介護をめぐるオンラインの行方

新型コロナ禍で、懸念されるのが高齢者のADLや認知機能の低下です。最新の厚生労働白書でも、高齢者の活動時間の低下や社会参加機会の減少などにスポットを当てています。たとえば、高齢者の生活にオンラインツールなどをどのように浸透させていくかといった課題にも、踏み込んだ施策が必要です。

オンラインの取組みはますます不可欠だが

新型コロナの感染拡大下では、オンライン診療の緩和やサ担会議などでのオンライン開催の容認など、当事者との対面を避けるための改革がほどこされてきました。地域支援事業における「通いの場」や「認知症カフェ」などでも、オンラインによる取組みを進める動きが少しずつ広まっています。

感染状況の長期化にともない、こうしたオンラインによる取組みは、「新たな日常」に不可欠なものとなっていくでしょう。問題は、当事者がどこまで対応できるのかという点です。同居家族も高齢化している昨今では、「誰がどのようにサポートするか」についても議論を深める必要があります

ちなみに、今回の厚労白書では、高齢者を対象に「ビデオ通話(zoomやskype、LINE等)の経験、関心の程度」を調査した項目があります。それによれば、「関心はあるが、パソコン、スマホ等の使い方が分からない等で利用しない」という回答が約1割、そもそも「利用したいと思わない」という回答が約3割にのぼっています。ハード・ソフト両面のサポートのみならず、「いかに必要性を実感してもらえるか」といった道筋を当事者目線で拓いていくことも欠かせないわけです。

政府が進めるデジタル活用支援推進事業

ハード面については、ずいぶん前から、過疎地での独居高齢者の健康管理などを目的としたテレビ電話(当時はskype中心)の布設などを進める自治体も見られました。最近でも、高齢者世帯に通信用のタブレットなどを配布するモデル事業などが展開されています。

一方、政府は今年度からデジタル活用支援推進事業に着手し、6月には高齢者を対象とした「デジタル活用を支援するための講習会(携帯ショップ等からの公民館などへの講師派遣等)」をスタートさせています。しかし、そもそも新型コロナ禍で「講習会」などの開催がどこまで可能でしょうか。当事者からの自発的な行動が前提となっている点なども、施策を進めるうえでは壁となりがちです。

大切なのは、「移動・活動が思うようにならない環境下で、高齢者の健康維持や重度化防止を図る」ことにあるはずです。その点では、地域の高齢者の健康・生活ニーズにスポットを当てたうえで、そこに必要なインフラを整備していくという順序が求められます。

居宅要介護者に一律のインフラ整備はどうか

あくまで一つのきっかけですが、居宅で介護保険サービスを使うとなった時点で、地域医療介護総合確保基金を使ってオンライン通信のできる機器(レンタル)を利用者宅に備えるという方法はどうでしょうか。最近は、ワンタッチでテレビ通話ができるものもあり、これを専門職側の通信機器と接続できるような設定にすることも不可能ではないはずです。

こうした機器類を要介護者へのベースのインフラとしておけば、オンラインによるサ担会議のほか、画像を通じてのモニタリングにも活用できるでしょう。定期巡回・随時対応型等のオンコール体制や、さらにはオンライン診療に活用する道も開けることになります。新型コロナ禍で介護・医療を円滑に運営する環境が整えば、それは高齢者側の「使ってみたい」という自発性にもつながるはずです。

もちろん、どんなに操作が簡易になっても、初めて使う人には戸惑いが生じるものです。そこで、機器類の設置時に保険者から専属のアドバイザーを派遣する(その後の相談にも応じる)というしくみを同時に整えます。

運営にかかる財源の問題はありますが、国は今年9月にデジタル庁を発足させるビジョンがあるわけですから、介護保険財政を圧迫しない予算確保もできるはずです。

オンラインをベースとした当事者参加の未来

高齢者のニーズに沿ったオンライン環境の整備が進んでいけば、その双方向性のもとで、幅広い高齢者の社会参加の機会も広がるでしょう。オンラインによる社会参加というと、「通いの場」や「認知症カフェ」などが思い浮かびますが、これからの時代はもう少し視野を広げていきたいものです。

たとえば、地域の高齢者施策を当事者の視点で検討する場も考えられます。実際、認知症施策では「本人ミーティング」の取組みが始まり、本人の思いや考え方を地域の施策に活かすという流れが生まれています。当然、認知症以外の高齢者にも、こうした参加の権利が保障されてしかるべきでしょう。この参加をオンラインが後押しするわけです。

こうした流れの先には、介護保険制度をめぐって、審議会の前に「タウンミーティングで当事者の声を集めて、施策立案に反映させる」という未来像も浮かんできます。保険料を負担する当事者なのですから、将来的にはこうした「施策への参画」という道も開かれてこそ、国民が納得できる介護保険につながっていくのはないでしょうか。

こう考えると、高齢者によるオンラインコミュニケーションは、新たな時代を開く一助になるのかもしれません。より広い視野でオンラインの可能性を見つめたいものです。

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