コロナ禍で踏ん張る現場の耐久力

新型コロナ禍での介護事業や人材の状況はどうなっているか──公益財団法人・介護労働安定センターが、昨年末から今年初頭にかけて実態調査を行ないました。調査時期は、最初の緊急事態宣言から半年が経過したタイミングです。見えてくるものは何でしょうか。

新型コロナ禍での「よくなったもの」

今調査で注目したいのは、新型コロナ禍における職場環境についてです。

調査では、職場環境について、新型コロナ禍で「悪くなったもの」だけでなく、あえて「よくなったもの」も尋ねています。「よくなったものがあるの?」と思われるかもしれませんが、コミュニケーションなどいくつかの項目で興味深い結果を見ることができます。

「よくなったもの」のうち、コミュニケーションのとりやすさとしては、「対他職種(31.7%)」が目立ちます。「悪くなった」という回答が17.2%なので、新型コロナ禍が改善の契機になっていると見ていいでしょう。

たとえば、感染防止の取組みなどを通じて、医療・看護職などからアドバイスを得るなど、非常時での連携機会を通じて信頼関係が高まったケースが考えられます。あるいは、ICTによるオンライン連携が進む中で、若い従事者などの間で「他職種との連携の敷居が低くなった」などのケースも想定されます。

職場の雰囲気が「よくなった」の背景とは

他に「よくなった」の割合が「悪くなった」割合を大きく上回っているのが、「職場全体の雰囲気」です。従事者全体で「よくなった」が21.5%に対し、「悪くなった」はわずか1.2%にとどまっています。特に、居宅介護支援での「よくなった」という回答は36.4%と、全体の回答から抜きん出ています。

「雰囲気がよくなった」というのは、職場環境や処遇などが関係しているのでしょうか。

ちなみに、事業所の人員不足感を尋ねた質問では、32.5%が新型コロナ禍の前よりも不足感を強めています。また、新型コロナ禍では、半数以上の従事者が「(感染防止などかかる)心理的負担の大きさ」を不満として上げています。「感染リスクに対する待遇処置が少ない(あるいは、ない)」ことを不満としている人も、介護職員で3割に達しています。

こうして見ると、さまざまな不満はある一方で「職場全体の雰囲気はよくなった」と考えている従事者が多いことになります。

これについて、今調査をもとにした介護労働安定センターの取りまとめの中では、こう分析しています。「新型コロナウイルスという感染症のリスクが身近に迫るなか、逆にそのことが『難局をみんなで一緒に乗り越えよう』といった意欲を喚起し、業務のなかでのチームワークの良さや職種間の連携の深まりをもたらしたと推測される」というものです。

現場の士気は高い…が足元は揺らいでいる

危機下に従事者の意欲が喚起されるという点については、別のデータでもうかがえます。たとえば、従事者に対する「仕事の継続意思」を尋ねた項目があります。それによれば、「新型コロナウイルス感染症や周囲の状況にかかわらず、今の職場で働き続けたい」という回答は全体で64.2%に達しています。

注目したいのは、「感染多数地域」の方が「感染少数地域」を9ポイント以上上回っていることです。このあたりも、「危機下だからこそ、この職場の仲間と一緒に乗り越えていきたい」という意欲が現れているのかもしれません。

しかし、こうした状況に強い不安も感じざるをえません。確かに、「危機的状況だからこそ専門職としての使命をまっとうしたい」といった意欲は、介護現場を担う人々の高い職業倫理が反映されたものでしょう。そのこと自体は賞賛されてしかるべきと思います。

懸念されるのは、その意欲の足元は決して盤石ではないという点です。従事者への慰労金は1回限りのままで、かかり増し経費にかかる交付申請は半数にとどまっています。「人員基準等の臨時的な取り扱い」にかかる適用や申請も2割台で、さまざまな公的支援が十分に行き届いているとは言えない状況です。

「張り詰めた糸ほど切れやすい」という危機

今回の調査は、今年初旬までの状況です。現在、新型コロナは変異株の拡大によって陽性者数が全国規模で最多を更新し、重症者数も増えつつあります。政府は病床ひっ迫を理由に、重症化リスクがある人以外について原則自宅療養とする方針を示しました(8月4日時点)。仮にこうした方針が徹底されると、介護施設や居宅サービス現場での「療養患者への対応」もさらに増える可能性があります。

そうなったとき、足元が揺らぐ中でも「乗り越えよう」という従事者の意欲は維持されるでしょうか。困難な中での意欲の継続は、心の中の張り詰めた状態がもたらしているとも言えます。人は誰しもが強い存在というわけではありません。糸は張り詰めるほど、わずかな拍子で切れやすいものです。

今、糸が切れる前になすべきことは何か。職能団体、業界団体、そして全国の保険者が危機感を共有しつつ、より強い支援策を国に求める時期に来ているのではないでしょうか。

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