進まぬICT導入で国の打つ手は?

介護労働安定センターが、2020年度の特別調査結果を公表しました。テーマは新型コロナ禍での介護事業所の実態調査ですが、注目はやはり「ICTの導入等」の状況です。「ICTを導入していない」という回答の多さは、今後の報酬・基準改定にも影響を与えそうです。

補正予算でICT導入支援は拡充されたが…

「ICT(情報通信技術)を導入していない」という回答は、感染多数地域で42.6%、感染少数地域で53.3%にのぼります。感染多数地域では、多職種連携などに際して「オンラインによる情報共有」が、「連携対象職種」から求められるケースも増えています。それでも、感染少数地域との差が1割にとどまっている点に普及の停滞感がうかがえます。

ご存じの通り、新型コロナの感染拡大を受けた2020年度の補正予算では、介護事業所のICT導入経費への支援が行われています。

もともと、2019年度から地域医療介護総合確保基金を活用した支援枠は設けられていました。この補助上限額が、先の補正予算で最大で260万円まで引き上げられ、補助対象としてwifi設置費やシフト表作成などの介護ソフト購入費も追加されています。

にもかかわらず、昨年末から今年1月にかけての調査で、ICT未導入が5割前後という状況は、テクノロジーによる現場改革を目指す国にとって衝撃は大きいでしょう。

ICT導入の要件化は、今改定でも随所に

問題は、ICTをはじめとする介護現場へのテクノロジー導入が、2021年度改定で重要な位置を占めていることです。

たとえば、算定率が低迷する生活機能向上連携加算において、リハビリ職等やICTによって利用者状況を確認することを可とする新区分を設けました。インフラ整備的にはリハビリ職等が担う部分が大きいでしょうが、多職種による情報連携も絡んでくるとなれば、介護現場側のICT対応も不可欠です。

その「土台」となるICT化が進まないとなれば、今改定の主要課題でもあった同算定率の向上も大きな壁が立ちはだかることになります。「笛吹けど(現場は)踊らず」といった状況は、過去にも見られました。しかし、今回は過去の比ではない事情もプラスされます。

それは何かといえば、言うまでもなくCHASEなどの介護関連DB(LIFE)を活用した科学的介護の推進です。

国が尽力する科学的介護の推進にも暗雲が

たとえば、訪問系以外のほとんどのサービスで、CHASE等へのデータ提供を要件とした科学的介護推進体制加算が設けられました。数多くの自立支援・重度化防止系の加算についても、データ提供およびフィードバック活用を要件とした新区分などが誕生しています。

もちろん、こうしたデータ連携に際して、「ICTを活用する」ことが明示されているわけではありません。しかし、実際に利用者ごとの膨大なデータを提供するとなれば、紙ベースでは現場負担は大きすぎるでしょう。

国は、CHASE等へのデータ提供に際して、現場で活用している既存ソフトとの連携で入力負担の軽減を図ることも計画しています。いずれにしても、ICT活用を前提とした推進が、施策上の前提になっているといえます。

問題は、このDB活用による現場からのデータ収集が、2020年の介護保険法改正で定められたことです。国会制定法で定められた施策の進ちょくが滞るとなれば、管轄省庁側の責任はいっそう強く問われることになります。

3年後に向けて「強硬策」が出る可能性も

国は、予算措置によるICT導入支援で「何とかなる」と考えていたのかもしれません。新型コロナ禍で、「オンライン連携に移行せざるを得ない」という状況も「ICT化が進むきっかけになる」という見方もあったでしょう。

しかし、蓋を開けてみれば、どちらかといえば「ICT化どころではない」のが現場の感覚だったことになります。この実態に施策をフィットさせるには、間もなく施行される今改定に向けて「新加算等の算定支援策」などを改めて考えることが欠かせないでしょう。

もっとも、冒頭の調査における労働者側の回答では、「ICT等導入に対応しなければならないこと」への不満や不安は大きくはありません。となれば、やはり事業所・施設側の体制整備や現場管理の負担が大きな問題ということになりそうです。この部分への手だてが今後も大きな論点となるのかもしれません。

懸念されるのは、「事業所・施設側が腰を上げざるを得ない状況を作る」という流れです。たとえば、ICT導入を運営基準で定め、未導入の場合は減算を適用するといった具合です。科学的介護推進体制加算の一部を、基本報酬に組み込むという案が出る可能性もあります。

「そこまで強硬なことはしないだろう」と思われるかもしれません。しかし、先に述べたように、特に現場からのデータ収集は国をあげての一大プロジェクトです。その点を考えれば、「まさか」の施策も出てきかねません。

現場としては、今年4月に向けた疑義解釈などにも注意しつつ、3年後の施策の予兆に今から目を凝らすことが必要です。

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