新型コロナによる介護崩壊を防ぐには

新型コロナウイルスの感染者数が、都市部を中心に急増しています。4月1日の専門家会議の記者会見では、通所系・短期入所系などの介護サービスの利用制限にも要請が及びました。実際、すでに自治体要請等で休止するサービスも増えています。こうした状況がさらに長期化した場合、制度全体を見すえてどのようなしくみを考えるべきでしょうか。

「介護崩壊」が「医療崩壊」も加速させる

通所系サービスなどで事業所内サービスの休止や人員基準等を満たせないケースについては、これまで数回にわたり厚労省から通知が発せられています。ただし、基本報酬や加算の算定については、提供場所を変えたり、通所を訪問に切り替えるなど「できる限りのサービスを提供した場合」が前提となります。

今後、感染状況がさらに深刻化し、国や自治体の要請等にもとづいて「完全休止」のケースが増えていくとします。そうなれば、長期化にともなって事業所の閉鎖や撤退が相次ぐという事態も想定しなければなりません。

新型コロナウイルスの影響に関しては、「医療崩壊」の危機が叫ばれています。ただし、そこに上記の「介護崩壊」が加われば、事態はより深刻化することも考えられます。

近年は、介護保険における高齢者の療養管理や生活機能の重度化防止の役割がますます重要になっています。介護サービス資源の不足が急速に進めば、ある時点で「急性期医療」へのニーズが一気に高まる可能性も指摘され始めています。そこで何が起こるかといえば、懸念される「医療崩壊」のスピードが想定を上回るという事態です。これからはキュアとケアをつなぐ線を見極めないと、社会の存立さえも危うくなりかねません。

2021年度にはコロナ対応を想定した改定を

こうした危機状況の中、まず考えるべきは、「感染リスクへの対応が数年単位で長期化する」という可能性です。そうなれば、厚労省が通知で発出している「臨時的」な対応や、政府が打ち出すような「つなぎ」的な資金援助などでは追いつかなくなるのは必至でしょう。「今起きていること」を突発的ととらえるのではなく、これからは常態化を想定した施策が必要な時期に入っているといえます。

ちなみに、社会保障審議会では、2021年度の介護報酬・基準改定に向けた介護給付費分科会が始まっています。3月26日の審議では、2018年度改定にかかる効果検証がテーマとなっていますが、間もなく個別サービスの課題検討にも入ることになるでしょう。

そこでは、「新型コロナ対応」にかかる現状分析や「今後必要となる施策」が論点として上がってくると思われます。事業所の存立が危うくなっている状況を無視して報酬・基準を議論することは意味がないからです。

その際に欠かせない視点は、先に述べた「今起きていることの常態化」です。より具体的に言うならば、2021年4月時点で「事態がなお終息していない」ことを想定した報酬体系などを探ることが必要になることです。

今必要なのは「国民生活を守る」という意思

これまでの一連の「臨時対応」にかかる通知を見ると、厳しい状況の中での「できる限りのサービス提供」を「現行報酬」の枠内で評価するというのが基本になっています。

しかし、たとえば通所介護で「公民館等の場」を利用したり「利用者の居宅」を訪問するとなれば、(1)職員には通常とは異なる実務負担がかかる、しかも(2)(訪問時の移動などを考慮すれば)それは上乗せ負担となりやすいことなどが想定されます。さらに、(3)職員が(子どもの休校の延長などによって)休職せざるを得ない状態が続くとなれば、出勤職員1人あたりの負担はさらに増えていきます。

これが常態化すると考えた場合、「新型コロナ対応」への評価を上乗せしたり、人員基準や加算要件なども緩和した特定区分を常設することが必要でしょう。そして、それらをそのつどの告示・通知だけでなく、2021年度報酬改定での省令改正で設定するわけです。

もちろん、それまでに事態が終息し、特定区分の適用が行われなければ、それに越したことはありません。肝心なのは、「最悪の事態」でも「介護事業の持続性を保障する」という施策側の意思が示されることです。

現状で、国や自治体のトップが発する「自粛要請」などの言葉がいまひとつ国民に届かないのはなぜでしょうか。それは、「危機」を声高に訴えてはいても、「何をおいても国民生活の持続性を守る」という強い意思が感じられないからではないでしょうか。それがなければ、人々が気持ちを一つにして国難を乗り越えることなどできはしません。

トップの発言にプレッシャーをかける意味でも、業界団体や職能団体そして現場従事者の代表などが、できることから「常設的な対応策」を継続的に提案していく──この行動が、今こそ必要な段階に入っています。

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