文書負担の軽減を「原点」から考える

昨年12月、社会保障審議会の「介護分野の文書にかかる負担軽減に関する専門委員会」が中間とりまとめを行ない、介護保険部会の制度見直し意見でも「介護分野の文書の削減・標準化」を重点項目としてかかげています。すでに2019年度内をめどとした取組みもスタートする中、今回の改革が本当に介護現場の課題解決につながるのかを考えます。

今改革のターゲットはどこにあるのか?

改めて今改革の中身を整理しましょう。まず、「介護分野の文書」が何を指すかですが、大きくは「国・自治体が求める帳票等」と「事業所・施設が独自に作成する文書」に分けられます。後者で、たとえば日常的に作成する記録等の一部が加算算定の要件になっているなどのケースもありますが、この場合は前者の帳票等に含まれると考えていいでしょう。

制度上で定めていく、つまり今改革の対象となるのは前者です。後者については、事業所・施設の体制にかかわるテーマとして、生産性向上ガイドラインの改定・普及や地域医療・介護総合確保基金等を活用したICT導入支援などが示されています。これらはあくまで「事業所・施設の体制」にかかる予算上の措置であり、今回の「文書にかかる負担軽減」とは一線を画すと考えた方がいいでしょう。

そのうえで、前者の改革の範囲ですが、3つに分けられます。それが、(1)指定申請関連文書、(2)報酬請求関連文書、(3)指導監査関連文書です。本ニュースで、2021年度の介護報酬改定での手当てについてふれていますが、これは主に(2)が対象になると考えられます。つまり、加算等の請求に際して、その要件となる文書提示の見直しとなるわけです。

具体的には、上記文書の様式例を見直すこと。そのうえで、様式例が定められないものについては、ガイドラインやハンドブックを用いて不明確なルールや解釈の幅を少なくするという具合です。このあたりは、今年の介護給付費分科会や、その関連で設置される専門委員会での検討が想定されます。

本丸改革の多くは次の報酬改定の議論待ち

さて、上記の(1)~(3)については、「簡素化」「標準化」「ICT等の活用」という3つの方策が示されています。ここで現場の負担が直接的にどこまで軽減されるのか、間接的である場合でも、どこまで現場へのメリットが期待できるかを考えてみましょう。

たとえば、2019年度内をめどとした報酬請求上の取組みで具体化されたものの一つに、「介護職員処遇改善加算と特定処遇改善加算の計画書の一本化」があります。これによって処遇改善の関連加算が取りやすくなれば、従事者の処遇改善も多少は上がっていくという見方があるかもしれません。

しかし、計画書そのものに関する要件がどうなるのかについては、今後の通知(あるいは次の報酬改定での要件見直し)待ちです。個別の要件に踏み込まないまま、「一本化」だけをもって現場にかかるメリットがどうなるのかを判断するのは難しいといえます。

では、ケアマネにとって気になる給付管理業務はどうでしょうか。これが大幅に軽減されるとなれば、少なくともケアマネの実務負担には大きな影響を与えるかもしれません。

ただし、これについても次の報酬・基準改定で明確なテーマとして上がるかどうかは定まっていません。実地指導にかかる標準化・効率化(ローカルルールの解消等)も、自治体向け研修がどこまで効果を上げるのかを考えれば、公務員関連規則の見直しなどにまで踏み込まないと、現場の負担軽減を確実に担保するには乏しいのではないでしょうか。

「責任回避のための文書」にならないために

ここで、そもそも介護保険制度に関連した文書(つまり公文書)とは何かという原点に立ち返ってみましょう。その目的は、制度の適切な運営によって「保険料(あるいは税金)を支払う国民」の権利を保持することにあります。と同時に、利用者の自立と尊厳を保持するという制度の理念に立てば、従事者の安心と生活を支える視点も必要です。

たとえば、事業者が従事者と利用者の人権をきちんと守っているかどうか。それをチェックするための「文書」という基本をまずしっかり固めること。そのうえで「どの部分を削減できるか」という思考の過程が必要です。

しかしながら、こうした文書の理念が、現代社会では残念ながら揺らぎつつあります。どちらかというと、本来の理念がかすれ、行政現場等に「責任がおよばない」ようにするための手段という色合いが濃くなっています。現状の行政や国政のみならず、一般社会全体でも「責任回避」のための文書利用という風潮が強まっている気がしてなりません。

こうした危機をしっかり見すえないと、いくら「現場負担の軽減のための文書削減」をかかげても、本来的に守られるべき現場従事者や利用者には空しく響くだけでしょう。現場負担の軽減を目指すなら、むしろ、先に述べたような公務員関連規則および罰則の強化などの議論も同時並行で必要になるはずです。

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