かかりつけ機能と在宅医療 2016年度診療報酬改定とこれからの医療(3)

ライター:利根川恵子

大病院では専門的な診療を、中小病院・診療所では慢性疾患などの日常診療を行う――外来医療でも、そのようなイメージのもと、大病院と診療所などとの役割分担(機能分化)が進められています。今年4月から大学病院などでは、紹介状なしで受診した患者から、診療費とは別に初診時には5,000円以上、2回目以降(再診時)は2,500円以上を取ることが義務付けられました(第1回目記事参照)。これも、患者の受診行動を変え外来の機能分化をうながすための施策です。

それと併行して、診療所などにはかかりつけ機能の強化が求められています。第3回目は、2016年度改定における中小病院・診療所のかかりつけ機能と、在宅医療の動向を読み解きます。

高齢化で重視されるかかりつけ機能

前回の2014年度改定では、中小病院・診療所に対して“主治医機能”を評価する診療報酬(地域包括診療料・加算)が設けられました。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、認知症のうち2疾患以上を持つ患者を対象に、1人の医師(主治医)が、他の医療機関の受診状況や処方薬も把握し、治療だけでなく日常的な健康管理、また介護保険に関わる対応や在宅医療まで担うことが条件です。

その内容からは、高齢者人口が増えるなかで、国が診療所などに期待する「かかりつけ機能」がうかがえます。予防から治療、介護まで関わるワンストップの診療機能を持ち、必要時に専門医につなぐ“ゲートキーパー”役です。

疾患ごとに異なる医療機関にかかったり、自由に医療機関を選択し受診することは、メリットは大きい半面、検査や薬の重複や、大病院の外来への患者集中などの原因にもなっています。主治医機能は、いわばこれらの課題の解決策として提示されたもの。今回の改定では、歯科医と薬剤師についてもかかりつけ機能が導入されています。

ただ、主治医機能が普及したかといえば、現状ではそうとはいえません。その大きな理由は、人員体制、機能などの要件が厳しいことです。そのため今回の改定では、診療所については3人以上とされた常勤医を2人以上にするなど、基準を少し緩和しました。

認知症に重点を置いた主治医機能も

新たに、認知症に重点を置いた主治医機能も設けられました(認知症地域包括診療料・加算)。従来の主治医機能でも認知症は対象に位置付けられていましたが、認知症での主治医機能の届け出が少なかったのです。一方で、認知症患者では、他の疾患を併せ持つ人が多いこともわかっています。そこで、疾患を限定しないで、1疾患以上を合併する認知症患者を対象にした主治医機能が設けられたのです。

これらの見直しにより、主治医機能が広まるかどうか見通しはまだ不透明です。というのも、24時間対応から服薬管理、介護保険対応、在宅医療などまでとなると、主治医の負担が大きいからです。また、患者がこうしたスタイルを望んでいるかという問題もあります。

ただ、人口減少と高齢化が進むほど、要介護者への対応は、地域の診療所にとって経営上重要になります。2025年に向けて主治医機能が、今後どのような形でどこまで拡大されるかも注目されます。

そのほか認知症関連では、診療所型の認知症疾患医療センターの診療報酬が設けられました。認知症疾患医療センターは、認知症の原因の鑑別診断などをする医療機関です。これまでは病院だけが指定されていましたが、新オレンジプランで診療所の指定が認められたことを受けての改定です。これにより、よりアクセスしやすい診療所型センターが増えることが期待されます。

在宅医療の報酬は居住場所と重症度で区分

かかりつけ機能とともに、地域包括ケアシステムで重視されているのが在宅医療です。今改定では、報酬体系が根本的に見直されました。前回の改定では、集合住宅などに患者を集め過剰に訪問診療させ、報酬のキックバックを受ける悪質な業者などが問題になりました。そのペナルティとして、高齢者住宅など同一建物の居住者への訪問診療の点数が、4分の1程度に大きく減額されたのは記憶に新しいところです。

しかし、減額幅が大きかったことから、現場から高齢者住宅などへの訪問控えを懸念する声があがり、緩和措置が導入された経緯があります。それにより、同一建物内で複数の患者を持っていても、訪問日をずらすことで高い報酬を算定できることになり、結果として非効率な医療が展開されていました。

そこで今回の改定では、在宅医療の報酬体系が、重症度や居住場所に応じたものに見直されました(図1)。在宅医療の医学管理料は、自宅や居住施設などでの管理料(在宅時医学総合管理料)と、養護老人ホームや特養、特定施設など施設での管理料(特定施設入居時等医学総合管理料)に分けられます。施設向けの管理料は、自宅向けよりも少し低めに設定されています。

今回の改定では、この施設向けの管理料の名称が改められるとともに(施設入居時等医学総合管理料)、その対象が有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、認知症グループホームにまで拡大されました。自宅以外のほとんどの場について、施設向けの報酬が適用されることになったのです。

さらに、同じ建物内に複数の患者がいる場合、その患者数(単一建物診療患者の人数)によって、「1人」「2~9人」「10人以上」の3段階で報酬が設定されました(図2)。こうした区分は施設向けの管理料でも同じです。

10人以上では大幅な減額になるため、今後は同一施設の患者数を9人以内に抑える医療機関も出てくるでしょう。ただ、9人以下では報酬の傾斜は緩やかなため、前改定時のような混乱は生じないと思われます。

また、これらの報酬の算定のためには月2回以上の訪問が必要でしたが、新たに月1回の訪問も認められました。状態が安定している患者などでは、訪問が月1回に減らされるケースも出てくるかもしれません。

それに伴って、医師との間で症状の観察ポイントや緊急時の連絡方法など、医療情報の共有について改めて確認しておくことも大切です。また、症状のチェックのために、訪問看護など医療系サービスを活用するのも一案です。

在宅専門診療所には厳しい条件も

今改定では、在宅専門診療所も初めて認められました。これまでも、実質的に在宅専門という診療所はありましたが、法律で医療機関にはすべての人をオープンに受け入れる体制、つまり外来機能を持つことが課せられていたため、正式には認められていなかったのです。

今改定で解禁された理由には、在宅医療を担う医療機関が不足している地域が多いことがあります。ただし、在宅専門診療所には縛りも設けられ、「在宅医療の提供地域をあらかじめ規定する」といった条件がつけられました。加えて、報酬の高い在宅療養支援診療所になる場合には、有料老人ホームなど施設入居の患者への訪問が7割以下、要介護3以上の患者の割合が5割以上という、普通の診療所よりも厳しいハードルが設けられました。施設入居者や、軽症者を多く集めて効率的に収入を上げる診療所が出るのを防ぐためです。

ケアマネジャーには、自宅患者や重症者の紹介依頼が舞い込む可能性もあります。診療所の評判などにも注意を払い、慎重に対応したほうがいいでしょう。

ライター:利根川恵子
1968年生まれ。東京薬科大学薬学部卒、薬剤師。医療現場を経て医療系出版社に入り、2000年に独立。地域連携やリスクマネジメントなど医療制度、経営などをテーマに医療現場などの取材を中心に手がける。東京医科歯科大学医療政策学修士。介護保険制度開始後は、ケアマネジャーなど介護分野も取材。アセスメントや対人援助の奥深さに興味を持つ。著書に、『福祉・介護職のための病院・医療のしくみ まるわかりブック』(監修/杉山孝博、中央法規出版)など

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