利用者負担導入、果たしてどうなる?

次の介護保険制度の見直しで、大きな論点の一つとして上がっているのが「ケアマネジメントへの利用者負担導入」です。これについて、一部報道で「政府が見送りの調整に入った」旨が伝えられました。実際はどうなるのでしょうか。今後の見通しを展望するとともに、他の見直し論点との兼ね合いで、全体の制度設計がどうなるのかも掘り下げます。

財務省は「負担導入」の姿勢を崩していない

先に「見送り」可能性の報道がなされた翌週、11月25日に財務省の財政制度等審議会が、「令和2年度予算の編成等に関する建議」を財務大臣に提出しました。その中では、「ケアマネジメントへの利用者負担導入をすべき」ことが(介護分野トップに)明記されています。提示内容は、今年10月9日に開催された財政制度等分科会のものとまったく同一です。

財務省としては、「利用者負担導入」の方針を崩していないわけで、一部報道にあった「政府内調整」が本当に行なわれるのかどうかは微妙な情勢となっています(11月28日現在)。この動きを受けて、12月に予定される介護保険部会の取りまとめがどうなるかが注目されるわけですが、「(賛否の)両論併記」という枠内から出ない可能性も高いといえます。

今後、注視すべきは与党側の動きです。与党としては、国民の負担増が「目立ちやすい」方向性は回避したい──という姿勢が強いのは間違いありません。現在の見直しに向けた論点で「利用者の負担増」となるのは、「ケアマネジメントへの利用者負担導入」のほか、「(現役並み所得相当にかかる)月当たり自己負担限度額の引き上げ」、「利用者負担を原則2割とすること」などがあがっています。こうした「さまざまな負担増」の中から、(与党側と財務省等との押し引きを通じて)どの部分を容認、あるいは拒否するかという「選択」がこれからの焦点となってくるでしょう。

「利用者負担率1割」というキーワード

では、各種「負担増」案を比較した場合、どうなるでしょうか。高額所得者の「自己負担限度額引き上げ」の場合は、「負担できる人にはもっと負担してもらう」という理解が得やすい点で、比較すれば容認に傾きやすい項目です(もちろん、介護の負担限度額を医療のそれと同基準で扱っていいのかどうか、という点での異論は出てくるかもしれません)。

ちなみに、財務省は「(高額介護サービス費があるため)実質的な利用者負担率は1割を切っている(7.6%)」という点を問題視しています。つまり、暗に「少なくとも1割とする」という目標値を提示しているわけです。となれば、「(高額介護サービス費にかかる)月あたり自己負担限度額」と「2割負担の対象拡大」は1セットとしながら、「利用者負担率1割」を目指すことになります。

いずれにしても、「利用者負担率1割を目指す」というのは、財政上では切りのいい名分となります。与党側としても、この目標値には「(もっとも低い利用者負担が1割なのに、実質的な負担率は1割を切っているという点で)口を出しにくい」となりそうです。そうなると、「自己負担限度額の引き上げ」と「2割負担対象の拡大」については、与党側も容認するという流れが考えられます。

仮に「先送り」となった場合の「その先」は?

では、「ケアマネジメントへの利用者負担導入」はどうでしょうか。これは「0(無料)であったもの」を「有料化」するという点で、国民から見た負担感が(あくまで比較として)「見えやすい」といえます。「目立ちやすい」部分を回避したい与党としては、「この部分だけは容認できない」となりやすいわけです。当然ながら、先の「自己負担限度額の引き上げ」と「2割負担対象の拡大」を容認するのであれば、「こちらは財務省に妥協してもらいたい」というやり取りも出てきそうです。

しかし、ここで注意したいのは、「先送り」という妥協が、(ケアマネジメントをめぐる財源の問題と絡められつつ)「2021年度の居宅介護支援の報酬増」や「ケアマネの処遇改善」も立ち消えにつながる懸念をはらむことです。仮に与党側が「先送り」で押し切ったとして、その流れ(加えて、「先送り」ということは、2024年度にはどうなるのか)まで見込んだうえでの「押し切り」なのかが問われてきます。

これからですが、12月中旬頃までに介護保険部会の取りまとめが行われ、そこから厚労省と内閣府・財務省との折衝(そこに与党側の意向をどう反映するか)などが激しくなってくるでしょう。とはいえ、現場としては、「ケアマネジメントの本質とは何か」、「ケアマネが本当に利用者といい関係を築けるのか」という問いを止めてはならないでしょう。

現場のケアマネと利用者がともにチェックの目を光らせなければ、施策者側の思惑はつい「本分」からずれ、制度をますます歪んだものにしかねません。これから年末にかけて、制度の行方について現場でも勉強会などを開き、チェックの目を養いたいものです。

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