介護現場におけるAIの位置づけとは

福島県郡山市が、NTTデータ東北との協定により、要介護認定作業にAI(人工知能)を活用するための実証実験をスタートさせます。今回のケースにとどまらず、介護、医療などの分野でAIを活用する試みが少しずつ広がっています。将来的に、現場におけるAIの位置づけがどうなるのかを見つめます。

AIにアウトプットを期待するのは正しいか

AIというと、ビッグデータ等からの自動学習により、「人間に代わって情報を解析する」というイメージが強いかもしれません。このイメージからすれば、「情報を入力すればAIが勝手に答えを出してくれる(アウトプットする)」という認識を持つ人もいるでしょう。

確かに、膨大なデータを取り込みつつ随時更新し、「与えられた情報」と照合しながら、「与えられた情報」をさまざまな視点から分析することはできます。しかし、「与えられた情報」には、学習済みのデータが想定していない固有の状況がたくさんあります。

そのため、AIがアウトプットするとすれば、あくまで学習済みデータをもとにした「候補」にすぎません。つまり、その「候補」に対して、固有の状況を考慮しながら精査するのは「人間」が行なうことになるわけです。この時点で、「AIによって人間の作業がどこまで効率化されるか」については、分野ごとの作業の流れによって大きく変わってきます。

AI機能で大切なのは人間側のうっかり防止

たとえば、ケアマネジメントにAIがかかわる実証実験などが多方面で行なわれています。ここで、「アセスメント情報を入力すれば、ケアプランの候補が自動的にアウトプットされる」というだけではどうなるでしょうか。

仮に、AIが利用者の「閉じこもり防止」や「社会性の確保」を軸として、通所系サービスをベースとした「候補」を打ち出したとします。ところが、利用者自身が「見知らぬ場所で、見知らぬ人と過ごす」ことに強い拒否感があれば、その「候補」を受け入れるには、ケアマネによる納得できる説明が必要です。

ここで、利用者の納得できる根拠が示せるかどうか(「AIが導き出したものだから」だけで納得する可能性は低いでしょう)。それ以前に、ケアマネの「根拠」説明に耳を傾けてくれる関係性が構築できているかも問われます。ここに「人間であるケアマネ」が担う部分があるわけですが、その負担とAIによる作業の効率化のバランスが取れていないと、AIを導入するメリットは薄くなります。

となれば、AIの本来的な役割は、アウトプットの前段階で「どのように人間側をサポートしてくれるか」がカギとなってきます。人間であれば、固有情報の収集やその精査に際して、大切な情報を「うっかり」と見過ごしたり、誤って入力してしまうことが起こり得ます。また、人間の収容できる知識には限界があるゆえに、最新の知見にもとづく重要ポイントをスルーしてしまうこともあります。

医療診断へのAI導入が介護にもたらすもの

ここで、そのつどAIが「それが本当に正しいか」を忠告したり、最新の知見にもとづくポイントを助言してくれるとします。そうなれば、「うっかりミス→修正」という二度手間や「最新の知見などを調べる」手間が省けることになります。IT業界の多くで取り組んでいるのが、こうしたAIの役割強化です。

今回の要介護認定でのAI活用のテーマは、上記のうちの「忠告(アラート)」機能といえます。これによって、人間によるチェックの手間を軽減し、増え続ける要介護認定の中での過重負担からくるミスなどを減らすことが期待されていることになります。

こうしたAIの導入について、動きが活発になっているのが医療です。たとえば、各種医学会では、AIによる画像診断の研究・開発が2017年頃から急加速しています。これにより、医師による「見落とし防止」に始まり、病変部位のマーキングでさらに踏み込んだ「診療補助」が目指されています。

厚労省も、今年5月にAIによる画像診断支援システムに対して、現時点での評価指標を公表しました。また、厚労省の厚生科学科では、2018年から保健医療分野でのAI開発を加速させるための検討会を進めています。また、同年12月には、医政局から、AIを用いた診断について医師法第17条(※)との関係を整理する通知も発出されました。

医療における初期診断での「見落とし」が、その後の介護状況にも大きな影響を与えることがあります。その点を考えた場合、医療にかかるAIの診療補助が介護現場にとっても大きなサポートとなるでしょう。介護現場へのAI活用という以前に、その入口となる要介護認定や医療診断にこそAIによる改革が急務なのかもしれません。

※医師法17条では「医師でなければ、医業をなしてはならない」としている。

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