期中改定による新加算の効果は?

今年、介護保険にかかる大きなイベントといえば、4月の期中改定と介護予防・日常生活支援総合事業の全面スタート。そして、8月に予定される高額介護サービス費の見直しというスケジュールが上がっています。このうち、制度開始以降では異例となる期中改定について、その効果を展望してみましょう。

新加算で求められる新たなキャリアパス要件

介護給付費分科会の審議報告によれば、期中改定の主な対象は「介護人材の処遇改善」、つまり処遇改善加算の見直しとなります。見直しの具体案としては、現行4種類の処遇改善加算に加え、さらに加算率の高い新区分が設けられます。算定要件(案)は、現行の加算Iの「キャリアパス要件IおよびII+職場環境等要件(定量的要件)」とともに、新設のキャリアパス要件IIIを満たすことが必要です。

審議報告で示された新要件は、「経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組み」または「一定の基準にもとづき定期に昇給を判定するしくみ」を設け、それを就業規則等に記してすべての介護職員に周知することを求めるというものです。たとえば、「経験に応じた昇給」であるなら、3年目まで・3~6年・6年超でそれぞれ昇給するというしくみ。「資格に応じた昇給」であるなら、資格なし・介護福祉士・事業所が指定するそれ以外の資格でそれぞれ昇給することを定めるというわけです。

現行では、キャリアパス要件で職位・職責・職務内容等に応じた賃金体系を定めることは求めていますが、その「職位」がどうなれば上がるかを明らかにする点までは求めていません。そのため、各職員にとっては「どうなれば最終的に賃金が上がるのか」がよくわからないという課題が残ります。その点を明らかにすることで、加算による処遇改善が安定した昇給に結びつくことを狙ったわけです。

新加算の取得は「様子見」となる懸念も!?

確かに、現行の処遇改善加算では、賃金全体の底上げは行なっても、現場における「定期昇給にかかるルール」の縛りは決して十分とはいえません。そのため、結局「年度ごとの一時金」で処理されるケースが目立ち、現場職員にとっては安定的な生活設計につながらないという問題がありました。

しかし、この問題が今回の改定案で解消されるのかといえば、楽観はできません。なぜなら、入院期間の短縮によって利用者の状態像が不安定になったり、2018年度の基準改定で基本報酬の引き下げと基準緩和がセットでなされることにより、現場の就業環境がどうなるのかは読みにくい状況が続くからです。

ここで、職位や経験、資格による昇給を固定化して大丈夫なのか? 果たして現場はきちんと回るのか? 経営側としては、このあたりのビジョンが十分に描けない限り、職員の生活設計を確実に保障することは困難です。こうした読みにくい就業環境の中、経営側の中では「今回は様子見がいいのでは」と考える可能性があります。つまり、今回の新加算の取得率がどうなるかが懸念されるわけです。

289億円の予算効果は果たして上がるのか

もう一つの問題は、今回の審議報告で処遇改善加算の対象職員の範囲を広げることについて見送りの公算が強くなった点です。事務職や専任のケアマネ、看護職員などは依然として対象外のままとなった場合、法人全体の昇給ルールをどうするのかが問われます。

新加算によって、介護職員側の昇給ルールが再編されれば、組織としての整合性をとるために、他の従事者の昇給ルールも見直さざるをえません。しかし、他の従事者には安定昇給にかかる原資は基本報酬など処遇改善加算以外の部分です。それが上がらない(もしくは、2018年度以降下がる)と見込まれれば、やはり経営側としては「新加算の取得は見送りたい」という意識が働きやすくなります。

今回の新加算には、2017年度予算で289億円が計上されています。果たして、その予算に見合った効果が上がるのか。新加算の取得率や処遇改善状況に目をこらし、結果次第では、勇気をもって「基本報酬の改善」へと舵を切ることも考えるべきではないでしょうか。

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