自立支援介護を妨げてきたものは何か?

未来投資会議会合において、構造改革徹底推進会合(医療・介護──生活者の暮らしを豊かに)で打ち出された「自立支援介護」に向けた具体策が示されました。提言では、「自立支援の標準的な取り組みを行なわない事業所に対するディスインセンティブ(報酬減など)となるしくみも検討すべき」としています。

介護保険制度を「車のナビ」にたとえるなら

会合で出された資料のうち「自立支援介護」に関する課題を、まず確認しましょう。

「介護保険法では自立支援がその目的と明記されているにも関わらず、(中略)自立支援の取組が全国で広く行われている状況ではない。そもそも、どのような介護が効果的かについて国として体系的に定まっていない」

ここには重要な問題が含まれています。それは、「どのような介護が効果的かについて国として体系的に定まっていない」という点。これは、介護保険制度自体が、その創立時より「自立支援に向けた介護」への道筋を明確に定めてこなかったことを意味しています。

これを車のナビに例えれば、目的地となる「山」の場所は記しても、そこに至る「ルート」が示されず、ナビとしては不良品扱いされるに等しいケースです。となれば、問題解決は、「なぜルートを示さないままの製造・出荷が行なわれてきたか」の検証から始めなければなりません。ところが、今回の提言ではこの部分がすっぽり抜け、「効果的な介護の構造化・標準化」と「自立支援を後押しする報酬体系」という改善策しか示されていません。

先の「不良品ナビ」にたとえるなら、設計の指揮系統や製造ライン、出荷工程にどのような構造的問題があったのかを明らかにせず、改善策だけを提示していることになります。これでは、消費者側から見て、「新たな改善策をもってしても同じ問題が繰り返されるのでは」という疑念は払しょくされません。

施策側の構造的な問題にもメス入れが必要

このナビの例を介護保険にあてはめたとき、「現場が自立支援介護を(現実として)築けなかったのは、施策の立案過程そのものにも構造的な問題が潜んでいるのでは」という課題が浮かびます。この点にメスを入れずに構造化・標準化を進めたり、報酬体系を操作しても、根本的な問題解決は難しいわけです。

たとえば、今回の会合で提示された自立支援介護の好事例は、ほとんど特養ホームでのケースです。その中には、要介護4だった人が要介護2になったというケースがあるのですが、そうなると新制度では「原則として退所」も余儀なくされます。となれば、受け皿となるのは現行では(軽度者カットも議論されている)居宅系サービスとなります。

事例では、自立支援介護のために、入口段階での十分な水分・栄養確保による覚醒状態の改善、歩行練習、トイレ排泄の実施など一時的に密度の濃いケアが必要になります。また、きちんと時間をとってのコミュニケーションにより、心と身体のバランスを整えることも必要でしょう。では、これが現状の訪問・通所介護などの枠内でできるのでしょうか。

自立支援介護をうたう側に潜む大きな矛盾

今の報酬体系の中でヘルパーは時間に追われ、小規模な通所介護は基本報酬の大幅減額で、個別機能訓練に必要な人員さえ確保できない状況です。仮に先の特養での自立支援介護が機能したとして、施設から在宅へといった環境変化に際しては集中的な入口段階のケアは必要です。高齢であれば、いったん改善してもその維持が難しいのであり、「在宅で同じことまでは求めない」では済みません。

会合で提示された資料の中には、機能改善後の姿として、「介護ロボットによる安全歩行が確保されて、食事などが提供されれば多くの家庭で離職不要となる」としていますが、そんなに簡単なものでしょうか。

国はこれまで、食事提供の安定に寄与してきた家事援助のカットを公言し、専門性をもって自立支援をサポートするヘルパー(介護ロボットが普及したとしてもその専門性は不可欠です)の時間の切り詰めを行なってきました。実はこうした「目標と現実の施策」の間の矛盾に自立支援介護を妨げてきた構造があり、その部分の検証こそが、“不良ナビの再発”を防ぐための入口ではないのでしょうか。

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