2017年介護現場の「あつれき」に注意

2017年が明け、多くの介護施設・事業者は、今年1年の事業運営に頭を巡らせていると思います。新しい総合事業の全面スタートや、介護職員の処遇改善に向けた介護報酬の期中改定なども控える中、地域資源としての足場をどのように固めていくべきでしょうか。

2015年度改定で介護事業悪化の収支が顕著に

まず、厚労省から提示された「2016年度介護事業経営概況調査の結果(案)」を見てみます。それによれば、介護保険施設や居宅サービスについてはおおむね収支差率が悪化、一方で従事者の給与費割合は上昇しています。

基本報酬の引き下げと処遇改善加算の引き上げにかかる影響が、そのまま現れたという点では、ある程度予想された数字でしょう。ちなみに、居宅介護支援の収支差率は改善されていますが、それでも依然としてマイナスで、逆に給与費割合は悪化しています。処遇改善加算の恩恵を受けないケアマネにとっては、これからも厳しい状況が続くと言えます。

注意したいのは、サービス種別の平均では収支差率が依然プラスであっても、もともとぎりぎりでやっている事業所がマイナス収支に落ち込んでいる様子も目立つことです。たとえば、基本報酬の引き下げ幅が大きかった通所介護では、マイナス収支へと転落した事業所が2割台から3割台へと増えています。

収支悪化が生み出す「現場のクッション摩滅」

問題は、「給与比率が増えている分、現場としては結果OK」──というわけにはいかない点です。介護現場は地域環境の変化や利用者の状態像によって、常に変動しやすい状況にさらされています。そこから生じる現場負担を最小限に抑えるには、環境変化の衝撃をやわらげる「クッション」が必要です。

その「クッション」整備には、従事者の給費引き上げ以外に臨機応変の対応が必要です。ところが、収支差率が悪化していけば、「現場の働きやすさ」を整えるための投資も後回しになりかねません。たとえるなら、高齢者の膝関節の間の軟骨がすり減るようなものです。どんなに骨を強化しても、軟骨がすり減ってしまえば、膝が痛んでうまく歩けなくなり、転倒事故なども増えるでしょう。介護現場が直面しているのは、まさにこの状況です。

社会福祉法人の黒字幅が増えているというニュースがありましたが、これは「将来的な基本報酬のマイナス」をにらんで法人が萎縮し、必要な「クッション投資」に踏み切れていない状況を現わしているとも言えます。そうした法人側の姿勢には批判されるべき点もあるでしょうが、現実問題として社福の萎縮が強まっている点には注意が必要でしょう。

利用者や地域を巻き込んだ自己防衛策が必要

そうした中、今年前半に「3割負担導入」の法案が成立すれば、利用者の中には、将来的な負担増に向けて身構える人も増えるはずです。期中改定によって処遇改善加算が手厚くなり、それが広く報道されれば、利用者としては「従事者の待遇はよくなっている」と解釈する傾向も強まります。「それなら、現場へのクレーム等を遠慮なく出させてもらう」という意識も高まりやすくなります。つまり、ちょっとしたことで利用者と現場の従事者間のあつれきが強まる可能性があるわけです。

また、総合事業が全面スタートする中、対応が遅れている自治体の中には「見切り発車」的になるケースも考えられます。制度変更による説明不足が利用者のストレスをさらに高めるとなれば、ケアマネや相談員の対応も難しくなる場面も生じてくるでしょう。

以上の点を考えたとき、事業者・施設としては、現場にかかる「見えにくい負担」を軽減するための方策を意識的に強化しなければなりません。たとえば、家族会の開催頻度を増やしたり、地域の理解を得る広報活動に力を注ぎ、日ごろから多様なステークホルダー(利害関係者)との間で「顔の見える関係」を意識的に整えることが不可欠となります。

クッションの摩滅で現場に柔軟性が失われていくことに、残念ながら国はますます無頓着になっています。となれば、利用者や地域を巻き込み、現場として「従来のクッションに代わる自己防衛策」を一刻も早く築かなければなりません。2018年度改定の厳しい波が近づく中、あまり時間は残されていません。

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