高齢者の多剤投薬への“処方” 2016年度診療報酬改定とこれからの医療(4)

ライター:利根川恵子

複数の疾患を持つ高齢者では服用薬の数が多いうえ、老化も加わって、薬が原因で起こる副作用や相互作用など(有害事象)が増えることが知られています。高齢者では薬が6種類以上になると、目立って有害事象の発生率が高くなるという研究報告(*1)もあります(図1)。薬の数が増えるほど管理が複雑になるため、正しく服用されにくくなることも指摘されています。

これらの問題を受け、2016年度診療報酬改定では多剤投薬(ポリファーマシー)にメスが入りました。第4回目は、「かかりつけ薬局・薬剤師」の新設など、不適切な多剤投薬を改善するための対策に焦点を当てます。

*1:厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業)「高齢者の薬物治療の安全性に関する研究」

多剤投薬の背景にあるもの

今は医療機関で処方せんを受け取ると、その近くにある薬局(門前薬局)で薬を購入することが多くなっています。そのため、受診する医療機関が複数になると、薬局もいくつかにまたがり、すべての薬を一元的に把握・管理する仕組みがありません。

その対策としてお薬手帳も用いられていますが、何冊も手帳を持っている人もいて必ずしもうまく機能していない現状があります。そのため今改定では、お薬手帳を持参して過去6カ月以内に行ったことのある薬局を再度利用した場合、自己負担が10円~40円安くなる仕組みも導入されています。

加えて医師にとっては、他の医師が処方した薬は減らしにくいというハードルもあります。不用意に薬を切ることで思わぬ症状が出る可能性もありますし、忙しい診療の合間に処方医に問い合わせをする余裕もありません。不適切な多剤投薬の改善には、これらの様々な要因への対処が必要とされます。

2016年度診療報酬改定では、まず医師に対して薬を減らすインセンティブが導入されました。入院、外来、在宅を問わず、6種類以上の内服薬が処方されている患者に対し、効果と副作用の可能性などを総合的に評価したうえで、2種類以上薬を減らしたときに報酬が得られる仕組みです。かかりつけ医を中心に、減薬の取り組みが進むことが期待されます。

残薬の多い患者への薬局の支援を後押し

薬局による残薬の把握や服薬管理を後押しすることで、不要な処方を減らす仕掛けも講じられました。今までは、薬局が外来患者に対して残薬の整理などを行う場合、医師に事前に確認することが必要とされました。今改定ではそのルールを見直し、患者や家族などの求めに応じて、薬剤師が薬局の窓口や、訪問した患者宅で残薬の整理などを行うことが認められ、医師にはその結果を情報提供すればよいことになりました。

これにより、薬局が自発的に動きやすくなり、訪問薬剤指導までは必要ないものの、服薬管理が十分にできない利用者への支援が進むと予想されます。さらに、薬の管理が苦手な人に対しては、もらった薬をまとめて入れておくバッグを渡し、毎回来局時にバッグごと持参してもらい、残薬をチェックするという取り組みも行われています。薬が余りがちな利用者などがいる場合、薬局に相談してみるといいでしょう。

薬に関する取り組みでは、実はケアマネジャーの存在が重要です。在宅医療が入っていない場合、利用者・家族の自宅での薬剤管理状況を知っているのは、ケアマネジャーや介護職だけだからです。副作用などが疑われる症状がある、薬の飲み残しが多い、薬を指定の時間帯に飲めていないなど、薬に関する問題や疑問があれば、医師や薬剤師に情報提供しましょう。それが処方見直しのきっかけになる場合があります。医師に直接連絡しにくければ、薬剤師や看護師にまず相談してみましょう。

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