介護施策は「働き方改革」の試金石

各省庁が2017年度の予算案を取りまとめています。政府が力を入れているポイントの一つが、長時間労働の是正やパワーハラスメント(以下、パワハラ)対策など「働き方」にかかる環境改善です。ここでは、「介護現場における業務改善を第一に」という視点から、この働き方改革というテーマを考えます。

下請けいじめなどが「働き方」を悪化させる

長時間労働などの是正を目指すとき、大切なのは、「会社組織内部の問題」として対策を打ち出すのでは不十分という点です。たとえば、中小企業が大企業からの下請け業務で収益を上げている場合、発注先との力関係が長時間労働などを生み出すことがあります。厳しい納期や発注費のダンピングなど、いわゆる「下請けいじめ」につながるような商風土を改善しなければ、ワークライフバランスの実現を社会の隅々まで広げることは困難です。

もちろん、国もそのあたりの対策を進めていないわけではありません。中小企業庁では、下請代金支払遅延等防止法(以下、防止法)を制定するなど、下請取引の適正化を図る施策を打ち出しています。この防止法では、代金支払いの遅延のみならず、発注する親事業者に対して、下請業者に責任がないにもかかわらずに代金を減額したり、不当に買いたたく等の行為を禁じています。また、2017年度予算案では、同防止法の厳正な運用等を図るために対前年度比で約1.4倍上積みしています。

「働き方」の悪化は、親事業者にも責任が

ただし、これはあくまで中小企業庁が管轄する事業であり、厚労省が打ち出している「働き方改革」と連動するものではありません。しかし、親事業者による不当な取引が、下請事業者内部の「働き方」を悪化させる大きな要因になっている状況もあります。

その点を考えれば、厚労省が打ち出す「長時間労働の是正に向けた法規制の執行強化」(対前年度予算との比較で約2倍の上積み)などにおいて、中小企業庁との実のある連携を図ることも必要でしょう。たとえば、中小企業への「働き方」の是正指導に際し、親事業者との取引内容に何らかの原因があると認められる場合には、親事業者側の責任も同時に問うという方法は考えられないでしょうか。

もちろん、先の防止法だけでは対応は難しいかもしれませんが、厚労省と中小企業庁の共管によって新法を制定するやり方もあるはずです。そうした法整備自体が行なわれることで、「中小企業内の働き方は、一企業内の問題を超えて社会全体で是正する努力をしなければならない」というメッセージとなります。

介護現場の親会社を「国」とたとえるなら…

さて、ここに介護現場の「働き方」の問題を絡めます。介護事業の多くは介護保険給付で成り立ち、その価格設定は介護報酬によって規定されます。乱暴なたとえかもしれませんが、国が設定した価格に基づいて事業者に「代金」が支払われるしくみであるなら、国は取引関係における親事業者ということになります。それを承認する株主は、保険料・税金を負担する国民ということになるでしょう。

仮に、国を民間の親事業者にたとえるなら、介護現場の「働き方」に悪影響を与える「価格設定」は、本来なら法律で厳しく規制されなければなりません。確かに、「国民が負担する貴重なお金を厳しく管理するのも国の責任」ではあるでしょう。しかし、現場の働き方を悪化させれば、民間の親事業者ならば企業の社会的価値を低下させ、それは株主(国民)の損失にもつながります。その点で、親事業者である国は、介護現場の適正な働き方を実現するために自ら襟を正すことが必要です。

もし、現政権が本気で「働き方改革」を進めるのであれば、自らが親事業者となっている介護現場の「働き方」に最大の配慮を払い、それができなければ法的な規制を受けるという厳しさを示さなければなりません。それこそが社会に範を示すリーダーのあり方であるはずです。国民としても、介護保険事業が「国をあげてのパワハラ」になっていないかを監視するという意識を持ちたいものです。

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