ケアマネ処遇改善の前の土台づくり

介護保険部会の制度見直し案に「ケアマネの処遇改善」が記され、2020年の介護給付費分科会での議論に注目が集まることになりました。では、この「処遇改善」は、具体的にどのように進められるのでしょうか。また、その前に必要なことはないのでしょうか。ケアマネが直面している課題から展望します。

ケアマネが汗を流しても報われないケース

介護職の処遇改善については、介護報酬上でたび重なる処遇改善加算の拡充が図られてきました。しかし、若年層の労働力人口の減少も相まって、現場の人材不足感が劇的に改善される期待はなかなか高まりません。

仮にケアマネに介護職と同じような処遇改善加算等を設けるだけで、現状のケアマネの実務負担に応えるしくみとなるのかどうか。確かに処遇改善を目的とした、報酬上の一定の上乗せは必要でしょう。しかし、同時に必要なのは、「今、ケアマネがどんなことに汗を流しているのか」をきちんと評価し、そこに報酬をつけることではないでしょうか。

たとえば、国が進める地域包括ケアシステムの中で、どちらかといえばケアマネは(医療や市町村による多様な事業など)一連のケアマネジメント以外で奔走するケースが増えています。しかし、それに見合うだけの報酬が発生していない状況も多々発生しています。

一例をあげれば、利用者の入院から退院までの間、ケアマネの中には「円滑な在宅復帰」を目指して対医療連携などに多大な労力をかけている場面も見られます。しかし、退院前に利用者が亡くなったり、急きょ施設等に移ったりすれば、原則としてケアマネ側には報酬は発生しません。介護保険が重度者対応へと軸足を移しつつある中、これはケアマネにとって厳しい状況が強まることを意味します。

生活の継続性という視点からの報酬発生を

その点を考えたとき、ケアマネに対して2つの評価を固めることが必要です。

1つは、利用者が在宅復帰に至らない場合であっても、それ以前の入院中からの継続的な支援(対医療連携や入院中の利用者・家族にかかる相談援助など)について報酬上の評価を設けること。もう1つは、利用者が急きょ施設等に入った場合に、情報提供にかかる加算だけでなく、「施設等につなぐまで」の支援の評価をもっと拡充することです。

利用者にとって、地域での生活は常に継続しています。そこに「病院への入院」や「施設等への入所・入居」などのイベントが発生しても、本人にとっての「生活の線」は途切れることなく続いています。これを切り取って「家での生活とは違う」と見てしまうのは、その時々の支援者(医療職や施設等の職員)のあり方が問われる課題です。

その(本人から見た)生活の継続性を担保する数少ない専門職が、ケアマネジャーではないでしょうか。国は地域共生社会にかかるしくみとして「伴走型支援」を打ち出していますが、現時点でもケアマネジャーがその立場に立たされていることは無視できません。

となれば、現状で「一連のケアマネジメントから外れている部分」について、ケアマネの業務実態を掘り下げたうえで、報酬を発生させるというしくみを整えることが必要です。このベースを整えたうえで、処遇改善策の上乗せを図るという流れが求められます。

短期入所資源の拡充も業務負担軽減のカギに

もう一つ、ケアマネの業務負担の軽減を図るという視点では、地域資源の中に国の後押しが図られるべきポイントがあります。それは、緊急的な受入れを可能とする短期入所資源の拡充です。具体的には、時期や場所に関係なくケアマネ判断でいつでも利用ができ、受入れ側には「緊急時」を想定した社会福祉士等の相談援助職を配置し、ケアマネとの協働が図れるようにすることがベストでしょう。

なぜ、こうした資源の拡充が必要なのでしょうか。それは、世帯内の課題がますます複雑化している中で、家族による虐待や家族自身が家庭内の他の問題(その他の家族の引きこもりなど)にかかりきりになるなどのケースが、ますます増える傾向にあるからです。

本来、そのために養護老人ホームなどがあるわけですが、現状の整備状況ではなかなか追いついていきません。こうした緊急時の対応にケアマネが追い詰められるケースを考えれば、(自治体任せではなく)国レベルで計画的に整備していくことが不可欠です。

国が進めている文書量削減なども必要ですが、ケアマネの業務負担という点では、やはり「今必要な受け皿資源」という視点をたずさえなければ本末転倒となりかねません。2020年の介護給付費分科会では、ケアマネ実務をめぐって、より幅広い視野で土台を固めていく議論を期待したいものです。

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