感染拡大下、地域不安への対処

昨年12月25日、「退院患者の介護施設における適切な受入れについて」と題した通知が出されました。新型コロナ感染症患者が退院した後に、施設系・居住系サービスへの円滑な受入れを図ることを目的としたものです。

新型コロナの退院患者の受入れについて

まず、通知に反映された厚労省の考え方を整理しましょう。今回、こうした通知が発出された背景として、新型コロナ感染症に対応するための「確保病床の最大限の活用」があげられています。つまり、入院治療後に退院可能となった要介護高齢者等は、病床での次の患者受け入れのために、速やかに介護保険施設等に移ってもらうというわけです。

この考え方は、地域包括ケアシステムというビジョンのもと、「入院治療から地域の医療・介護資源への移行」をうながしてきた従来の考え方の延長にあると言っていいでしょう。新型コロナ感染の急拡大による「病床のひっ迫」という特別な事情が背景にあるとはいえ、施策上で敷かれたレールは基本的には同じということになります。

そのうえで、介護保険法令上の「正当な理由なく受入れを拒否してはならない」という趣旨にのっとった対応を求めています。この場合の「正当な理由」にあたるか否かを判断するうえで、新型コロナ感染症の「退院患者」の考え方を基準として示したことになります。

検査未実施でも退院基準に当てはまる場合が

たとえば、新型コロナ感染症によって入院した人が「症状軽快」によって退院したとします。この場合、その人を受け入れたことで施設内等での感染拡大につながらないか──という警戒が生じるのは無理もないでしょう。

その際、リスク有無の基準として、広く認識されているのが、「PCR検査または抗原定量検査」による結果です。国が示している退院基準では、24時間以上の間隔を開け、2回の陰性を確認できれば「満たす」としています。そのうえで、退院基準に合致すれば、介護保険施設等への入所を拒否する「正当な理由」にはあたらないというのが国の見解です。

注意したいのは、国が示す退院基準は、上記のケースだけではない点です。今回の通知でも改めて示されていますが、以下のような状況でも退院基準となりえます。

(1)有症状者の場合…「発症日から10日間経過」+「症状軽快後72時間経過」

(2)無症状だが病原体保有者の場合…検体採取日から10日間経過

ポイントは、いずれの場合も(退院などに際しての)検査は「不要」とされていることです。検査が実施されていなくても退院基準を満たす場合があり、その際にも介護保険施設等での適切な受入れを求められるわけです。

退院基準に合致していても現場の不安は…

とはいえ、現実に「受入れ」側となる施設等としては、いろいろと考えなければならないこともあるでしょう。まずは、上記のような国が示す退院基準について、現場従事者に周知しつつ不安を拭う必要があります。

本来であれば、こうした周知は、地域に感染が拡大していない状況から始めることが大切でした。実際、感染拡大にともないメディア等での情報が氾濫したり、緊急事態宣言という地域にとってインパクトの強い発信が行われると、どうしても公式な情報を冷静に受け止めることが難しくなるからです。

また、地域の不安が高まれば、すでに入所中の人の家族や関係者からの問い合わせや懸念の声も高まります。そして、それが現場従事者などにも直接寄せられる可能性があります。こうしたプレッシャーが従事者側に強まれば、頭では(感染リスクはないと)理解しても、退院患者の受け入れに拒否的な反応を示してしまうケースも増えるでしょう。

法人の発信力も大切だが国・自治体の役割も

では、すでに地域不安が高まる中で、今回のような通知を改めて周知するにはどうすればいいでしょうか。まず問われるのが、施設等を運営する法人としての発信力です。

たとえば、退院患者の受入れに直面しているか否かは別として、今回のような国の通知を地域全体とどのように共有するかという広報戦略を練らなければなりません。時節柄、自治会などを通じるのも難しいとなれば、一法人の取り組みでは限界もあります。そうなれば、自治体による主導も欠かせません。

同時に、家族・関係者の不安が現場従事者に直接向けられないよう、相談窓口を拡充したり、(国の支援で)専用電話相談を実施するなどの対応にも力を注ぐことが求められます。

以上の点から、国としても通知を発出するだけでなく、地域不安をどのように取り除くかを考えた周知支援策などもワンセットで示すことが不可欠だったのではないでしょうか。非常時には情報が氾濫しやすいことを考えれば、正しい知見にもとづく公式情報の「見せ方」にもさらなる工夫が必要になるはずです。

介護現場に感染対策指針の策定などを求める基準改定が進んでいます。しかし、実は国側の発信力や法人・自治体広報の支援にかかる見直しこそが問われるべきかもしれません。

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