高まりゆく虐待リスクへの対応は?

新型コロナの感染症拡大が長期化する中、心の健康に対する課題が大きくなっています。先行きが見えない中での生活不安や、さまざまな行動制限によるストレスの増大は、家族介護にも影響を与えます。11都府県に発令されている2回目の緊急事態宣言の中で、介護をめぐるリスクの高まりに着目しましょう。

精神保健福祉センターへの相談で伺えること

本ニュースでも取り上げましたが、厚労省は「新型コロナウイルス感染症にかかる心の健康相談に関する精神保健福祉センターの対応状況」についての調査結果を公表しています。それによれば、相談者の割合がもっとも高いのは50代(23%)となっています。

この年代といえば、親が80代で介護を要するというケースも目立ちます。ただでさえ介護負担がかかりやすい中、新型コロナの感染拡大によってサービス利用に支障が生じれば、不安やストレスは一気に高まりかねません。実際、感染が拡大し始めた3月の調査結果では、具体的な相談内で「介護施設が利用できず介護疲れ」という内容も目立ちます。

こうした状況下で懸念されるのが、介護疲れなどが蓄積されることで高齢者への虐待リスクが高まることです。今年4月の最初の緊急事態宣言の際には、厚労省から各自治体に対して、「新型コロナウイルスの感染拡大時における高齢者虐待への対応について」と題した事務連絡が出されています。具体的には、要介護世帯の孤立を防ぐための地域の見守り体制の強化や、高齢者権利擁護等推進事業を活用しながらの支援を求めたものです。

国も虐待リスク増に強い危機感を抱いている

そして、年明けに一部の都府県に対する2度めの緊急事態宣言が出されると、上記とほぼ同じ内容の事務連絡が「再徹底」という形で出されました。改めて発出されたということは、国としても「深刻な状況が迫っている」という認識が強いことの現れでしょう。

問題は、新型コロナ感染が第2波、第3波という形で一定期間をおきながら拡大する中で、人々の生活不安やストレスが十分に解消されないまま蓄積されていくことです。となれば、家族(養護者)による虐待リスクのすそ野も水面下で拡大し続け、ある時期から虐待事例が急増する可能性もあるでしょう。

国としても、自治体による地域支援事業などにゆだねるだけでなく、介護者支援という観点からの踏み込んだ施策が必要になります。そこで注目したいのが、2021年度の介護報酬・基準改定の中で、どれだけ家族のレスパイト等の施策を拡充しているかという点です。

次の改定で家族レスパイト策はどうなる?

家族のレスパイトに資するサービスといえば、短期入所系サービスや居住系サービス等の短期・緊急利用ということになるでしょう。昨年12月の介護給付費分科会の審議報告の中から、上記に関連した2つの内容を改めてチェックしてみましょう。

(1)緊急時の宿泊ニーズへの対応強化…これについては、グループホームの緊急時の短期利用での受入れ人数や日数の要件が緩和されました。短期入所療養介護でも日数要件が緩和され(7日以内→家族の疾病等やむを得ない場合は14日以内)、小規模多機能系では「登録定員の空き」ではなく「宿泊室の空き」がある場合に(登録者以外での)受入れを可能とするという緩和が図られています。

(2)在宅におけるBPSD悪化への対応…これについては、従来より短期入所系や施設系のサービスで認知症行動・心理症状緊急対応加算が設けられています(医師の判断を要件に7日を上限とする)今改定では、この加算の算定サービスに小規模多機能系も加わりました。

新型コロナ感染下で緊急対応にも限界が…

こうしてみると、小規模多機能系の機能の拡充などは目立つものの、予想されるリスク拡大への対応という点では、大きな上積みがなされたとは言えないようです。何より新型コロナの感染拡大で、従事者側の負担も高まる中、「レスパイトのための緊急対応」にも限界が生じやすい状況にあります。

た、緊急受入れを判断し受入れ先を探すケアマネも、地域の資源不足に日々悩まされているのが実情です。たとえば、短期入所生活介護の緊急短期入所受入加算の算定率は0.3%に過ぎず、「実際には受入れが難しい」という状況に直面していることがわかります(この点について、介護給付費分科会でも「緊急短期入所受入加算の増額」を求めています)。

いずれにしても、新型コロナの感染状況がいつまで続くか予測できない中、「家族の疲労・ストレスの増大」と「受入れ側が感染拡大等でフレキシブルに対応できない」という2つの状況が重なりながら進行しています。先の事務連絡にみられるように、国も強い危機感を抱いているわけですから、集中プロジェクトの一つとして公費等での上乗せ対応を早期に図る必要があるのではないでしょうか。

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