「現場任せ」に終わらない制度周知を

昨年12月24日、厚労省より「介護保険の第2号被保険者に対する介護保険制度の周知について」という通知が発出されました。約4200万人(2016年度内の月平均)という2号被保険者数は1号被保険者数を上回ります。今通知では、そうした被保険者層に向けた制度周知にかかるリーフレットを示しています。

2号被保険者向けの周知徹底策が出た背景

通知に添えられたリーフレットは、2016年および2018年にも同様のものが示されてきました。そのつど、制度内容や数字等に変更があった部分が修正されています。今回、改めて発出された背景は2つあります。

1つは、通知内にも記されているとおり、昨年6月に閣議決定された規制改革実施計画で以下の施策が示されたことに関連します。具体的には、労働者が介護保険の第2号被保険者になった時点(40歳)で、介護と仕事の両立支援制度や介護保険にかかる周知の徹底を図るというものです。

もう1つについては明記されてはいませんが、2017年の法改正による以下の施策が関連していると考えられます。それは、介護納付金の総報酬割を第2号被保険者に導入するというものです。簡単に言えば、それまで被用者保険の加入者数によって決めていた納付金を、各被用者保険の加入者の総報酬に比例させるとしたものです。これにより、たとえば健保組合間で加入者の報酬額が異なる中での不公平感を解消するわけです。

この総報酬割は2017年8月から段階的に導入されていますが、これが2020年度には全面導入となります。この総報酬割の導入により、当初の試算では「負担減」となる被保険者は約1700万人となる一方、「負担増」となる被保険者も約1300万人にのぼります。後者の被保険者の理解をどのように得るかが、全面導入に際して課題となってきます。

現行の周知策だけで問題は解決するか?

さて、今回の通知は上記のような「機会」をとらえたものといえます。しかし、添付されているリーフレットの大枠は、基本的に変わっていません。制度のしくみや使い方などは記されていますが、「理解を得る」となれば、このリーフレットを使っての自治体や包括、企業の総務担当など「各現場の努力」に任されるというレベルにとどまりがちです。

「現場の努力」は、ケアマネの実務上の負担にもつながってきます。たとえば、ケアマネの中には、「(主に2号被保険者となる)利用者家族からのケアマネジメント上の要求等が詳細かつ多岐にわたる」というケースもあるでしょう。ここに、先の総報酬割の完全導入が加われば、保険料負担が増大する側からの要求がさらに強まることが考えられます。

そうなったとき、今回のリーフレットにあるような「制度のしくみと使い方」などを示しただけで、2号被保険者が「制度による受益」を実感できるのかといえば、やはり疑問符がつくことになりそうです。

2号被保険者の納得を得るために必要なこと

社会保険の場合、民間保険と異なり、受益のしくみに「納得がいかない」となっても、被保険者は「解約」などができません。その分、保険料を支払う当事者として「制度に物を申す」権利を有していることになります。

もちろん、「有権者としての権利(投票行動など)はある」という考え方もあるでしょう。しかし、介護保険における被保険者の範囲は、現状では有権者の一部に過ぎません。となれば、「介護保険はどうあるべきなのか」について、行政からの一方的な情報提供だけでなく、どこかで双方向のしくみが必要となります。たとえば、以下3つのような取組みです。

(1)受益を得るサービスに、今どのような課題(現場の人材不足や事業者の厳しい経営状況など)が生じているのか。それを解決するために必要な保険料水準はどの程度か。それが課題解決のために適正に使われる保証はどうなっているのか──そうした情報提供を国の責任で推し進めること。(2)タウンミーティングのように、既存の審議会以外で、できる限り多くの被保険者と国の施策担当者が意見交換をできる場を設けること。さらに、(3)被保険者と(ケアマネなど)現場の従事者間でも意見交換ができる場、たとえば、対利用者・家族と従事者の懇談会を自治体ごとに行なうことを義務づけるなどが考えられるでしょう。

こうした積み重ねを通じて、利用者・家族と包括・自治体・企業担当者・現場従事者との間で認識の共有を図っていく──2号被保険者の「介護離職」や、それを防ぐための介護保険の運営が厳しい状況に追い込まれている中、個別の現場任せではない「踏み込み」が求められているのではないでしょうか。

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