逓減制緩和で問われるマネジメント

ケアマネにかかる介護報酬・基準改定で、主たる論点の一つとなっているのが「担当件数による逓減制の緩和」です。介護給付費分科会では、一定の条件を満たした場合の緩和が検討の方向性として示されています。これが実現されたとして、事業所の運営にどのような影響が及ぶのでしょうか。

そもそも逓減制はなぜ導入されたのか?

担当件数による逓減制が導入されたのは、2006年度の改定です。導入された経緯としては、以下のような状況があげられまます。

(1)制度の開始当初と比較して、軽度の利用者を中心にケアマネの担当件数が一気に増えたこと。(2)利用者のすそ野が広がる中で、ケアマネが支援困難事例を抱え込むケースが増えたこと。(3)(2)の状況で、ケアマネ自身が力量の不安を感じながらも「支援やスーパーバイズを受けにくい」との指摘があるなどです。

(2)、(3)については、同年度に誕生した地域包括支援センターによる包括的・継続的ケアマネジメント支援事業などにより、ケアマネ支援の体制はとられてきました。しかし、保険者や包括ごとの取組みの姿勢によって、今もなお差が見られるのが実情です。今後、包括業務がさらに拡大される可能性もある中で、ケアマネ支援の質はますます問われています。

厚労省が示している「逓減緩和」の要件

こうした状況下で「逓減制の緩和」が行われることとなれば、厚労省の提案する要件が、懸念されるケアマネの負担増の解消(それによる質の高いケアマネジメントの実現)に本当に結びつくのかがポイントとなります。

厚労省が示しているのは、(1)給付管理関連業務などを担う事務職の配置、(2)携帯情報端末などのICT活用、(3)ケアプラン作成にかかるAIの活用です。この3つのうち、(1)なら事務職確保のためのサポートが整うことを前提として、ケアマネの負担減に直接結びつく可能性は高いでしょう。問題は、(2)と(3)です。

(2)、(3)ともに、モデル事業や先進事例などでは、「ケアマネの負担減」や「ケアマネジメントの質の向上」という点で一定の実績も見られます。ただし成功事例などを見ると、どんな場面でどう活用するのか、ケアマネが十分に活用できるまでのサポートや研修をどのように進めるかも大きなポイントとなります。

仮に導入・整備に向けての補助金などが拡充されたとしても、期待通りの効果を上げるには、プラスαとして事業所としてのマネジメント力の向上が問われるわけです。

事業所(法人)として考えるべきことは?

収支差率の厳しい居宅介護支援事業所としては、「収益を上げるための逓減制緩和」を歓迎する声も多いかもしれません。しかし、組織としてのマネジメント力が不十分なまま、「収益増ありき」で飛びつくとなれば、そのしわ寄せは現場のケアマネに及びます。

仮に「逓減制が緩和された」として、現場のケアマネが「質の高いケアマネジメント」を実現していくためには、事業所として以下のような点を考えなければなりません。

(1)現在進行中のケースをすべて検証したうえで、3ヶ月後、半年後、1年後に(利用者の状態や家族の状況、生活環境などが)急速に変化する可能性のある割合はどの程度か。つまり、過去の知見をもとに、進行ケースの綿密な予測を立てることが求められます。

(2)(1)の予測のもと、将来的に事業所のケアマネにかかる負荷を想定したうえで、それがICTやAIによってどこまで軽減できるのか。ひと口にICT・AIと言っても、事業所の特質と照らした場合に負荷の軽減に役立つものは千差万別です──ここで、進行中のケース課題から逆算した計画が必要になるわけです。

上限超えケースについての「予測」も必要に

(3)(1)、(2)によって現状のケース課題の解決を見込んだうえで、「低減緩和(40件超)」に乗った場合のケース展開を予測します。「未知のケース予測は困難」と言われそうですが、既存ケースの担当に至った経緯を分析していけば、事業所として「今後どのようなケースが増えるか」という傾向は見えてくるはずです。

(4)もう一つ重要なのは、(3)によって仮に「多大な支援負担を要するケース」が増えるリスクがあるとして、それをカバーする方策を立案することです。場合によっては、包括や地域の多事業所との連携強化なども必要になるでしょう。保険者なども巻き込みつつ、地域ぐるみの取組みが求められるかもしれません。

少なくともこれだけのマネジメントが必要となれば、施策上では、それを見込んだ基本報酬アップも必須となります。「逓減制を緩和」したから「基本報酬増は抑える」という発想では意味がありません。あくまで「逓減制の緩和」は「利用者増と照らしたケアマネの不足」への対応が主目的であり、これを適正に進めるには「相応の基本報酬増」は不可欠──この軸をずらしてはならないでしょう。

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