8月からの負担増がもたらす影響

この8月に、介護保険サービスの利用をめぐるさまざまな負担増が施行されます。すでに厚労省は、周知のためのポスターやリーフレットなどを公表しました。サービスの利用意向や提供者・利用者間の関係に影響が及ぶ可能性もある中、どんな注意が必要でしょうか。

3つの負担増の内容を改めて整理すると…

3つの負担増の内容を改めて確認します。

1.月あたり負担限度額の引き上げ
高額介護サービス費にかかる月あたりの負担限度額についてです。対象となるのは「課税所得380万円(年収約770万円)以上」の人で、それまでの月44,400円(世帯)から2段階での引き上げとなります。

その2段階とは、「課税所得690万円未満」で93,000円、「690万円以上」で140,100円。現行の限度額と比較すると、前者で倍以上、後者で3倍以上の金額となっています。

2.施設・短期入所の「食費」引き上げ
介護保険施設に入所、および短期入所サービスを利用した場合の「食費(日額)」について、一部の所得段階で引き上げられます。

まず、補足給付の所得段階のうち、第3段階(世帯全員が住民税非課税、かつ本人年金収集80万円超)が「本人年金収入等120万円」の境界で2区分(第3区分(1)、(2))されます。そのうえで、短期入所の利用者について、現行の第2段階の食費(日額)が「390円⇒600円」に。第3区分(1)が「650円⇒1000円」、第3区分(2)が「650円⇒1300円」に。なお、第3区分(2)については、施設入所時の食費も「650円⇒1360円」となります。

3.補足給付の預貯金勘案額を厳しく
もう1つは、補足給付にかかる預貯金の勘案額についてです。見直しの1つは、所得段階に応じて勘案額が3区分されたこと。もう1つは、各段階において、現行よりも金額が低く設定されたことです。補足給付を受けるための資産基準が厳しくなったわけです。

上記の3区分とは、「2」の食費引き上げの対象となる「第2段階」と「第3段階の(1)、(2)」です(第4段階は、もともと補足給付の対象外)。そのうえで、各所得段階に応じて以下のように見直されます。現行では「単身で1000万円以下、夫婦で2000万円」でしたが、これが「第2段階…単身で650万円、夫婦で1650万円」、「第3段階(1…単身で550万円、夫婦で1550万円」、「第3段階(2)…単身で500万円、夫婦で1500万円」となります。

2020年の負担面の見直しは少なかったが

これらの見直しの主テーマは、言うまでもなく「所得や資産が多いに人には、それなりの負担を求める」ことです。と同時に、さまざまな社会保障制度上の「整合性をつける」というもう1つのテーマがあります。

たとえば、「月あたり負担限度額の見直し」でいえば、より高い所得区分の分け方および限度額は、医療保険における70歳以上の負担限度額のしくみに揃えたものです。また、「食費」と「預貯金勘案額」の見直しにおける「第3段階を2区分する」というのは、保険料段階における「年金収入等80万円超」と「120万円超」という区分に揃えています。

いずれのテーマも、国は懸案事項としていました。このタイミングで実施されたのは、2020年の法改正で「利用者の負担増」(2割負担の拡大や、ケアマネジメントへの利用者負担導入など)の多くが見送られ、踏み込みやすくなったことも背景と見ていいでしょう。

それなりに収入はあってもインパクトは大

とはいえ、これらが一気に実施されることで、利用者にとってインパクトの大きい負担増となることは間違いありません。特に月あたり負担限度額が2倍、3倍となったり、預貯金勘案額が4~5割引き下げるとなれば、心理的にも大きな動揺につながります。

「それなりに所得がある人」とはいえ、高齢世帯(特に要介護者や継続通院等が必要な人がいる場合)というのは、「先行きの不安をいかに解消するか」という点で神経質になっているものです。ここに大きな家計・資産上のインパクトが生じた場合、それまでの生活の継続性に大きな乱れが生じかねません。

結果として、介護・医療など本来は「必須」であるべき出費項目を「抑える」という意向も浮上しがちです。そうなると、ケアマネジメントを手掛ける側としても、課題分析や目標設定などを見直す必要も出てきます。利用者側の心理的同動揺が大きければ、専門職に対するそれまでの信頼関係やコミュニケーションもぎくしゃくしてくるかもしれません。

新型コロナ禍で「いったん保留」も必要では?

新型コロナ禍で介護現場は疲弊し、地域によって離職者も続出する中で、介護資源そのものの揺らぎが増しています。一方で、重症化しやすい高齢者は強い先行き不安から周囲に対する不信感やストレスが高まりやすくなっています。支援者と被支援者の間の協調性をめぐる土台が不安定になっているわけです。

たとえば、自立支援というのは、専門職と利用者の間の「協力的意識の共有」が乏しくなれば、その効果は半減します。このマイナス点に注意を払いつつ、「その改革を今行なうべきなのか」を熟慮することは、その後の未来図を描くうえでは欠かせないことでしょう。

いずれにせよ、少なくとも新型コロナ禍が解消されるまでは、一部の施行を保留するという判断も要されるのではないでしょうか。体力が弱っている人に、「必要だから」と手術を強行することの危うさを考えたいものです。

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