制度見直しで注視したい2つの施設

昨年末に介護保険等の制度見直し案がまとめられ、これをもとに今春には改正法案が国会に提出される予定です。今回の見直し案では「給付と負担」にかかる改革の多くが見送りとなる中、介護現場としては「何が変わるのか」がいまひとつ整理しにくいかもしれません。法案化の前に少しずつ深掘りします。

介護医療院へのさらなる転換加速策も?

今回の見直し案では、地域包括ケアシステムの推進にかかるテーマとして、「医療・介護の連携」がかかげられています。具体的には、(1)地域支援事業に位置づけられている在宅医療・介護連携推進事業の体系の見直しを図ること。(2)2017年の法改正で設けられた介護医療院について、介護療養病床などからの円滑な移行をうながすことです。

ここでは、(2)について取り上げます。ご存知のとおり、介護療養病床は2023年度末(第8期介護保険事業計画期間)が設置期限となっています。国としては、それまでの間に介護医療院への完全移行を進めたいと考えています。そのため、これまでも施設基準を緩和したり、介護報酬における移行定着支援加算を設けるなどの施策を打ってきました。

しかしながら、2019年4月時点で、介護療養病床数は依然として約3万6600床にのぼっています。これに対し、介護医療院の療養床数は同年9月時点で約1万6000床。さらに、まだ開設されていない都道府県も見られるなど、順調に移行が進んでいると言うにはやや疑問符がつきます。そこで今回の見直し案では、「早期の意思決定を支援する」こと、「申請手続きを簡素化も含めた移行等支援策を充実する」ことなどをかかげています。

医療療養病床からの転換も加速していくのか

注目したいのは、見直し案の中で「医療療養病床からの移行により、各保険者の介護保険財政に影響をおよぼす恐れ」があると指摘されている点です。ちなみに、2019年9月末時点での介護医療院の転換元の病床割合を見ると、16.1%が医療療養病床となっています。

一方で、介護療養病床の移行先を見ると、2018年4月から19年3月の間で医療療養病床への転換が18.7%あります。一見すると、「医療保険から介護保険へ」と「介護保険から医療保険へ」という流れは打ち消し合っているように見えます(つまり、介護保険財政への影響は軽微という見方も成り立つ)。

しかし、以下のような状況も考えられます。「介護医療院が経営的に成り立つかどうか」の判断がつきにくいため、いったん医療療養病床へと移行しておこうという医療法人側のビジョンがあることです。そして、将来的に見極めがついたところで、介護医療院への転換を計画するという流れになるわけです。

厚労省としては、「介護医療院への転換を進めたい」ゆえに、どこかで報酬上の優遇策をとることを考えているかもしれません。ただし、その時点で医療療養病床からの転換が急速に進めば、介護保険財政が一気に圧迫される可能性もあります。先の見直し案での懸念は、こうした背景も考えられるわけです。

なお、見直し案では「医療療養病床から介護医療院への転換」について、保険者への財政支援の検討もうたっています。新たな財政措置も含めて、介護保険全体が介護医療院に振り回される状況が今後も続きそうです。

複雑化する老健の報酬体系がもたらすもの

もう一つ注目したいのは、老健です。老健については、2017年の法改正で在宅復帰・在宅療養支援のための施設であることが明確化され、その機能を指標化することで報酬体系が細分化されました。利用者としては、「なぜこれだけのお金がかかるのか」という点で、すんなりと理解するのは困難でしょう。

そして、今回の見直し案では、上記の機能をさらに推進していくことの必要性がうたわれています。「推進」というからには、当然報酬上のインセンティブが強化される可能性は高いでしょう。仮に今以上に指標を増やしつつ、報酬体系が複雑化するようなことなれば、利用者側の理解・判断はますます追い付かなくなります。「機能が強化されるからOK」という以前に、介護保険の主体は誰なのかという点にもう一度立ち返る必要もありそうです。

ちなみに、老健も医療法人が担う施設です。次期改定で、たとえば在宅復帰の指標がさらに複雑化すれば、自法人の訪問看護や通所リハビリなどを駆使しつつ、「収益をいかに上げるか」を試算する動きも活発になるでしょう。

果たして、その中で利用者の視点に立った医療・介護連携がうまく機能するのかどうか。介護医療院のケースでもそうですが、制度上のつじつま合わせや医療法人の経営視点が先に立つような報酬・基準改定が行われれば、そのしわ寄せ(報酬減など)が他の介護サービスに及びかねません。この医療側の事情が絡む2つの施設の動向は、今年の法改正の中でも特に目を注ぐ必要がありそうです。

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