現場の実情に沿った「看取り」評価を

2021年度の介護報酬・基準改定で、大きなテーマの一つと予想されるのが「介護現場における看取り」にかかる評価です。2018年度改定からのさらなる踏み込みはもとより、ACP等をめぐる診療報酬の動き、そして令和2年(2020年)度予算案にかかげられた項目など多様な動きから課題を整理してみましょう。

次年度予算で示された看取り環境の整備

今回、厚労省が示した次年度予算案において、地域医療介護総合確保基金の「介護施設等の整備分」にかかる新規・拡充のメニューが示されています。その中の「新規分」として、「介護施設等における看取り環境の整備推進」という項目があがっています。

具体的には、介護施設等における看取りに対応できる環境を整備する観点から、以下の改修費を補助するものです。それは、「看取りに利用する」あるいは「(看取りに立ち会う)家族等の宿泊」のための個室の確保を目的とした改修です。補助対象施設は、介護保険3施設のほか、GHや介護付き有料、小規模多機能型、さらにはケアハウスなども対象です。

最大補助額は、1施設あたり350万円。対象個室は看取りに利用することを原則とするものの、看取りとしての利用がない期間において、「入所者の静養や家族等の一時的な宿泊等に使用する」ことも可能としています。

もちろん、ハード面だけの「環境整備」だけでは、現状の看取りニーズに対応する施策としては不十分でしょう。現場の従事者不足を想定すれば、大きな負担を要する看取りについて、どこまで処遇等のサポートが上積みされるかが問われてきます。

介護現場の看取り評価はどう変わったきた?

では、介護現場での「看取り」にかかる報酬上の評価はどうなっているのでしょうか。周知のことですが、介護保険制度がスタートしてから現在にいたるまでの「看取り」評価の流れをたどってみましょう。

制度スタート時では、看取りにかかる報酬上の明確な評価といえば、訪問看護のターミナルケア加算のみでした。その後、利用者の高齢化や重度化にともない、2006年度改定で特養ホームに看取り介護加算が誕生します。

2009年度には、GHで看取りケア加算が、老健、介護療養型でターミナルケア加算がそれぞれ設けられました。すでにターミナルケア加算が算定されている訪問看護についても、医療保険との整合性を図る観点から要件の見直しや評価の拡充が行われました。

2012年度改定では、施設・居住系サービスでの算定区分の期間について、「死亡日」「死亡前日~前々日」「死亡日前4日~30日前」の3区分での統一が図られました。なお、ここで介護付き有料(特定施設入居者生活介護)にも看取り介護加算が生まれています。

その後、2015年度改定で小規模多機能型に看取り連携体制加算が生まれ、特養の看取り介護加算において、多職種協議による看取り指針の適宜見直しなどを満たすことを要件としたうえで、「死亡日前4日~30日前」の評価が引き上げられました。ここで、特養における看取り体制が日常のケアの中に深く組み込まれるしくみが生まれたわけです。

本末転倒にならないための発想転換が必要

こうした流れを受けつつ、2018年度改定では、居宅や介護施設での「看取り」のさらなる強化が図られました。訪問看護ではターミナルケア加算の算定回数が多い場合の看護体制強化加算の拡充が図られ、特養では配置医師との連携のもとで「施設内での看取り」を明確に評価することとなりました。

そして、ご存じのとおり、居宅介護支援では「末期がんの利用者」を対象としたターミナルケアマネジメント加算が誕生し、同利用者に対するケアマネジメント過程に関する基準改定も行なわれました。ただし、新加算について算定事業所が少ないことから、次の改定での要件見直しなども見込まれています。

一方、診療報酬側では、ターミナル期の診療に関してACP(アドバンス・ケア・プランニング)にもとづく「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等を踏まえることが要件に組み込まれました。この流れは、次の介護報酬改定で看取り関連加算にも反映されると思われます。

このように、看取りに関連する加算は目まぐるしく変わってきた(これからも変わると思われる)わけですが、現場がそれに追いつけているのかが問題です。特に対医療連携での煩雑な実務に振り回されるとなれば、管理者・リーダーの人材不足が深刻な中で、利用者への丹念な意思確認などが後手に回るという本末転倒な状況も生み出しかねません。「その人らしい看取り」という理想を追うことは重要としても、現場従事者へのケアや処遇をどのように重視するかについて、現場に実情にもとづいた発想転換も必要となりそうです。

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