【提言】理想の形を自ら作る! 科学的介護は業界のかつてない挑戦

いよいよ2021年度を迎えた。介護保険の新たなデータベース「LIFE」の本格運用が始まる。厚生労働省は「科学的介護」の展開に向けて、情報提供などを事業者に促すインセンティブをサービス横断的に設けた。今回の介護報酬改定の目玉だ。この動きをどう捉えているか、有力団体の全国老人福祉施設協議会の幹部がJointに語った。【青木太志】

※ この記事は全国老施協・小泉立志理事へのインタビュー取材に基づいてJoint編集部が作成したものです。

■ 本格的な科学的介護の推進

今回は現場革新の改定 − 。私はそう指摘させて頂きました。その象徴的なものがLIFEの本格稼働、科学的介護の推進ではないでしょうか。

国は非常に大きな決断をしたと思います。多くの加算をLIFEと紐付けるなど、科学的介護を具体化するための仕掛けを数多く盛り込みました。リソースもそれなりに投じており、かなり大胆に舵を切ったと認識しています。これに本気で取り組んでいく、というメッセージだと受け止めて良いのではないでしょうか。

確かに、見切り発車の側面が全くないとも言い切れません。この構想を軌道に乗せるためには、様々な課題をクリアしなければいけないでしょう。ただ、どこかのタイミングで思い切って最初の1歩を踏み出さなければ、いつまで経っても前へ進めません。まずは始めてみて、走りながら良い方向へ持っていくということだと捉えています。

■ 革命を起こす、くらいの気持ちで

もちろん、我々現場にとっては非常に大変なことです。LIFEにしっかり対応できる記録ソフトを導入していない事業所も多く、ほとんどゼロからのスタートと言っても過言ではありません。加算の算定にあたってはPDCAサイクルの実践も必須となりますが、これを浸透させることに苦労するところも少なくないでしょう。特に最初のうちは多大な労力がかかりますし、正直めんどくさいと感じている方もおられるかもしれません。

それでも、私は何としても乗り越えなければいけないと考えています。今後は介護に“科学的な根拠”という要素を加え、それをご利用者の自立支援・重度化防止につなげていく − 。これが国の方針です。今は個々の主観などに依存したサービスが多いわけですが、我々にはそれを進化させていくことが求められています。これは介護業界にとって、かつてない大きな挑戦と言えるでしょう。

本当にうまくいくのかどうか、不安や疑問をお持ちの方もおられると思います。

ただこれは、我々が主体的に、自らの力で成功させるべきものではないでしょうか。科学的介護はサービスの質を向上させるもの、介護職の専門性を高めるものです。ご利用者にとっても、介護職にとっても良い結果をもたらす大きな可能性を秘めています。我々自身が良い形を作り上げれば、業界の価値を、介護職の社会的評価を高めることにもつながるでしょう。これは長年の悲願です。

介護革命を起こす − 。新しい時代を作る − 。老施協としても、それくらいの気持ちで後押ししていきます。もちろん、この動きを主導する国にも最大限のサポートをお願いしたい。全ての関係者が力をあわせ、科学的介護を成功に導かなければいけません。

■ 笑顔があってこその介護

とはいえ、そんなに焦って取り組む必要もないかと思います。従来の業務も大変で忙しいわけですから、職員に無理をさせてもいけませんよね。例えば、LIFEへ情報を提供して得られるフィードバックが当面どんな精度になるのかなど、まだまだ不透明な部分も残っています。今は1つずつ、ソフトの導入や体制作りなど準備を進めていけば良いのではないでしょうか。

各加算の単位数も、諸手を挙げて歓迎できるとは必ずしも言えない水準です。事業所によってはソフトへの投資なども必要となりますので、収支をいかに悪化させないか慎重に検討する必要もあります。自分の職場ではどのような方法で取り組むか、じっくりと腰を据えて考えることも賢明な姿勢と言えるでしょう。

何より重要なことは、この科学的介護を最終的にご利用者の思いに応えるところまで結びつけるということです。

介護現場はやはり、ご利用者が喜んでくれて初めて元気になれるものです。例えば、ADLが改善したことだけをもって満足される方はそれほど多くないでしょう。その後に海を見に行ったり、釣り堀に行ったり、回転寿司へ行ったりしてはじめて、ご利用者は素敵な笑顔をみせてくれます。そうしたシーンを作れると、我々も更に生き生きと働けるようになるんです。介護ってそういうものでしょう。私はそうあるべきだと思っています。

科学的介護はあくまで、ご利用者のご希望を多く叶えるための方法論でなければいけません。そうした成果が見えず、情報の収集・提供、PDCAサイクルなどの事務量がただ増えるだけでは、職員だってモチベーションを保てません。根拠に基づくサービスでご利用者の状態を改善し、そこから笑顔が生まれるシーンをより多く作っていく − 。業界が総力をあげて、力を合わせて共に実現を目指すべき姿ではないでしょうか。

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