを評価対象にした場合、あるサービス期間や設定目標だけを切り取って「維持・向上の進み方」を一律に評価するのは大きな危険をともないます。なぜなら、運動機能系の目標に向けては、その人をめぐる多様な個人因子が大きく影響するからです。

極端な話をすれば、生活上の不安が少ない利用者ほど、栄養状態、環境状況、そして(不安要因が少ないことによる)機能訓練等への意欲の高さというプラス因子が働きやすくなります。つまり、仮に評価報酬などが導入されれば、事業者にとって、そうした人ばかりを優先的に受けた方が経営効率は上がるわけです。指標の設定法を一つ間違えれば、個人因子によるサービス格差も生じかねません。

WGプレゼンで提示された重要な試み

となれば、大切なのは、人によって多様性に幅がある「個人因子」にしっかり目を向け、それを下支えするという支援のあり方です。ここに指標を持ち込むなら、単純なADL、IADLの改善ではなく、その人のQOL(生活の質)の改善を指標化しなければなりません。

今回のWGのプレゼンは、まさにこの点をテーマとしています。内容自体は在宅医療にかかるものですが、在宅における介護・医療連携という視点に立てば、介護サービスにも大きな影響を与える指標となるでしょう。

さて、ここで提案されている評価法の質問項目ですが、当初22項目だったものが、現場での実証を経ながら、最終的に4項目までに絞り込まれています。その内容は、(1)穏やかな気持ちで過ごしている、(2)充実した人生だったと感じている、(3)思い出やこれからのことを話す相手がいる、(4)介護サービスや在宅診療・看護に満足しているというもの。

この4項目で、本当に本人のQOLが評価できるのかという疑問はあるでしょう。この点について他の指標との比較検証を行なった結果、認知症の人の本人回答などを加味した場合に、「本人の主観的QOL」を反映するには、この4項目で足りることがわかりました。

報酬体系のあり方にも一石を投じる論点

それでも、サービスやケアマネジメントの質を評価するには、簡便すぎると思われる人もいるはずです。しかし、ここで考えたいのは、先の質問における「穏やかな気持ち」や「充実した人生への実感」といった本人主観について、この点に耳を傾けることが、これまでの医療・介護現場でどこまで重視されてきたかということです。たとえば、現場レベルで「本人の話にじっくり耳を傾ける」ことをどんなに大切にしようとも、国が推し進めるサービスの効率化はその点をほとんど顧みない中で進められてきました。これが、介護従事者に専門性を見失わせ、業務への誇りを奪ってきた大きな要因ではないでしょうか。

その点を考えたとき、今は「ほんの入口」としても、本人の生活の質のために効率化できない部分にようやく光が当たったのは大きな前進といえます。たとえ時間がかかっても、本人や家族の心を開き、その部分にしっかり耳を傾けること。それを実現するために、今の報酬体系をどう見直していくべきなのか。今回のプレゼンの重要性に、国としてもしっかりスポットを当ててもらいたいものです。

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