入院医療―退院支援で重視されるケアマネとの連携 2016年度診療報酬改定とこれからの医療(2)

ライター:利根川恵子

第2回目は、入院医療についての改定項目です。ケアマネジャーに関連のある項目をピックアップして紹介します。

入院病床に導入される重症度割合の要件

医療機関の入院病床は、急性期、回復期(急性期後)、慢性期に大きく分かれます。2016年度診療報酬改定では、このうち急性期病床、なかでも点数が高く看護職員配置の手厚い、7対1一般病棟の数を絞り込むことが、医療費削減のためにも大きな柱とされました(第1回目記事参照)。

そのための仕掛けが、前回改定に引き続いて行われた、患者の重症度などを評価する基準(重症度、医療・看護必要度)の見直しです。この基準に当てはまる重症患者が一定割合以上入院していることが、7対1病棟の条件とされています。

今改定では、救急搬送や手術後などのより重度なケースを基準に取り入れるとともに、重症患者の割合を10%引き上げました。外科手術や救急受け入れの少ない中小規模の病院では、7対1病棟に止まるのは厳しいのではという見方も出ています。

このように入院患者の状態像とその割合が、診療報酬や病棟の基準などに関わる仕組みは、急性期以外の病床にも導入されています。急性期後の病棟(地域包括ケア病棟)や、リハビリを重点的に実施する回復期リハビリテーション病棟でも、今回基準や割合が見直されました。ただし、7対1病棟からシフトしやすいように、どちらの病棟の要件も少し緩和されています。

療養病床では医療と介護の線引きも

一方、慢性期の(医療)療養病棟では、入院患者の状態についての基準が新たに導入されました。以前は、体制の手厚い療養病棟(療養病棟入院基本料1)に関しては、「医療の必要度が高い入院患者(医療区分2・3)の割合が80%以上」という条件がありました。

しかし、それ以外の病棟(療養病棟入院基本料2)では、そうした縛りがなかったため、医療必要度の比較的低い、医療区分1の患者を多く入院させている病院もありました。今回の改定では、この療養病棟2に、「医療区分2・3の患者の割合が50%以上」という要件が追加されたのです。

本格的な導入は2018年4月からですが、今後は医療必要度の高くない患者を、医療保険の療養病棟で受け入れることがだんだんと難しくなることが予想されます。その受け皿になるのは、療養機能強化型をはじめとする介護療養病床などでしょう。療養病棟2への基準の導入は、つまりは医療保険と介護保険の境界線を示したとも解釈できるのです。

介護療養病床は2018年3月末に廃止され、代わりに新たなタイプの施設が創設される予定ですが、今改定を踏まえると、新施設には現状の介護療養病床よりも高い医療機能が求められるかもしれません。高齢者が増加するなかで、医療と介護の垣根はますます低くなると考えられます。

病院看護師が退院直後に自宅訪問

地域包括ケアシステムでは、療養の場は自宅などを基本にし、必要のあるときのみ病院や介護施設に入院・入所する形が目指されています。そのため前回の改定では、急性期から慢性期までの各病床において、算定要件として退院後に自宅や居住系施設、介護施設などに戻る患者の割合(在宅復帰率)も盛り込まれました。

合わせて、出口である退院についても、早期退院や在宅復帰を支援する体制の強化が図られています。今回の改定では、退院直後の自宅療養を支援する機能も新設されました。

医療ニーズの高い患者が在宅復帰する際、入院していた病院の看護師などが、退院後1カ月以内に自宅を訪問して在宅での療養内容の指導を行うことが新たに評価されたのです(「退院後訪問指導料」)。対象となるのは、認知症高齢者(日常生活自立度判定基準III以上)や末期がん、筋萎縮性側索硬化症、筋ジストロフィーで緩和ケアなどを受ける人、在宅で中心静脈栄養を受ける人などです(図1)。


《 図1:厚生労働省保険局医療課「平成28年度診療報酬改定の概要」より抜粋 》

訪問看護のようにケアを提供するものではありませんが、経験の少ない疾患や医療処置への対応が必要なケース、また終末期で時間が限られているケースなどで、自宅療養初期の体制づくりや、訪問看護師へのスムーズな引き継ぎなどの面で役立つと思われます。実施するかどうかは病院側の判断になりますが、必要性を感じる場合は、ケアマネジャーから提案してみるのもよいでしょう。

退院支援ではケアマネとの連携を重視

退院支援(退院調整)については、改定を重ねるたびに評価が手厚くなり、退院支援部門を設けて専門の担当者を置き、退院困難な要因を持つ人を早期に見つけて介入する病院も増えてきています。今回の改定でも体制の強化が目指されているのですが、これまでのように退院までの期間ではなく、ケアマネジャーをはじめとする、退院後の療養を支える医療・介護職との連携実績などが重要視されているのが注目ポイントです。

まず、入院中からケアマネジャーに情報提供することを評価した、「介護支援連携指導料」が引き上げられました。算定要件はそのままですから、これまで連携に熱心でなかった病院に取り組みをうながすためのインセンティブといえるでしょう。在宅医などとの情報共有などを評価した「退院時共同指導料」についても同様です。

さらに、病院の退院支援体制を評価する「退院支援加算」でも、連携実績が重視されています。退院支援加算は、従来の退院調整加算を再編し新設されたもので、2段階の点数設定となっています。

「退院支援加算1」はかなり高い配点ですが、その分ハードルも一段と引き上げられ、退院支援の介入をより早期から行うことや、病棟にも退院支援業務専門の職員を置くこと、そして地域の医療・介護職との連携での一定の実績などが求められています(図2)。病棟への専門職員の配置は、ケアマネジャーとの連絡をスムーズにする意味でも期待されます。


《 図2:厚生労働省保険局医療課「平成28年度診療報酬改定の概要」より抜粋 》
※表中の「多職種によるカンファレンス」は、病棟の看護師や退院支援部門職員など院内の関係職種によるもの

連携の実績では、(1)地域の医療・介護関係機関20ヵ所以上と連携し、各機関の職員と年3回以上「面会」すること、(2)介護支援連携指導料が、一般病棟などの場合は病床100床当たり年間15回以上(療養病棟等では10回以上)算定されていることが条件に位置付けられました。

その目的は、互いの顔が見える連携体制をつくること。(1)については、会合や研修などでの顔合わせは対象外ですが、退院前の打ち合わせなどは「面会」として認められます。そのため、ケアマネジャーや介護職などを交えた、退院前カンファレンスなどが増えることも考えられます。

地域包括ケアシステム構築が掲げられてから、医療機関を取材するなかで、医師や看護師などからのケアマネジャーに対する注目度の高まりを感じることがあります。退院支援に関わる項目の改定は、そうした動きを反映したものといえるでしょう。

ライター:利根川恵子
1968年生まれ。東京薬科大学薬学部卒、薬剤師。医療現場を経て医療系出版社に入り、2000年に独立。地域連携やリスクマネジメントなど医療制度、経営などをテーマに医療現場などの取材を中心に手がける。東京医科歯科大学医療政策学修士。介護保険制度開始後は、ケアマネジャーなど介護分野も取材。アセスメントや対人援助の奥深さに興味を持つ。著書に、『福祉・介護職のための病院・医療のしくみ まるわかりブック』(監修/杉山孝博、中央法規出版)など

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