居宅介護支援の運営は「崖っぷち」

年の瀬の12月27日に開催された介護給付費分科会で、2019年(令和元年)度の介護事業経営概況調査の結果が示されました。2018年度の介護報酬改定は全体でプラス0.54%でしたが、前年度と比較しての全サービス平均の収支差率はマイナス0.8%となっています。居宅介護支援を中心に、介護施設・事業者に起こっている状況を掘り下げてみましょう。

プラス改定なのに収支差率悪化の深刻度

サービス別の収支差率と給与費割合を照らしてみると、(対前年度比で)給与費割合が増大したサービスは、ほとんどが収支差率を悪化させています。このことから、人材不足に対応するための人件費の上昇が、経営状況を悪化させているという分析が浮上します。

ちなみに、2017年度の中期改定で介護職員処遇改善加算の拡充が図られましたが、2018年度改定では加算IV・Vの将来的な廃止が示されただけで、加算の上乗せは行なわれませんでした。そうした状況が影響していると見ることもできますが、それでも「全体でプラス改定になったのに収支差率が悪化している」というのは深刻な事態を物語ります。

たとえば、拡充された処遇改善加算を取得するための対応が(特に中小規模の施設・事業所で)翌年度にずれ込んでいることも想定されます。そうした中でも給与費割合の増大が経営の足を引っ張っているとなれば、そもそも処遇改善加算という施策が、人材確保が困難な現実に追い付いていないことを示しています。「基本報酬からの底上げ」を真剣に考えなければ、サービス資源自体の急速な縮小につながりかねない状況といえるわけです。

ケアマネ給与の減少一途が改めて浮き彫りに

処遇改善加算の恩恵を受けていない居宅介護支援になると、事態はさらに深刻です。居宅介護支援については、収支差率は0.1%改善したものの、依然として全サービスを通じて唯一のマイナスとなっています。一方で、給与費割合は下がっており、現場のケアマネ処遇にお金が回っていない分、わずかながら改善したのではないかとも言えます。

そうした深刻度合いは、サービス別の調査の詳細でさらに浮き彫りとなります。注目したいのは、居宅介護支援における「常勤換算1人あたり給与費」です。2015年度決算との比較で見ると、常勤ケアマネで「約37万6000円→約35万5000円」と2万円以上のマイナス。非常勤ケアマネに至っては、「約30万7000円→約29万5000円」と30万円を割り込む金額となっています。

現在、地域によってはケアマネ不足が徐々に深刻化していて、本来であれば給与費割合を引き上げることが不可欠です。にもかかわらず、上記のような「給与の引き下げ」が行なわれているとすれば、もはや居宅介護支援事業所に、「ケアマネを雇う体力がない」ことを現わしていることに他なりません。

ちなみに、今調査での居宅介護支援事業所の調査客体数は1363で、有効回答数は605に過ぎません。全国で4万を超える事業所がある中では、調査数の少なさが際立ちます。推測ですが、有効回答率が半分以下ということは「調査に答える余裕がない(ごく小規模な)事業所」が除かれている可能性もあります。そうなると、先のケアマネの給与額はさらに厳しくなっている可能性もあります。

加算という施策だけではすでに限界あり!?

以上の点を考えれば、少なくとも2021年度改定に向けて、ケアマネの処遇改善策は不可欠であることは明らかです。と同時に、介護職員処遇改善加算をもってしても、事業所・施設の人材確保が追い付かない状況を見れば、「ケアマネ処遇改善加算」のような施策だけで穴埋めすることには限界もあるでしょう。

懸念されるのは、居宅介護支援のみでは法人の経営体力が維持できないとなった場合、「併設サービスを売り込むこと」が、法人内ケアマネの使命となる傾向が強まることです。特定事業所集中減算などはあるものの、業務風土として「公正中立の理念」は揺るぎかねません。結果として、減算は回避されても、法人間でサービスを都合しあうなどが暗黙のうちに増える可能性もあります。そうなれば、利用者にとって「本来は必要ない給付サービス」も過剰に提供されかねず、もっと言えば「サービスから逆算したケアマネジメント」が横行することにもつながります。

今回の調査結果は、確かに母数は少ないものの、次の介護報酬改定議論の重要資料となることは間違いありません。そこに浮かび上がる「介護保険の土台が揺らぐ現状」を、どこまで深刻に受け止めることができるかが問われます。何度も言うように、すでに加算という施策だけで対応するだけでは不十分なことを明確な論点とするべきでしょう。

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