介福士経過措置延長の議論を整理する

今年前半、介護保険法等の改正案(社会福祉法等も含めた一括法)が国会に提出される予定です。この各制度の見直しの中で、にわかに浮上してきたのが、介護福祉士国家試験の義務化にかかる経過措置の延長です。昨年後半からの動きを、特に外国人介護人材の受入れという流れの中で整理しましょう。

措置期間中は、国家試験経ずして資格取得も

まず、今回の経過措置とは何かについて再確認しておきましょう。ご存じのとおり、2007年の社会福祉法および介護福祉士法の改正によって、介護福祉士の取得方法の一元化が図られ、養成施設ルートでも卒業後に国家試験の受験が義務づけられました。

ポイントは、この完全施行について、2016年の法改正(附則)で「経過措置」が設けられたことです。具体的には、2022年3月31日までに養成校を卒業した者については、介護福祉士資格を付与したうえで、以下のいずれかを満たせば、引き続き資格保持が可能というものです。その条件とは、(1)(卒業後5年以内に国家試験に合格する、(2)卒業後5年間連続して実務に従事する(育児休業等を取得した場合は合算でもOK)となっています。

注目点はやはり(2)でしょう。経過措置の終了後(最大で2026年度)には準介護福祉士となりますが、それまでは「国家試験を受けずに」介護福祉士の資格が付与されるわけです。ちなみに、準介護福祉士は「介護福祉士の技術的援助・助言を受ける」などとされていますが、大きいのは、やはりサービス提供体制強化加算などの各種報酬上の要件に影響がおよんでくるということでしょう。

11月の福祉部会で経過措置延長が論点に

さて、この経過措置をどうするかについて、昨年11月の社会保障審議会・福祉部会で論点として示されました。2016年度試験で半減した応募者数がその後も低迷を続ける中、「介護福祉士不足の解消策の一つ」として議論に上げたわけです。当日の部会では、さっそく老施協の委員などから「もう少し経過措置を伸ばしてほしい」という要望が上がりました。

背景の一つとして、養成校の入学者減・定員割れが相次ぐ中、外国人留学生の数だけが大きく増えているという現象があります。ご存じのとおり、2017年9月から、留学生として来日した後に介護福祉士を取得すると、在留資格「介護」が付与されます。

この在留資格「介護」が付与された場合、介護業務(訪問系もOK)を続けている限り、在留期間更新の回数制限はありません。また、家族(配偶者・子)を呼び寄せることも可能となります。今回の経過措置によって、仮に上記の(2)が適用された場合、留学生にとっては「日本に(家族と)在留する」うえで、かなりハードルは低くなるわけです。

逆に言えば、経過措置期限が切れたとき、「卒業後にすぐ国家試験を受けなければならない」となるわけで、在留資格「介護」の付与ハードルは一気に上がります。そこで留学生が激減するようなことがあれば、多くの養成校の存続も危うくなります。それにより、地域によっては、「外国人人材は雇わない」という事業所・施設であっても(養成校の撤退などで)人材確保がさらに厳しくなるという状況が予想されるわけです。

業界3団体は「要望」、介護福祉士会は「遺憾」

こうした危機感を抱いた一部業界団体(老施協、老健協、およびGH協会)は、昨年12月20日、「介護福祉士資格の国家試験合格義務化の経過措置措置延長」を求める要望書を与党・自民党の政務調査会に提出しました。これを受けて与党も「延長」に前向きになったことは、当サイトの本ニュースでも報じられたところです。(なお、一部で「厚労省が延長を決めた」という報道もなされています)

では、当の職能団体である「日本介護福祉士会」はどのように受け止めているのでしょうか。年明けの1月24日、日本介護福祉士会は会長名による「経過措置延長の政府方針」に対する声明を発表しました。

それによれば、「慢性的な人手不足の問題が急務の課題であり、外国人材の参入など社会情勢の変化については当会も十分理解」しているとしたうえで、「だからこそ、国家資格の質の担保や価値の創出が何より重要なはず」と主張しています。そして、今回の経過措置の延長方針は、「介護福祉士の資質向上を目指す職能団体としては極めて遺憾」という立場を示しました。上記の業界3団体の要望とは真っ向から対立したことになります。

この議論は、春先の法案提出まで尾を引くことは間違いないでしょう。結局は、「外国人人材頼み」にならざるを得ない(養成校を含めた)業界構造が重くのしかかっているといえます。厚労省としては、「経過措置の延長」に踏み切る公算が高いといえますが、そうなると今度は「介護福祉士にどのような社会的価値を付与するか」を論じるのが施策的なスジとなるはずです。この問題、実はわが国のこれからの介護施策のあり方が本質的に問われている話と考えるべきかもしれません。

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