【結城康博】介護報酬の改定率、せめて+1%は超えて欲しかった


《 淑徳大学総合福祉学部教授:結城康博 》

大方の予想通りの結果、といったところでしょうか。「やっぱりか」と思いつつも、私は少し残念な気持ちになりました。【結城康博】

政府は17日、来年度の改定で介護報酬を0.7%引き上げる方針を決定しました。給付費を11兆円と仮定すると、年間でおよそ770億円が新たに介護現場へ投入されることになります。

現下の厳しい人手不足、経営環境、コロナ禍を考えればプラス改定はマスト。それを実行したところには一定の評価を与えるべきです。介護現場にとっては良い便りとなるでしょう。

この決定に至るプロセスでは、厚生労働省の職員や介護分野に熱心な国会議員、その関係者らが極めてシビアな交渉を重ねてきました。今回、彼らはかなり頑張ったのではないでしょうか。この努力がなかったら結果はもっと悪かったはずです。私も業界にいる者の1人として、敬意と感謝を表したいと思います。

ただ、やはり財務省の壁は非常に高かったということでしょう。

誠に申し訳ないですが、プラス0.7%は小幅増と言わざるを得ません。政府は過去の改定で、1%以上の引き上げを4回(臨時改定含む)、2%以上の引き下げを2回実施しています。

介護現場は今、人手不足を最大の要因としてサービス提供サイドから崩壊の危機に瀕しています。コロナ禍で疲弊が更に加速し、先行きを覆う霧は一段と深くなりました。ここは空気を一変させる思い切った支援が不可欠 − 。業界はそんな共通認識を持っています。

私はこれまで、2%から3%の大幅アップを決断すべきと訴えてきました。今回の改定率が十分かというと、それは「否」と答えざるを得ません。プラス0.7%では、報酬の引き上げ幅もそう大きくはならないでしょう。

これで本当に深刻な人手不足を解消できるのか? 介護現場の努力にも限界があります。せめて1%(約1100億円)は超えて頂きたかった。まだまだ厳しい時代が続いていきそうです。

政府は今後、プラス0.7%(約770億円)の配分を決めていきます。まずは最も苦しい状況にある訪問介護に多くの財源を投じ、ヘルパーの確保を図るべきでしょう。高齢者の在宅生活を支えていくためには、訪問看護も重要です。コロナ禍で踏ん張っている施設の支援もぜひ行って頂きたい。

自立支援・重度化防止を推進する加算ももちろん大事ですが、まずは事業所の基礎体力の維持・向上が先決。各サービスの基本報酬の引き上げを中心に考えるべきでしょう。新たな単位数の公表は年明け、1月か2月の予定です。

私は今回の改定をめぐる議論をみていて、世論の盛り上がりがイマイチだと感じました。例えば医療や他の経済分野などと比べると、介護にはあまり興味を持って頂けていないですよね。そのことも大きく影響しているのではないでしょうか。政府や財務省も世論の動向には重大な関心を寄せています。

プラス0.7%という結果の背景には、この問題に対する世論の関心の低さもあると指摘させて頂きたい。これは難しいことですが、状況をもっと良くするには我々がそこを変える努力もしなければいけないと思います。

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