民間介護保険の現物給付が実質解禁!?

厚労省の介護保険部会などで、次期改正・改定に向けた議論が進みつつあります。さまざまな課題があがる中、今後着目しておきたいポイントを一つあげてみることにします。それは民間の保険事業との関係についてです。

現行法では現物給付は禁止されているが…

独立行政法人のUR都市機構が、旧都市公団から受け継いだ公団住宅を高齢者向けの賃貸住宅として提供しています。種類はいくつかあるのですが、その中の一つに、家賃や管理費用の支払いに際して、以下のようなしくみあります。それは、生命保険会社の終身年金保険に加入して、その保険から支払われる年金を家賃等にあてるというものです。

あくまで保険加入は入居者の個別選択ですが、何となく民間介護保険の現物給付を連想させます。なぜなら、その賃貸住宅では、緊急時の対応のほか、日常的な健康管理や生活支援などのサービスもセットになっているからです。家賃以外の管理費用の中には、こうしたサービスへの費用も含まれています。

ちなみに、民間介護保険では、現物給付(保険金の代わりに現物のサービスを提供する、公的な介護保険と同じしくみ)自体は、現行の保険業法では禁止されています。「でも、解禁される話も聞いたような…」という人もいるでしょう。その話はまんざら間違いでなく、実は実質的に解禁の方向になりつつあります。

金融庁WGの報告書で示されていた内容

経緯を少し整理してみましょう。およそ3年前、金融庁のワーキンググループで、「新しい保険商品・サービスおよび募集ルールのあり方」についての報告書が出されました。その中で、生命保険における現物給付解禁の論点も示されましたが、結論としては「現物給付の解禁については、引き続き将来の検討課題とすることが適当である」としています。

ところが、一方で以下のような内容であれば現行法でもOKという内容が示されました。それは、保険会社が特定のサービスを提供する提携先の事業者を保険加入者(利用者)に紹介し、加入者がそのサービスを希望した場合に、加入する保険から事業者に対して直接サービスの代金を支払うというしくみです。

このしくみを「直接支払いサービス」といいますが、この方法は「法令上、特段禁止されていない」としています。その根拠は、「この場合、保険会社が給付するのは、あくまで保険金であって、提携事業者が提供するサービスではない」という解釈です。

今年5月の改正法施行がおよぼす影響とは?

たとえば、以下のようなケースを想定してみましょう。保険会社と同一グループの子会社などが有料老人ホームを建て、入居者にその保険会社の保険に加入してもらうとします。そして、その入居者に介護が必要になった場合、(そのホームが住宅型であれば)基本的には公的な介護保険によって外部の事業者からサービス提供を受けることになるでしょう。

しかし、区分支給限度額を超えて「もっとサービスを利用したい」というケースや、「公的な介護保険でまかなわれないサービスを使いたい」という場合、その費用を上記で述べた「加入する生命保険での直接支払いサービス」であてるというしくみが考えられます。サービス提供を行なう事業者はあくまで保険会社とは別ですが、利用者から見れば、限りなく現物給付に近いイメージとなるでしょう。

実は、今年の5月から改正保険業法が施行されますが、その内容の一つに、「保険募集の際の顧客への情報提供義務が厳しくなる」という点が示されています。これについて生命保険の業界団体が出した法令解釈の資料を見ると、必要な情報提供の中身に先の「直接支払いサービス」も例としてあがっています。

顧客への説明責任が厳しくなるのはいいのですが、逆に言えば、「直接支払いサービス」を拡大していくうえでのお墨付きができるとも言えます。これを受けて、実質的な現物給付に近い形が広がっていくとなれば、公的介護保険のあり方にも何らかの影響が及ぶ可能性があります。介護保険部会などでも、議論の遡上に乗せることが必要かもしれません。

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