家族のレスパイトが危機的状況!?

新型コロナの感染が、再び急拡大しています。介護分野で気になるのは、やはり現場のサービス提供の制限や、利用控えが広がることでしょう。利用者へのサービス提供がこれまで以上に厳しくなるとして、次の報酬・基準改定のみならず、中長期的な視野に立ったうえでどのような施策が求められるのでしょうか。

新型コロナ感染下の介護状況を予兆する統計

今月18日に、厚労省から2019年度の介護給付費実態統計の結果が公表されました。2019年度というのは、同年5月審査分から2020年4月審査分までの受給者状況や介護費用額を取りまとめたものです。「審査」というのは、その前月分を審査することなので、「4月審査分」は3月の状況を表しています。

ちなみに、新型コロナ感染による国内の感染者は、3月中旬あたりから少し目立ちはじめ、3月27日には100人に達しました。これまでも、新型コロナの感染拡大の中で、月単位での給付費実態統計や介護保険事業報告は上がっていました。ただし、新型コロナ感染期の前後という比較が年単位で明確になるデータは今回が初と言えます。

もちろん、本格的な感染拡大の前なので、受給者にどこまで影響が及んでいるかを推し量るうえでは、まだ「予兆」レベルにとどまっています。とはいえ、今回のデータからも気になる傾向が見られます。

2019年度は再び受給者拡大のトレンドだが

まずは、統計結果を精査してみましょう。全体の実受給者数ですが、ここ数年は減少傾向にありました。これは、予防訪問・通所介護が総合事業へと随時移行してきたことが影響しています。その移行が完了した後となる今回のデータでは、再び受給者数の増加(実受給者数は13万人以上)が認められます。

この流れに沿う限りでは、団塊世代が75歳以上を迎え始めることもあり、受給者数の右肩上がりは続くと想定されます。

では、今年の後半から来年(さらにその後)にかけ、新型コロナの感染拡大が続く場合にどうなっていくのでしょうか。今回のデータを見る限り、まだ通所系サービスには大きな影響を見ることはできません。

一方で、この時点から受給者数が大きく減っているサービス類があります。それが、短期入所系です。短期入所生活・療養介護だけでなく、特定施設や小規模多機能型などの短期利用者も同様です。GHの短期利用だけは伸びていますが、それでも対前年度と比較すると伸び率は大きく低下しています。

短期入所の受給者が減った要因とは何か?

これは何を意味しているのでしょうか。3月時点でまだ大規模な感染拡大は起こっていませんでしたが、それでも「(通所と異なり昼夜滞在する)ショート系は避けたい」という心理が働いたのでしょうか。感染の早期から「密を避ける」ために「受入れ人数を絞る」という施設なども見受けられましたが、そうしたことも影響しているのでしょうか。

もう一つ考えられるのは、昨年10月の消費増税です。居住費が発生する短期入所系では、他の居宅系サービスと比較すると、利用の意向が家計状況に左右されやすい傾向があります。仮に消費増税によって家計の切り詰めが行われたとすれば、短期入所系の利用にしわ寄せがおよんだ可能性もあるでしょう。

早急にレスパイト系施策の充実が必要に

いずれにしても、この短期入所系の利用控えが(新型コロナの感染拡大を中心として)長期的なトレンドとなった場合、当然、懸念されるのは家族の介護負担です。

今回のデータ対象期の後には、通所系の大幅な利用減の状況が表に出てくるのは間違いないでしょう。そうなった時、ぎりぎりの所で家族のレスパイトを担う短期入所の資源環境が揺らぐことは、大きな危険をともないます。新型コロナ禍で活動が抑制される中、すでに在宅での認知症の人のBPSD悪化などが広がっています。そうした中で、家族が「利用者と距離を置く」機会が得られなければ、介護倒れや虐待の連鎖も止められません。

こうした状況が長期にわたることを想定すれば、たとえば、短期入所系をいったん保険給付から外し、国の事業として(感染対策や従事者確保も含めた)集中的な予算投入を図ることも必要ではないでしょうか。

もちろん、「すぐ」にとは行かないかもしれませんが、少なくとも家計面からの利用控えを防ぐために、「居住費にあたる部分をクーポン等で公費支給する」といった対策も考えられるはずです。「GO TOトラベル」等に費やせる予算があるのですから、すぐに事業化できるのではないでしょうか。

家族のレスパイトにかかるセーフティネットがしっかりしていなくては、介護離職防止はもちろん、国の強調する「自助」など機能すべくもありません。要介護世帯の生活防衛に直結する課題として受け止めたいものです。

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