特養多床室の室料負担やプライバシー保護等、27年度改定での論点に

社会保障審議会 介護給付費分科会(第104回 7/23)《厚生労働省》

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提供:厚生政策情報センター

今回のポイント
●平成27年度介護報酬改定に向けて、介護給付費分科会で特養ホーム(介護老人福祉施設)を中心に議論
○特養ホーム入所者への医療提供、介護報酬でどこまで評価すべきか
○特養ホームの多床室、室料負担やプライバシー配慮などをどう考えるか
○地域包括ケアシステム構築に向け、特養ホームに小規模多機能型併設等認めるべきか
○認知症対応を評価する加算、算定が低調な原因などを今後分析
○特定施設入居者生活介護、ショートステイ利用要件を緩和すべきか

厚生労働省は7月23日に、社会保障審議会の「介護給付費分科会」を開催した。

この日は平成27年度の介護報酬改定に向けて、主に介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)について議論を行った。

◆特養ホーム入所者への医療提供、介護報酬でどこまで評価すべきか

介護保険サービスは、大きく「居宅サービス(訪問介護や通所介護など)」「地域密着型サービス(小規模多機能型居宅介護や定期巡回・随時対応サービスなど)」「施設サービス(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)」に分けられる。

今回は、施設サービスのうちの介護老人福祉施設(以下、特養ホーム)に焦点が合わせられた。

特養ホームは、平成26年3月時点で7982施設あり、受給者(入所者)は52万1000人にのぼる(p5参照)。

「終の棲家」とも称されるように、専ら要介護度が重く、居宅での生活が困難な人の生活の場と考えられている。

要介護度の高い人には、必然的に一定程度の医療ニーズがある。そこで特養ホームでは、入所者の健康管理・療養上の指導を行うために、医師や看護師の配置が義務付けられている(p5参照)。一般的な医療は配置医等が提供し、それは介護報酬の中で評価されていることから、【初・再診料】や【生活習慣病管理料】などを請求することはできない(p20参照)。

また、外部の医師による医療提供は、「がん末期の場合」「看取りを行う場合」「緊急の場合」「配置医の専門外で特に診療を必要とする場合」以外は認められない(p20参照)。

一方、特養ホーム入所者の状況を見ると、「入所者の31.2%は外来(通院)『有り』で、内科が多い」「入所者の5.1%は入院『有り』で、11日以上の長期入院に及ぶ場合も少なくない」など、一定の医療ニーズがあることがわかる(p16参照)。

また、緊急時に入所者を医療機関へ搬送するケースについて、搬送理由を見ると「肺炎等で医療機関への搬送が適当」というものが多いが、一方で「施設対応できる状態か判断できなかった」「医療の専門スタッフがいなかった」というものも少なくない(p16参照)。

このように特養ホームにおいて、入所者への医療提供には一定の制約があることから「医療提供が不十分である」との指摘もなされる。

厚労省は平成27年度改定に向けた論点の1つとして、「医療ニーズの高い入所者に対する適切なケアを行う観点から、配置医師・看護職員の勤務実態等も踏まえつつ、施設における医療提供体制や介護報酬上の評価のあり方をどう考えるか」との項目を掲げている(p45参照)。

この点について鈴木委員(日医常任理事)は、「健康管理や療養上の指導の範囲を明確にしたうえで、それ以外の部分は外部の医師による診療(報酬算定)を認めるべきである」旨の見解を表明している。

なお、この考え方には医療提供者を代表する佐藤委員(日歯常務理事)、安部委員(日薬常務理事)、齋藤訓子委員(日看協常任理事)らも賛同している。

もっとも、「特養ホーム入所者への医療行為に対する診療報酬上の評価」は中医協で決する事項であるため、介護給付費分科会のみで変更することはできない。平成27年度改定では、介護報酬の中で「特養ホーム入所者に対する医療行為」等の評価を見直すにとどまるのではないだろうか。

◆特養ホームの多床室、室料負担やプライバシー配慮などをどう考えるか

特養ホームについては、すでに述べたように「終の棲家」と位置づける意見が多い。このため、「生活環境」の充実(たとえばプライバシーの確保)が必要となり、厚労省は『ユニット型個室』の整備を促進している(p5参照)(p26~p29参照)。

もっとも、自治体によっては多床室(4人部屋)の整備を継続しているところもある(たとえば大阪市やさいたま市など)(p30参照)。

こうした状況に鑑み、厚労省は「多床室の居住環境を向上させる観点からも、プライバシーに配慮した多床室のあり方を検討する」ことを論点の1つに掲げている(p45参照)。

また多床室については「光熱水費・食費を利用者が負担する」こととなっているが、ユニット型個室等では「光熱水費・食費に加えて、室料を利用者が負担する」こととなっている(ただし、低所得者には補足給付が支給される)(p27参照)。

この取扱いに対しては、「同じ特養ホームであるにもかかわらず、利用者負担が異なるのは不公平である」との批判も強い。

厚労省は、この点に関連し「今後の居住費の利用者負担のあり方」も論点としている(p45参照)。

このテーマについて村上委員(老施協副会長)は、「多床室は利用者負担が低く、『低所得な要介護高齢者の暮らしを支える』という側面もある。個室等と同じ考え方をすべきではない」と強調している(p376~p383参照)。

一方、本多委員(健保連理事)は、「医療保険では食事負担について負担の公平性を確保する議論が進んでいる。多床室の居住費についても、公平性の観点から一定程度の負担を求めることを検討すべき」と述べている。

また、プライバシーへの配慮については、「多床室をパネル等で仕切るのみで『プライバシーに配慮している』と判断し、介護報酬等を高く設定するのは問題だ」という意見が鈴木委員や、平川委員(連合総合政策局生活福祉局長)から出された。

なお、村上委員は「認知症患者などでは、個室よりも多床室のほうがQOLが維持されるということもある。利用者の状況等によって多床室と個室を使い分ける必要があるのではないか」とも付言している。

◆地域包括ケアシステム構築に向け、特養ホームに小規模多機能型併設等認めるべきか

ところで、高齢化の進展、とくに団塊の世代が後期高齢者となる平成37年(2025年)に向けて、要介護度が高くなっても住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、『地域包括ケアシステム』を構築することが重要だ。

『地域包括ケアシステム』は、住まいを中心に在宅医療・介護、生活支援、健康・介護予防サービスを総合的に提供する仕組みで、さまざまなサービス提供主体の参入が必要となる。

この点、特養ホームにも資源(マンパワーや緊急時のベッド)やノウハウを最大限に活用することが期待されるが、特養ホームが他の介護サービス事業所を併設するにあたっては一定の規制がある(p36~p37参照)。

たとえば、広域型の特養ホームでは、「利用者と職員が顔なじみの関係をつくり、家庭的なサービスを提供する」ことが期待される小規模多機能型居宅介護などを同一建物に併設することはできない(p37参照)。

併設禁止規定などを維持すべきか、あるいは地域包括ケアシステムの構築等に向けて緩和・廃止などを検討すべきかも重要な論点の1つに掲げられている(p45参照)。

このテーマについて鈴木委員や平川委員は、「都市部では急速に高齢化が進行するが、地価が高く介護事業所等の整備は難しい。併設禁止の緩和などを積極的に検討すべき」旨を強調している。

◆認知症対応を評価する加算、算定が低調な原因などを今後分析

特養ホームの介護報酬は、いわゆる「包括報酬」で個別の行為を積上げるものではない(p6参照)。もっとも、医療提供者の配置を手厚くしたり、看取りを積極的に行ったりなどの質の高いケア提供に向けた努力に報いるため、各種の加算も用意されている(p12参照)。

しかし、加算の算定状況を見ると大きなバラつきがある。

たとえば、【栄養マネジメント加算】の算定率は82.77%、【日常生活継続支援加算】は64.95%にのぼるが、【在宅復帰支援機能加算】では0.01%、【認知症行動・心理症状緊急対応加算】にいたっては0.00%という状況だ(p13参照)。

また加算に関連して、特養ホームにおける「看取り」についても委員間では活発な議論が行われた。

厚労省の調査によると、「入所者や家族の求めに応じて、看取り介護を行っている特養ホームは66.3%」だが(p21参照)、【看取り介護加算】については「算定日数は増加傾向にあるものの、『死亡日前日・前々日』『死亡日』については横ばいとなっている」ことも明らかになった(p25参照)。

施設側に看取りの意欲・体制はあるものの、死亡直前に家族等の意向で病院へ搬送されるケースが少なくないと推察される。

こうした点に鑑みて、厚労省は「平成27年度より施設への新規入所者が原則として要介護3以上に限定されることを踏まえ、加算のあり方をどう考えるか」という論点を掲げている(p45参照)。

この点について、厚労省老健局の辺見高齢者支援課長は「今後、加算が算定されない理由等の分析を行いたい」と付言している。

なお、配布資料の一部(各加算の算定状況について)に誤りがある。資料では【認知症行動・心理症状緊急対応加算】の請求単位数が「0単位」、算定率が「-」となっているが、正しくは請求単位数が「3000単位」、算定率が「0.00%」なので、ご留意いただきたい(p13参照)。

◆特定施設入居者生活介護、ショートステイ利用要件を緩和すべきか

この日は、特定施設入居者生活介護等についても議題となり、厚労省は次のような論点を提示している(p70参照)。

●有料老人ホーム利用者の平均要介護度が上昇傾向にあり、認知症の入居者も増える中で、特定施設入居者生活介護等における介護報酬上の評価をどう考えるか(p51~p55参照)
●平成24年度改定で、特定施設入居者生活介護等についてショートステイ利用を可能としたが、「本来の入居者による利用率80%以上」との要件が設定されている。この点、ショートステイの届出は9.2%にとどまっており、一方、「自費負担によるショートステイサービス」を20.7%が提供している。こうした状況に鑑みて、要件等をどう考えるか(p56参照)
●平成18年度に「特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型)」の枠組みを設けたが、養護老人ホーム以外ではほとんど利用されていない。制度のあり方をどう考えるか(p48~p51参照)
●施設のもつ専門的支援機能を活かし、地域住民への相談支援・アウトリーチ機能などの役割が期待されている点についてどう考えるか(p68~p70参照)

なお、平成24年度介護報酬改定(前回改定)の効果検証等調査に関して、平成25年度調査の最終報告(p71~p142参照)、平成26年度調査票(p143~p361参照)が了承されている。

次回は8月7日の予定で、介護老人保健施設、介護療養型医療施設を議題とする模様だ。

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