社会保障議論で浮上した新たなしくみ

政府の経済財政諮問会議で、塩崎厚生労働大臣が臨時議員として資料提出を行ないました。その中の「新たな施策展開」の提案として、医療・福祉分野での「ソーシャルインパクトボンド」というしくみが取り上げられています。これは一体どのようなしくみでしょうか。

ソーシャルインパクトボンドとは何か?

ソーシャルインパクトボンドとは、社会貢献型の債券のことです。債券なので投資家が購入し、その資金をもって社会貢献事業が行われ、事業の成果に応じた配当が投資家になされることになります。経済財政諮問会議での塩崎大臣の資料では、そのしくみについてさらに詳しい説明図が示されています。

(1)まず、民間の資金提供者(上記で投資家にあたる存在)が債券購入などを通じて資金を提供します。(2)その資金をもってサービス事業者が利用者にサービスを提供します。(3)その提供されたサービスについて、サービス評価機関が指標に基づいて客観的に評価します。(4)(3)の機関から行政に対して評価報告がなされ、その報告から得られた成果(目標達成)に応じて行政からサービス提供者に支払いが行われます。(5)(4)の支払いをもとに、サービス提供者から資金提供者へと資金返済が行われます。ここでは「返済等」となっていますが、しくによっては「資金提供者への配当」という形をとることも考えられます。

公的サービスを投資家からの資金で運営?

このしくみの特徴は大きく分けて2つ。

1つは、公的な財政(社会保険料なども含むことも想定される)からサービス提供者への支払いがなされる点は現行の社会保険制度と同じですが、そこに「評価指標」による成果払いが入ってくるという点です。つまり、同じサービスを提供する場合でも、その効果によって支払い額が変わってくるわけです。

もう1つは、支払われたお金は、最初の資金提供者に戻ってくるという点です。その場合、上記のような成果払いが入ってくるとなれば、「高い成果を上げた事業者」ほど収益が大きくなり、「成果が低い事業者」は収益が小さくなることが想定されます。仮に「投資→配当」という株式と同じしくみが導入された場合、「成果が高い事業」へ投資するほど投資家に返ってくる配当も増えることになります。

これが現行の介護保険制度とミックスされた形となった場合、事業者の運営資金は投資家からの資金提供でまかなわれることになり、介護報酬など保険財政から拠出は、事業者収益のみならず投資家への返済・配当という部分へと使われることも考えられるでしょう。

たとえば、現場で働く人の待遇はどうなる?

仮に、このしくみが介護保険サービスに導入された場合、「高い成果を上げた事業者」には、高い報酬が支払われるだけでなく、資金提供者(投資家)の人気を集めることでさらに多くの資金が集まることになります。事業の拡大に向けた好循環が生まれるわけです。

これに対し、「低い成果しか上げられない事業者」は、経営状況も厳しくなるだけでなく、資金も集まりにくくなります。要するに、市場からの撤退や他事業者による吸収を受けざるをえないスピードが早まるわけです。

塩崎大臣の資料では、このしくみをすぐに社会保険制度に導入する旨は示されていません。あくまで、国による財政拠出が十分に行なわれていない分野での「地域行政」による先進的な取り組みが想定されているようです(例:引きこもりの若者の就労支援など)。しかし、「社会保障の効率化」という効果が期待されている点で、部分的な導入効果が認められれば、社会保険制度のあり方にもかかわってくる可能性がないとは言えないでしょう。

アメリカでは、このしくみを活用することで、刑務所の受刑者の更生プログラムなどが実施され、実際に効果を上げているという報告があります。ただし、こうしたわが国の社会保障の風土に合うのかどうか。そこで実際に支援を手がける人たちの処遇などに、どのような影響を与えるのか。さまざまな課題を考慮しなければなりません。この議論には、介護現場も注目する必要があります。

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