令和2年度予算案をどう読み解くか?

12月20日、2020年(令和2年)度予算案が閣議決定されました。社会保障関係費が32兆円を超える中、対前年度比の伸びで著しいのが介護分野(5.4%増)です。果たして介護現場、そしてケアマネが直面するさまざまな課題の解決に資するものとなるのでしょうか。

増額が目立つ「介護現場の生産性向上」関連

介護現場で今もっとも大きな課題といえば、介護人材の確保が困難という状況です。この部分にかかる予算は1140億円、対前年度予算比で284億円が増額されています。増額分が主にどこにあてられたかといえば、昨年10月の特定処遇改善加算にかかる506億円(対前年度予算比でプラス293億円)です。

上記以外で増額が目立つのは、介護分野における生産性向上の推進です。ここに15億円(対前年度予算比でプラス5.1億円)が投じられています。この増額分については、本ニュースでも取り上げている「リーダー的介護職員の育成と、介護職員のキャリア・専門性に応じたサービス提供体制によるチームケア実践の推進」(新規で5.9億円)に、その多くが振り向けられていることが分かります。

この新規分は何を意味するのでしょうか。上記のポイントを2つに分けると、(1)リーダー的介護職員の育成、(2)介護職員のキャリア・専門性に応じたサービス提供体制によるチームケアの推進となります。これは、(2)のマネジメントを進めることを主眼としつつ、それを担う人材育成が(1)と考えられます。

労働環境改善の新メニューも見られるが…

では、(2)のマネジメントとは何でしょうか。お気づきの人も多いでしょうが、国が進めている「ノンコア業務を担う多様な人材(入門的研修や生活援助従事者研修などを修了した中高年人材など)」の参入促進を踏まえたうえで、現場業務の切り分けを進めていくという施策に関連していると考えられます。

つまり、この予算は「国が示す介護現場の新たなキャリアビジョン」に“乗る”ことを前提としているわけです。この予算に関して「ピンと来ない」という人もいるでしょうが、それは現場の実情云々にかかわらず、国による施策的な誘導が前提となっているからといえます。その点で、先の新加算による処遇改善や現場の労働環境の改善とは「切り離して」考えた方がいいのかもしれません。

では、労働環境の改善などについてはどうなっているのでしょうか。これを担う費用といえば、地域医療総合確保基金(介護分)です。その使い道となる新規の事業を見ると「介護職員に対する悩み相談窓口設置事業」、「介護事業所におけるハラスメント対策推進事業」など。また、拡充される事業については、介護ロボット導入支援にかかる補助限度台数の拡充、ICT導入支援にかかる補助上限額の引き上げなどが見られます。

ただし、上記の確保基金に投じられる予算は、対前年度比で変化はありません(82億円のまま)。新規・拡充メニューが増えたとしても、予算額に変化がないならば、それを有効に活用できるかどうかは、各自治体の手腕に左右される部分が大きいといえます。

ケアマネ実務に影響をおよぼす2つの予算枠

一方、今予算案において、ケアマネに関連する項目はどうなっているのでしょうか。ここでは2つの項目に注目します。

1つは、企業に勤める人の「介護離職防止」に向けた施策関連です。具体的には、ケアマネ等が「仕事と介護の両立」に関する知識を習得するための研修カリキュラムの策定に予算を投じます。これは、「働きながら家族の介護をする人」に対し、ケアマネが介護休業制度などにかかる適切なアドバイスなどができるようにすることを目指したものです。

これは、昨年6月の政府の規制改革会議による答申が反映されたものです。具体的には、「就労している家族の勤務実態」も踏まえてケアプランが作成できるよう、「セミナーの開催やその受講を評価するしくみ」を設けることです。そのカリキュラム策定に予算が投じられることで、将来的にケアマネにかかる各種研修に反映されることが考えられます。

もう1つは、「ICTを活用した介護情報連携推進事業」です。これは、入退院時以外での医療と介護の情報連携について、「ICT活用による方策・効果」の実証研究などに予算を投じるものです。入退院時「以外」での情報連携といえば、2018年度にケアマネに対して「平時からの対医療職連携」が義務化されました。また、2019年度の補正予算案では、「居宅介護支援事業所と介護事業所間のICTを活用した情報連携」に向けて、クラウド活用にかかる実証研究などが上がっています。

政府予算案の色合いから変わってきている?

こうして見ると、「仕事と介護の両立」と「ICT活用による多職種連携」の2点に関して、ケアマネ実務の改革にかかる下地が着々と進められていると見ていいでしょう。たとえば、2024年度改定あたりで、今予算案によるカリキュラム策定や実証研究などが反映される可能性があるかもしれません。

いずれにしても、昨今の政府予算案は、「現場にどのような恩恵がもたらされるか」というより、「どのような施策レールが新たに敷かれるか」という布石の色合いが強まっています。そのあたりを注意することが必要です。

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