要介護1・2地域移行とケアマネ実務

「制度の持続可能性」の観点から、引き続き論点に上がっているのが「要介護1・2の生活援助等を地域支援事業(総合事業)に移行する」という案です。移行させるサービス範囲にもよりますが、仮に実現した場合、ケアマネジメントをはじめとする現場のサービス提供にどのような影響がおよぶでしょうか。

移行対象を「通所介護」まで含めるかどうか

介護保険部会の資料では、「生活援助サービス等」という表現のみですが、財務省側の建議では、その資料内で通所介護と訪問介護全般も含めて「地域支援事業に移行すべき」と明記しています。また、政府の改革工程表(2018)では「軽度者に対する生活援助サービスやその他の給付」について「地域支援事業への移行」を含めて検討するとしています。

以前のニュース解説でも述べましたが、(厚労省を含めて)政府内で「やや表現があいまい」という部分は、一種の駆け引き材料となっている可能性が高いといえます。つまり、「通所介護まで含む」という高いハードルを設定することで、「少なくとも生活援助は移行させる」という落とし所が探られている──こうした点を頭に入れておく必要があります。

そのうえで注意したいのは、仮に2021年度からの「移行なし」、あるいは「移行が生活援助のみにとどまる」で決着しても、その3年後の2024年度には移行範囲が一気に進むことも考えられる点です。現状の介護保険部会の議論を見ると、給付抑制を進めたい側である保険者も懸念を表明しています。背景には「事業整備が進んでいない」という不安があるわけですが、政府側が(調整交付金の活用など)踏み込んだインセンティブ等を持ち出したとき、状況が変わる可能性もあります。

問題となるケースの掘り下げが必要に

こうした見通しを頭に入れつつ、現場従事者や利用者団体、職能団体としては、「どのような混乱が生じるか」について、さらに分析を掘り下げておく必要があります。

入口となるのは、やはり「要介護1・2でも重い認知症の人がいる」という点です。この場合、正確な認知症診断と初期段階での集中的なBPSD改善の質を高めることが不可欠です。本来は認知症初期集中支援チームが担う部分ですが、適切な対応ができているのかについては現状でも地域差があります。また、正確な要介護認定につながるような「チームとしての意見書や(必須サービスにかかる)指示書」の作成などを、制度に組み入れていくという下支えも必要になるでしょう。

加えて、認知症以外でも、疾病による痛みや可動域、あるいは生活意欲が「日々変動する」という人もいます。そうしたケースでは、仮に「(給付サービスである)身体介護の見守り的援助」をプランに設定したとしても、「ヘルパーとの協働作業などがたびたび厳しくなる」ことも起こり得ます。その場合、生活援助を適宜導入することが、本人の自立支援には有効となってくるでしょう。

制度の持続可能性がもっと危うくなる?

たとえば、要介護1・2の人の生活援助が総合事業に移行したとして、上記のように「(身体介護の見守り的援助のみならず)生活援助をプランに組み込んでおくことが必要」の判断が生じたとします。しかし、報酬上の問題などから、いわゆる従前相当サービスが地域で十分確保できないというケースも考えられます。そうなると、基準を緩和したサービスや、住民が主体となったサービスを設定せざるを得ないことも起こりうるでしょう。

そうなると、要支援1・2よりも数段「認知症や疾病にかかる状態が不安定」という人へのサービス提供に際し、(悪化の前兆等にかかる)気づきや、それをチーム内で共有する等の実務を十分に発揮できるかどうかが問われてきます。チーム内でそうしたリスクへの不安があれば、身体介護の訪問介護や訪問看護などの導入が逆に増えることもありうるでしょう。その場合、給付費はもちろん、利用者負担も増えることになります。

ここに「通所介護も総合事業に移す」が加われば、ケアマネをはじめとするチームの負担はさらに高まります。たとえば、基準を緩和した通所型サービスなどを利用した場合、担当者からの随時の情報提供も(人材そのものや適切な情報提供にかかるスキルが足らないなどにより)滞ることも考えられます。ケアマネにとっては、モニタリングの質の確保も難しくなるわけで、そのことは「医療職等への情報提供」にも影響してくるでしょう。

以上のように、日々のモニタリング情報の共有を通じて、利用者の重度化を防ぐという流れが大きく阻害されかねないわけです。要介護1・2の人の多くは「改善するか重度化するか」のボーダーラインに位置するケースが多いことは、ケアマネならモニタリングを通じて分かっているでしょう。そうした状況への無理解こそが、制度の持続可能性をもっとも危うくしているという点を、介護保険部会などでもっと掘り下げる必要があります。

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