生活援助、通所、ロボット、集中減算… 介護報酬改定どうなる? 既出論点まとめ

《 左:介護報酬を議論する介護給付費分科会 》
2018年度の介護報酬改定をめぐる議論が本格化する年がきた。厚生労働省は年内に具体的な内容を固める予定だ。前回は基本報酬の大幅な引き下げでショックを与えたが、次回は一体どんな手を打つのだろうか。

すでに数多くの論点が浮上している。介護保険法の改正に向けてコンセンサスが必要だったこともあり、昨年に現状の課題や今後の展望が幅広く協議されたためだ。サービスの質の向上や合理化・効率化、費用の抑制に結びつける観点から、政府はいくつかの重要な方向性を打ち出した。社会保障審議会・介護保険部会が先月にまとめた意見書には、「改定にあわせて検討する」との記載が繰り返し出てくる。

社会保障審議会介護保険部会意見

それらを改めて網羅的に整理した。事業所の経営や現場の業務に強く影響するだけでなく、制度の行方を左右して業界に変化を促すような大切なテーマが少なくない。当面の議論の舞台となる介護給付費分科会は、徐々に頻度を上げながら秋ごろに佳境へ入っていく見通しだ。

すでに政府が位置付けた論点

 生活援助の見直し

先月19日に行われた麻生太郎財務相と塩崎恭久厚生労働相の折衝。生活援助を中心とする訪問介護の人員基準を緩和し、それに応じた報酬を設定する方針が決められた。要介護度への言及はなく、軽度者のみに限定した改革にとどまらない見通し。「限られた人材をより効率的に活用できる」といった前向きな意見もあるが、生活援助のカットが狙いとみて反発している関係者は少なくない。

 給付の適正化

先月19日の閣僚折衝で決められたことのひとつ。厚労省が公表した合意文には、「通所介護などその他の給付の適正化を検討する」との文言が盛り込まれた。通所はまたも名指しされた形。財務省はすでに、「機能訓練がほとんど行われていないなど、サービスの実態が利用者の居場所づくりにとどまっていると認められる場合には、減算措置も含めた報酬の適正化を図るべき」と主張している。

 ハイテク機器の導入促進

介護ロボットや見守りセンサー、ICTといった新たな技術を介護の現場に普及させる観点から、人員・設備の基準や報酬の単価を見直してはどうか ー 。次の改定に向けて俎上に載せることを、昨年11月の「未来投資会議」で安倍晋三首相が表明した。厚労省はすでに、見守りセンサーなどを活用する効果を実証する事業を始めた。審議会では委員から、「実証の結果が出る前から、いきなり基準や報酬の話をするべきではない」といった苦言も出ている。

 「科学的に裏付けられた介護」の展開

厚労省は今後、要介護認定やレセプトなどから得る様々な情報をより有効に活用できる仕組みを構築していく方針。塩崎厚労相をトップとする「データヘルス改革推進本部」を12日にも立ち上げ、具体化に向けた取り組みを加速させるという。ビッグデータを駆使し、自立支援の観点で効果の高いケアをエビデンスベースで確立して標準化することで、サービスの合理化や費用の抑制に結びつける狙いだ。政府は11月の「未来投資会議」で、そうしたケアを実践する施設・事業所を報酬面で後押ししたい意向を示している。

社保審・介護保険部会の意見書に盛り込まれた論点

 適切なケアマネジメントの推進

目玉は「特定事業所集中減算」の見直しだ。減算を受けない範囲で同じ事業所のサービスを優先させるところが少なくないことや、減収の回避のみを目的に良質な事業所を変えるケースがあることなどが指摘されており、審議会でも「不合理」「有効でない」といった批判が強まっている。このほか、医療機関との連携を強化してスムーズな入院・退院を支援する観点から、事業所の基準などを変える案も出ている。ケアマネジメントの質の向上につなげるため、事業所の管理者の役割を明確化する方針も示された。

 リハビリの展開

自立支援や予防の観点から、国はその効果を一層高めていきたい考えだ。通所リハの機能強化や通所介護との役割分担を、改めて俎上に載せると説明している。「短時間のサービス提供の充実」「専門職の配置促進」といった方向性も示された。訪問リハも含めて、できるだけ早い段階で介入することも課題に位置付けられている。職種間・事業所間の連携をさらに深める方策も提案される見通しだ。

 中・重度者の在宅生活を支える地域密着型サービスの推進

定期巡回・随時対応型サービスや小規模多機能、看護小規模多機能が含まれる。効率化の視点を踏まえつつ機能の強化を図り、サービスの提供量を増やしていくことが課題だ。定期巡回・随時対応型サービスをめぐっては、随時対応の職員とオペレーターの兼務を日中も認めるべきという意見がある。小多機については、居宅のケアマネが利用者を担当できるようにする案が浮上しているが、「ケアマネジメントを内包しているからこそ迅速・柔軟なサービスができている」といった慎重論も少なくない。

 特養の体制の強化

入所者の重度化への対応がメイン。医療ニーズに応え、看取りの質を上げることが引き続き求められる。医師や歯科医師、薬剤師、看護師などによる医療系サービスが外から入る仕組みも含めた検討が必要、との意見も出た。ただし、医療の過剰な提供を招きかねないという懸念も根強い。

 医療と介護の連携

最大のテーマのひとつ。診療報酬との同時改定となるため、シームレスなサービスの提供という視点はこれまで以上に重視される。介護保険部会では、入院・退院時の医療機関とケアマネ事業所、介護事業所の連携を深めることの重要性が指摘された。診療報酬によるアプローチは、主に中医協で議論されることになる。これまでのところ、多職種間の協働や看取り、認知症への対応、リハビリ、かかりつけ医、訪問看護といったキーワードが浮上している。

 介護療養病床の再編

厚労省は先月、高齢者などが長期間にわたって入院する「介護療養病床」の来年度末の廃止を見据え、転換先の選択肢として新たに3種類の施設を創設する方針を決めた。3種類の違いは医療体制の濃淡だ。通常国会に提出する介護保険法の改正案に盛り込む。詳細な運営基準や報酬などは、次の改定に向けたプロセスで設定されることになる。

 地域共生社会の実現

介護や障がい、子育て、生活困窮といった既存のジャンルにこだわらず、本人も含めたすべての関係者が協力して横断的に街づくりや福祉を担う「地域共生社会」は、これからスタンダードになっていく基本コンセプトだ。厚労省は次の改定で、通所の新たな類型として「共生型サービス」を創設する方針。詳細な基準はこれから詰める。障害福祉サービスの事業所でも高齢者を受け入れられるようにし、制度の使い勝手を高めたいという。マンパワー不足の深刻化が懸念されるなか、限られた人材を効率的に活用したいという思惑もある。このほか、相談支援専門員とケアマネジャーとの連携をさらに強化していく観点から、ケアマネ事業所の基準を見直す考えも示された。

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