診療報酬改定で高齢者の医療はどう変わる? 2016年度診療報酬改定とこれからの医療(1)

ライター:利根川恵子

今年4月に診療報酬改定が行われました。介護報酬の場合は3年に1回ですが、医療機関での治療費や薬局での薬代などを決める、診療報酬の改定は2年に1回。

2016年度診療報酬改定では、医師の技術料などは0.49%引き上げられ、薬代は1.22%引き下げられました。診療報酬全体では0.84%、約800億円の削減になっています。

2018年度には、診療報酬と介護報酬の同時改定が予定されていますが、2016年度診療報酬改定はその布石ともいえます。2016年度改定と医療機関の動き、そして高齢者や介護保険サービスなどへの影響などを、4回に渡って解説します。

重症例受け入れが“急性期病床”の条件

第1回目は、2016年度診療報酬改定の全体的なポイントを紹介します。介護報酬でもそうですが、改定には国が思い描く制度の方向性が反映されています。高齢化や医療技術の高度化で、毎年伸び続ける医療費を抑制することが課題になっていますが、なかでも効率化が目指されているのが入院医療です。

緊急度の高い医療や専門的な治療を手がける、重装備で高コストの急性期の入院病床を減らし、急性期後の治療やリハビリなどを提供するより軽装備、低コストの病床に振り分ける、役割分担(機能分化)がうながされています。

今回の改定では、急性期の病床のなかで、最も体制が手厚く、報酬が高い病床(7対1一般病棟)の数を絞り込むことが柱の一つにされました。というのも、全病床のなかで7対1病棟が一番多いという、歪んだ状況があるからです。

経営を考えれば、病院もより報酬の高い病床を算定したいもの。その結果、多くなりすぎてしまった7対1病棟をどう減らすかが、ここ数回の改定での命題とされてきました。

今回の改定では、7対1病棟で受け入れる患者像を見直すことで、算定のハードルを一段引き上げました。救命治療後や手術後間もない状態など、より重症な患者の受け入れ割合を増やすことを算定の条件にしたのです。重症な患者を一定割合以上確保できない場合は、条件の緩やかな病床に変更することになります。

こうした流れのなかで、特に病院が多い地域では、重症例を選別して受け入れる傾向が強まる可能性もあります。日頃から、在宅利用者の急変時の受け入れ先を確保しておくことが、ますます重要になるかもしれません。

退院支援でケアマネとの連携を重視

高齢者が増えるなかで、療養の場も医療機関中心から、自宅や居住系施設など地域にシフトさせる方針が打ち出されています。できる限り、住み慣れた自宅などで生活を続けられるように、医療や介護、予防、住まい、生活支援を包括的に提供できる体制(地域包括ケアシステム)を、地域につくるという構想です(図1)。


《 図1:地域包括ケアシステムの構築について(平成28年度診療報酬改定の概要より) 》

専門的な治療が必要になったら、一時的に入院して治療を受け、良くなったらできるだけ速やかに自宅などに戻ります。治す医療から、生活の質を重視した医療への転換をうながすとともに、限られた病床を効率的に回すことで医療費を抑制する狙いもあります。

そのために欠かせないのは、病院から自宅などにスムーズに橋渡しをすることと、地域での医療資源です。2016年度改定では、退院に向けて早期からサポートする退院支援や、在宅医療などの機能が強化されました。

そのなかで、在宅療養のキーマンとして、ケアマネジャーの存在がクローズアップされています。この改定では、退院支援に関わる加算の要件に、ケアマネジャーとの連携が新たに追加されました。今後病院は、より連携に積極的になると予想されます。

そのほか今回の改定では、保険薬局が患者さんに継続的に関わり、薬の一元的な管理を手がける“かかりつけ薬剤師”の導入や、重症度や居住場所などに応じた在宅医療の報酬の見直しなどが行われています(表1)。全般的にみると大きな変更点は少ないのですが、不適切な多剤投薬の是正などにも踏み込むなど、高齢者との関わりでは注目すべき点も多い改定となっています。


《 表1:28年度診療報酬改定の基本的考え方(平成28年度診療報酬改定の概要より) 》

【コラム】
紹介状なしの大病院受診は最低5,000円上乗せ

日本では、基本的に自由にどの医療機関にも受診できるため、軽いケガ、病気でも大病院にかかる人が多いのが実状です。そのために大病院では、専門的な治療が必要な人に時間がかけられない、外来診療が長引き医師の負担が大きくなるといった問題も生じています。
そこで最近では、大病院では主に専門的な診療を、中小病院や診療所では慢性疾患などの日常的な診療を担う形で、外来での機能分化が推進されています。一定規模以上の病院では、診療所などの紹介状なしに受診した患者からは、初診時に診療費とは別に、特別料金を請求してよいという仕組みも導入されました。ただし、特別料金を請求するかどうか、金額をいくらにするかは各病院の判断に委ねられ、請求しない病院もありました。
この4月からは、機能分化を強化する目的で、大学病院をはじめとする一部の大病院(※)に対し、患者からの特別料金の徴収が義務付けられました。紹介状なしにこれらの大病院を受診した場合、最低でも初診時は5,000円、他院を紹介されたにも関わらず2回目以降も受診したとき(再診時)は2,500円を徴収しなければならないというルールです。
費用負担を大きくすることで、大病院への安易な受診を抑制しようという狙いです。風邪など軽い病気で、大学病院などを利用する人は注意が必要です。ただし、救急で受診した人や、その病院の判断によっては、他の科にもかかっている人、健診などで精密検査の指示を受けた人などは、特別料金徴収の対象外になります。
※大学病院などの特定機能病院、一般病床500床以上の地域医療支援病院

ライター:利根川恵子
1968年生まれ。東京薬科大学薬学部卒、薬剤師。医療現場を経て医療系出版社に入り、2000年に独立。地域連携やリスクマネジメントなど医療制度、経営などをテーマに医療現場などの取材を中心に手がける。東京医科歯科大学医療政策学修士。介護保険制度開始後は、ケアマネジャーなど介護分野も取材。アセスメントや対人援助の奥深さに興味を持つ。著書に、『福祉・介護職のための病院・医療のしくみ まるわかりブック』(監修/杉山孝博、中央法規出版)など

コメント[1

コメントを見るには...

このページの先頭へ