成年後見制度の課題って? 新たな「利用促進法」の内容は?-成年後見センター・リーガルサポート専務理事 西川浩之

認知症や精神障がいなどで判断能力が十分でない人の生活を支えるため、財産の管理や契約などを第3者が代わりに行う「成年後見制度」。介護保険制度と同じ2000年度からスタートしたもので、その存在は少しずつ知られるようになってきている。

もっとも、これまでのところ十分に活用されているとは言い難いのが現状だ。高齢化などで社会が大きく変化し、日々の自立した暮らしに困難を抱える人が増加していくなかで、制度により多くの役割を期待する声も強くなってきた。

こうした状況を踏まえた新たな動きがある。今年4月、議員立法による「利用促進法」が国会で成立した。使い勝手を改善して広く普及させる改革を、総合的かつ計画的に進めていくよう政府に求めるものだ。地域で後見人を担う人材を育成・確保したり、本人が医療や介護をよりスムーズに受けられるようにしたり、家庭裁判所の監督体制を強化したりする必要があるとして、有効な対策を展開するよう促している。

成年後見制度は今、どのような課題を抱えているのか。新たな法律のディテールはどうなっているのか。介護職はどのように関わっていけばよいのか。普及・啓発の活動や後見人の後押しなどを行う「成年後見センター・リーガルサポート」を訪ね、西川浩之専務理事に詳しく解説してもらった。(聞き手・編集 Joint編集部 青木太志)


《 リーガルサポート 西川専務理事 》

旗振り役が不明確、制度が使いにくい

-制度の利用があまり進んでいないと聞きました。

そうですね。例えばドイツ。8,000万人超の人口に対して、同様の制度を使っている人はおよそ150万人だそうです。日本の人口は今、1億2,500万人くらいでしょうか。それで利用者は20万人に達していません。ケタがひとつ違うんですね。認知症の高齢者はすでに500万人を超え、2025年には700万人に達する見込みです。もちろん、認知症の方すべてが利用するわけではないのですが、20万人弱というのはあまりにも少ないんですね。

-どうしてでしょう?

幾つか指摘されているのですが、ひとつは旗振り役が明確でないということですね。同じ方向を向いて積極的に推進していこう、という体制を国としてしっかり取れていません。法務省の所管する制度ですから、高齢者や障がい者のサービスを多く担っている厚生労働省などが、働きかけをやや遠慮している面もあるかと思います。まぁ、どの役所も日頃からかなり忙しいですから、ある程度しょうがないのは分かりますが…。縦割り行政の弊害というか、うまく足並みが揃っていないというか、そういう見方もできるでしょう。

-中心となる組織や役割分担がはっきりしていないんですね。

制度の使いにくさも要因でしょう。例えば、法律の中身と実際のニーズのミスマッチがあります。後見人の職務は基本的に、財産の管理と契約などの法律行為の代理。医療に関する同意や身元保証・引受け、葬儀も含めた死後の様々な対応などは、本来的な役割ではありません。もちろん、現場の方は様々な形で努力されていますよ。でもやっぱり、家族のように何でも幅広くというわけにはいかないんですね、ルール上。実際に必要性があったとしても、その全てに素早く対応できるわけではありません。融通がきかない、大事なところであまり役に立たない、と言われてしまうこともあるんです。

-今のルールが良くないということですか?

制度に対する基本的な考え方の違いもありますよね。もともと家の財産を守る仕組みとして始まったものが、時代の流れとともに少しずつ個人の権利一般を守るという趣旨に変わってきた経緯があります。この制度で福祉的なニーズをどこまでカバーできるのか、あるいはすべきなのか。これは議論のあるところで、有識者の間でも見解の相違があるんです。今でも大きなコンセンサスができたとは言えない状況で、全体がいまいちまとまらない理由のひとつになっています。

コメント[8

コメントを見るには...

このページの先頭へ