14年間で介護疲れ殺人・心中が550件―日本福祉大湯原准教授まとめ

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高齢者虐待と介護疲れ殺人の研究で知られる日本福祉大学(愛知県美浜町)社会福祉学部の湯原悦子准教授(司法福祉論)は18日までに今年度分の調査結果を明らかにした。それによると、介護に行き詰まって60歳以上の高齢者がその家族・介護者に殺害されたり心中したりする死亡事例(事件)が1998年からの14年間で国内において少なくとも550件発生し、計558人も亡くなっていることが判明している。その実態について湯原准教授は「(介護疲れ殺人の)実数はさらに多いはず」とも分析する。

この国において高齢者介護に限定した「介護殺人」事例の公式統計などは現状として存在しない。一方で、2006年施行の高齢者虐待防止法に基づいて厚生労働省は介護をめぐる死亡事例を公表して、2010年度は全国で21件あったとしている。しかし、昨年1月に認知症の妻(81)を夫(85)が殺害したに横浜市栄区の事件では「虐待に当たらない」としてカウントされておらず、とてもその全体像はとらえ切れていないという。

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そのため湯原准教授は、Web上の大手「新聞データベースサービス」から全国紙や地方紙計30紙をピックアップし、「介護・殺人」「介護・心中」などの指定キーワードで検索し、その被害者が60歳以上の死亡事例を抽出・集計する独自の統計手法を採用することにより、介護疲れ殺人の年次的変化を比較調査することを長年おこなってきた。「このデータについては新聞報道を基にしており、とても全てではない」とその限界も指摘する。この集計手法の限界として、心中など初動報道の段階で介護が原因として断定的に記述されない事例や若年障害者が被害者となるケースなどは介護殺人から除外せざるを得ないためだ。

以下、湯原准教授が今回まとめた「介護疲れ殺人調査」の結果概要について見てみるとまず、その被害者側の73.5%が女性であり、加害者側の73.2%が男性であった。加害者も60歳以上の「老老介護」の介護疲れの末と思われる事例は58.0%にのぼる。

「殺人」が 54.3%とその半数を占める一方で、「心中」は15.9%であった。身体的虐待の結果ともみられる「傷害致死」は13.3%。さらに加害者の申し出に被害者が同意する「承諾殺人」や被害者に頼まれて殺害する「嘱託殺人」も計10.6%もあった。

加害者別にみてみると、「夫」による犯行が34.2%と最も多く、次いで「息子」が32.9%。2009年以降は夫が息子を上回った状況となっている。また被害者は33.9%が「妻」で、32.8%が「実母」とされる。

これらを年齢別にみると、80歳以上が43.4%を占める。とくに2009年は90歳以上が15.7%、2011年は18.0%となっている。

ちなみに介護保険制度が導入された2000年においては「介護疲れ殺人」事例は39件であった。それが医療介護費抑制傾向が強まった2006年以降は年50件前後で下げ止まらないまま推移しているという福祉先進国とはとても思えない介護貧困事情があらためて明らかにもなった。

ここ数年の傾向について湯原准教授は「高齢者世帯の増加に伴い、在宅介護の長期化で介護者が疲弊し、介護疲れ殺人に至るケースが多いのではないか」と分析する。さらに、「現状のままでは介護保険制度は残念ながら歯止めになっていない。介護を続けるなかで行き詰まって将来を悲観しうつ状態になり、最悪の殺人に及んでしまった加害介護者は今後も増えていく。事件防止のため公的機関が実態把握を早急におこなうべきなのだが」とも強調する。

(ASTRA医療福祉研究グループ)

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