「家族面会」の制限がもたらす危機

新型コロナ感染にかかる緊急事態宣言が一部で解除される一方、重症化リスクの高い要介護高齢者をめぐっては、依然として現場対応の緊張度は増したままです。たとえば、施設等での「家族の面会」なども制限される中、業界全体で考えるべき課題を取り上げます。

「面会」は「情報公開」の一つでもある

施設等での「利用者家族の面会」については、全国老人福祉施設協議会(老施協)が、利用者家族の面会についての留意点などを会員に示しました。一方、厚労省は、「オンライン面会」を実施する場合の環境や感染対策にかかる通知を発出しています。

・厚労省通知vol.834「高齢者施設等におけるオンラインでの面会の実施について」

施設等の入所者の生活意欲やQOLの維持・向上において、「家族の面会」は重要な機会であることは間違いありません。さまざまな制限が加わる中でも、安全を考慮しつつできる限りの対応を図っていくことは、施設等が取り組みたい課題の一つと言えるでしょう。

ただし、「家族の面会」というイベントをめぐっては、もう一つ重要な意味があることも忘れてはなりません。それは、「家族による面会」が、その施設等にとっての「情報公開」の一端を担っているという点です。

本人がその場所で、日常的にどんな具合に過ごしているのか。それは、本人の心身の状況や「その人らしい人生」の実現にどのような影響を及ぼしているのか──家族にとっては、何よりも気になることです。それらを察知する「窓口」の一つとなるのが「面会」です。施設等の現場側としては、さまざまな制限が加わらざるを得ない今だからこそ、「家族の知りたいこと」にきちんと応えるという意識を今まで以上に高めなければなりません。

「オンライン」の利便性に頼ることへの不安

もちろん、オンラインによる面会でも、本人の表情や容姿、視覚から得られる雰囲気などはキャッチできます。厚労省通知にある事例では、家族が1階ロビーからオンライン面会するケースを紹介しています。この場合、家族は「その施設等」には来訪するわけで、自宅からのオンラインより得られる情報(例.感染対応によって施設内の緊張度が高まっているなど)はいくらか厚くなるでしょう。

とはいえ、「外部との交流」が一定以上遮断されるとなれば、家族としては、「きちんとしたケアが行われているだろうか」といった不安は付きまといます。つまり、「こういう時期」だからこそ家族の不安は募り、これまで以上に「施設等の中の状況が知りたい」というニーズは高まっている可能性があるわけです。

こうした家族側の心理をくみ取るとすれば、「オンラインで面会できる」という利便性だけに頼るのは危険がともないます。

たとえば、オンライン面会で利用者がちょっとした身体の痛みや不調を訴えたとします。実際には大したことではなかったり、配置医や看護師がきちんと対応していたとしても、家族側には「やはり人員不足などで十分なケアが行き届いていないのでは?」といった想像などが膨らみやすいわけです。こうした不安を放置すればあらぬ不信感が増大し、いずれは大きなクレーム等につながりかねません。

「家族とのチャンネル」を増やすことが必要

そこで求められるのは、利用者の日常生活の様子について、これまで以上に「家族に伝えていく」ためのチャンネルを増やしたり、伝える情報の具体性をあげることです。

たとえば、施設によっては、家族ごとに利用者の状況(1週間の体温・血圧変化なども含む)を伝えるメールを(利用者の写真や音声付きで)送付しているケースがあります。ここにオンライン通信の環境をプラスできれば、メールを見た家族からの質問などを受け付けることができます。つまり、施設側との双方向のやり取りにつなげるわけです。

「今の混乱状況の中で、そこまでできる余裕はない」と思われるかもしれません。確かに業務が煩雑になり、人員確保も困難が生じる中で、家族との情報交換の窓口を広げる取組みなどに着手するは非常に厳しいでしょう。

しかし、その間にも「家族の内心の不安・不信は募っている」というのは、決して考えすぎではありません。現実に施設等における集団感染などが起こっている中で、そうした他事例を見聞きするたびに、「この施設は大丈夫か」という思いはあるはずです。

また、残念ながら、一部の施設等では不適切なケアが常態化しているケースもあります。そうした施設等で「面会中止」による閉鎖性が高まれば、さらに大きな問題が発覚することも想定されます。もちろん、多くの施設等では、厳しい中でもケアの質を維持するために職員が必死に頑張っています。とはいえ、一部の不祥事により、良質な施設に対しても疑いの目が向きかねないのが今の状況です。

だからこそ、施設等のトップとしては、「どうすれば常日頃からの家族とのチャンネルを増やしていけるか」を今から思考しておかなければなりません。と同時に、こうした施設等の取組みに対し、国側も「オンライン」装備だけにとどまらない施策的なサポートに踏み込むべきでしょう。これから高まるであろう危機に、先手を打つことが必要です。

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